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みなさんこんにちは。
現在スコットランド2部リーグでプレーしている忽那健太(くつな・けんた/プロフィール/前回#8はこちら)です。2023年5月、日本人として初めてスコットランドのラグビーリーグに挑戦するため、この地に渡りました。
それから1年半、家探しや生活基盤の構築から始まったこの挑戦はラグビーに集中するための環境が整うまでには多くの試練がありました。
それでも応援してくれる人々や、周囲のサポートのおかげで2シーズン目を迎えることができ、今もラグビー選手としてこの地で戦えています。
今回の記事では、私が今季戦っている2部リーグ「メンズプレミアシップリーグ」の前半戦の振り返りと後半戦に向けての意気込みをお届けしたいと思います。
今季戦っている「メンズプレミアシップリーグ」はスコットランド全土から選ばれた12のクラブチームが参戦し、9月から始まりました。ホーム&アウェー方式で22試合を戦い、優勝を争います。
スコットランド特有の厳しい気候条件はラグビーを戦う上で大きな挑戦となっています。
エディンバラの最近の平均気温はマイナスで、凍てつく寒さと雨、さらにはグラウンドの凍結が頻繁に起こる中で試合が行われています。
身体的な適応だけでなく、精神的なタフさも求められます。
私が所属するヘリオッツラグビークラブは現在13試合を終えて12勝1敗。リーグ全体2位の好成績で前半戦を終えました。
リーグ屈指の強力FW陣と若手BK陣の才能が噛み合い、11月以降は7連勝を記録しています。
一方で私個人の出場は7試合にとどまり、チーム内でのポジション争いと、この国に来て初めての怪我を経験しています。
スコットランドのラグビー文化は、日本と大きく異なります。
国内トップのプロ選手、代表選手は基本的に「グラスゴーウォリアーズ」と「エディンバララグビークラブ」の2チームに所属し、URC(ユナイテッドラグビーチャンピオンシップ:アイルランド、ウェールズ、スコットランド、南アフリカ、イタリアのプロクラブが参加しているリーグ。イングランドのプレミアシップ、フランスのトップ14と並ぶヨーロッパ最高峰リーグのひとつ)で戦っています。
そこで出場機会が限られる選手やアカデミー選手たちは協会主導で2部リーグに派遣され、実戦経験を積んでいます(彼らは週末にリーグ戦に出場し、ヘリオッツにも数名の選手が常時参加しています)。
12月からは世代別代表(U20、U23)の活動も活発化しています。
U23スコットランド代表は先月U23イタリア代表と2試合をマレーフィールドで戦い、U20代表は来月から開催されるU20シックスネーションズに向けてトレーニングを積んでいます。
我々のチームからはバックスだけで4人選手が世代別代表に選出されています。未来のスコットランド代表としてワールドカップに出場するかもしれない選手たち、プロ選手たちと切磋琢磨する日々は刺激的です。
試合に出ることが当たり前ではない環境で、毎日のトレーニングが勝負の場となっています。
スコットランド2年目にして初めての怪我は、試合中にタックルに行った際に弾き飛ばされ、その衝撃で頭と肩を強打したものです。脳震盪を起こし、首を痛めました。
幸い大事には至りませんでしたが、3週間の休養とリハビリを余儀なくされ、一時的にグラウンドを離れることになりました。
異国の地でのリハビリは想像以上に困難でした。特に、チームトレーナーや病院の医師との英語でのやり取りには苦労しました。自分の体の状態を、英語で正確に伝えるのは簡単ではありませんでした。
日本で受けていた手厚い医療や行き届いた治療が、いかに恵まれていたかを痛感しました。
海外でのこのようなタフな経験が、人としての成長を促してくれています。
戦列から離れた間に、つかみかけていたポジションや信頼は他の選手のものとなり、メンバー争いから遅れをとる悔しさを味わいました。
焦りと無力感に押しつぶされそうになり、悔し涙が溢れる時がありました(現在は怪我も癒えて練習復帰できています!)。
これから突入していく後半シーズン。2024年4月までに残る10試合を戦い抜き、チームの優勝に貢献すること、そして何より、自分自身が試合に出場し続けるためにベストを尽くすことが目標です。
スコットランドでの挑戦は、簡単ではないからこそ価値があると思っています。そして、逆境や試練こそ人は成長できることを実感しています。
日本人選手としての誇りを胸に、さらに新しい道を切り開いていきたいと思います。
このコラムを読んでくださる皆さんに、少しでもスコットランドラグビーや私の挑戦の日々を身近に感じてもらえたら嬉しいです。
引き続き応援よろしくお願いします!
※スコットランドでの現地情報はYouTubeチャンネル『忽那健太』でアップしています。