4つ目のキャップは、初めての先発になった。
6月22日におこなわれるイングランドとのテストマッチで、竹内柊平(しゅうへい)が3番を背負う。
過去3キャップは、すべて2022年に得たものだ。
同年のウルグアイ戦、ニュージーランド戦、フランス戦に途中出場した。
昨年(2023年)はワールドカップ(以下、W杯)メンバーから漏れ、悔しい思いをした。
それだけに、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ率いる新生・日本代表に選出されたときは嬉しかった。
2023-24シーズンは所属する浦安D-Rocks(リーグワンD2)で12試合に出場した(6戦先発)。
新体制の初陣で3番を任せられるのは名誉なことだ。注目度の高い一戦。2027年W杯へ踏み出す第一歩となる試合で、スクラムの要としての役割を果たしたい。
イングランド戦に向けての準備となる合宿は、宮崎でおこなわれた。6月15日は、試合形式の練習がファンに公開された。
その日、多くのファンからもっとも多く声をかけられたのが地元出身の竹内だった。
宮崎ラグビースクール出身。宮崎工から九州共立大に進学した。
NTTコミュニケーションズシャイニンズアークス東京ベイ浦安(現・浦安D-Rocks)にはトライアウトを経て入った。
大学3年時までFW第2列、3列でプレーし、学生時代にスクラムを組んだ時間は僅か。本格的なPRデビューは大学卒業後だ。
宮崎合宿では密度の濃い日々が続いた。その過酷さを「夜、ベッドに入ったら気絶するように寝ています」という。
しかし、高いレベルの中で揉まれて充実している。早朝から練習するロケットスタートについても、「朝は超苦手ですが、目的を持ってやっているのでエンジョイできています」と言う。
ジョーンズHCとのやりとりを愉快に話す。
いまはまだ木製の車かもしれないけれど、「ハイブリッド車になれる。もっとハードワークしてみろ」と尻を叩いてくれる。
期待をかけているからこその言葉だ。
そして、もしそれでぶっ倒れるようなことがあっても、その後のことは家族のことも含め、すべて面倒をみてあげるから…と言っておいて、「絶対にお前は大丈夫。だまされたと思って、俺の言うことをやってみろ」と続けたそうだ。
安心して「毎日、吐きそうになるくらいきついことを続けています」。
ハードさは体力面だけではない。考える力も求められる。チームは緻密なラグビーを追求しているから、「身体的な疲労もありますが頭も働かせないといけない。ずーっと気が張っている感じです」と話す。
理解が遅れると「置いていかれる気がする」という。
スクラムにも学ぶことは多い。例えば、スポットコーチのオーウェン・フランクスは、足の幅など細かいことについても教えてくれる。
オールブラックスとして108キャップを持つ人の懐は深い。
以前、日本代表の活動に参加したときは長谷川慎コーチの指導を受けた。しかし、ニール・ハットリー コーチやフランクス氏のコーチングは、その時の理論とは違う。
以前受けた指導で実践していたのは、組む前に相手を苦しい姿勢にさせ、100パーセントの力を出させないスタイルだった。
しかし現在は、8人が一体感を持つのは同様も、真っ向勝負が基本。「初めて外国人コーチに教わっています。自分の幅が増えたというか、手札が増えたような感じがしています」と前向きだ。
「自分が毎日成長しているのが分かる」と語る表情が明るい。
HCの描くスタイル、細部の理解が進み、チームへのフィット感が高まる。そのスピード感を「目に見えて」という言葉で伝える。
指揮官の指導を「アメとムチの使い分けがうまい」と言う。厳しい言葉と愛でる空気の巧みな使い分けを通して、「自分の限界を引き上げてもらっている」とする。
イングランド戦の1週間前、「相手は強いセットピースからモメンタムを作って、僕たちが嫌なところをガンガン攻めてくると思いますが、僕らもスクラムを強化してきたし、フィジカルの強さで前に出てきても、その得意なことを封じたい」と話していた。
もともとFWのバックファイブ出身だけに、よく走る。その強みを出して、超速ラグビー遂行の一翼を担いたい。
打倒イングランドを実現させるため、「相手(の足)が重くなった時に、ついてこられないようなラグビーをしたい」と、他の若い選手たちとともに走り勝つイメージを持って戦いに臨む。