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※フランス-アルゼンチン(11月22日)を含む取材紀行、その第2弾です。
◆11月28日(木)
ということで、前日、友人に教えてもらったデュポンのレストランへランチをしに行った。現地のメディアでも大盛況と報じられていたが、その通りだった。12時半ごろに着くと、入り口のコンシエルジュの前に10人ぐらい列を作っていた。
「予約をしていないのですが、席はありますか?」と聞くと、テラス席に案内された。店内で食事をするには平日のランチでも予約が必要なのだ。
レストランの名前は『ガイア(Ga?a)』。「地球の美しさと多様性を象徴する、ギリシャ神話の女神に由来する」とレストランの公式サイトに説明がある。
さらに、「『ガイア』は、料理の芸術と自然が織りなすハーモニー。単なる食事が生命と私たちを取り囲む大地のセレブレーションになる感覚的な体験なのです」と、哲学的で、五感を重視した体験を提供し、自然とのつながり、そして持続可能な社会の実現を訴えている。
時代の空気が感じられると同時に、デュポンのクリーンで健全なイメージにも合っている。
前菜が10〜17ユーロ(約1600〜2720円)、メインが19〜38ユーロ(約3040〜6080円)。ワインやデザートをプラスすると一人1万円は軽く超える。ランチタイムはメインだけで17ユーロ、前菜、もしくはデザートをプラスすると21.5ユーロ(約3440円)、どちらもプラスするなら26ユーロ(約4160円)の日替わりメニューがある。
この日の前菜は「菊芋ととうもろこしのクリーミーなピュレ、ヘーゼルナッツとカボチャの種を散らして」、メインは「チョリソに包まれた鶏もも肉、さつまいものムースリーヌソース、玉ねぎのコンフィ、胡桃とにんじんのポワレを添えて」、デザートが「カカオでキャラメリゼした洋梨」か「フォンダンショコラとアングレーズソース」。洗練された世界観だ。
隣の席で「彼は7人制の最優秀選手に選ばれたんだ」とデュポンの話をしている。その間も次々と人が入ってくるのを眺めていると、元フランス代表WTBでトゥールーズのOBであるヴァンサン・クレールが現れた。相変わらず素敵だ。
テラスにいる彼の友人らしき人とレストランのスタッフに挨拶して、華やかに去って行った。テラス席で良かった。
トゥールーズのサン・ピエール広場に、「シェ・トントン(Chez Tonton)」と言う学生が集うバーがある。スタッド・トゥルーザンと深い繋がりを持ち、トゥールーズの選手も優勝した後、チャンピオンズカップの優勝カップとトップ14の優勝盾を携え訪れている。
「シェ・トントン」は年に5回、同じくトゥールーズにあるAMOSスポーツビジネススクールとコラボして、スタッド・エルネスト=ワロンの一角に設けられた学生席のゾーンにバーコーナーを設置し、旗や横断幕、揃いのTシャツ、歌で会場を盛り上げる。
時にはジャグジーも設置され、「シェ・トントン」のインスタグラムのアカウント上で応募した人の中から抽選で選ばれた1人は、3人の同伴者と共にジャグジーに浸かり、ビール片手に観戦というスペシャルな体験ができる。
学生席は、飲み物なしで18ユーロ(約2880円)、飲み物付きで20ユーロ(約3200円)。学生席専用に市の中心地からスタジアムへの送迎バスも用意され、バス代もチケット代金に含まれている。バスの中からすでにお祭り状態なのは間違いない。
※ジャグジー席 https://www.instagram.com/p/DCjPE0-CjOC/?utm_source=qr&img_index=1
◆11月29日(金)
パリに帰ってきた。シャンゼリゼ通りの方面に用があったので、今回のANSからレ・ブルーの公式ウェアサプライヤーになったアディダスのショップに立ち寄った。店内に入るとマネキンのデュポンがレ・ブルーのジャージーを着てボールを持ち、今にもこちらに向かって走ってこようとしていた。
その前にはデュポンのサイン入りスパイクが博物館のようにガラスケースに入れて展示されている。隣にはデュポンの優勝・受賞歴が添えられている。
2019、2021、2023、2024フランスチャンピオン
2022 シックスネーションズ優勝
2021、2024 ヨーロッパチャンピオン
2024 オリンピックチャンピオン
2021 世界最優秀選手
2020、2022、2023 シックスネーションズ最優秀選手
2019、2021、2023、2024 トップ14最優秀選手
数年前に「トロフィーを置くスペースがなくなってきたから、棚を作っている」と言っていたが、また足りなくなっているのでは。
その周りにラグビーフランス代表コーナーが広がっており、ジャージー、ウェアー、グッズが並んでいた。壁には男女フランス代表の映像が流され、さらに店内奥にも大きなデュポン。やはり大変なことになっている。
店から出ると、日が沈み、恒例のクリスマスイルミネーションが輝いていた。約2kmにわたりおよそ400本の街路樹がライトアップされる。何度見ても嬉しくなって毎回写真を撮ってしまう。クリスマスが近づくこの時期、フランスでは店頭やあちこちの通りにクリスマスのデコレーションが施される。家庭でもツリーやリース、またクレッシュと呼ばれるキリスト生誕のシーンを人形で再現した置き物を飾り、家族へのプレゼントを準備する。
家族や親戚が集まるクリスマスを楽しみに待ちながら人々もウキウキモード。街にも幸せな空気が漂う。「文句ばかり言う」とレッテルを貼られているパリジャンがご機嫌になるのだ。まさにクリスマスの魔法だ。
【プロフィール】
福本美由紀/ふくもと・みゆき
関学大ラグビー部OBの父、実弟に慶大-神戸製鋼でPRとして活躍した正幸さん。学生時代からファッションに興味があり、働きながらフランス語を独学。リヨンに語学留学した後に、大阪のフランス総領事館、エルメスで働いた。エディー・ジョーンズ監督下ではマルク・ダルマゾ 日本代表スクラムコーチの通訳を担当。当時知り合った仏紙記者との交流や、来日したフランスチームのリエゾンを務めた際にできた縁などを通して人脈を築く。フランスリーグ各クラブについての造詣も深い。