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うちのフォワードは最高だよ。チェイス・ティアティア[狭山セコムラガッツ]
4月19日のレッドレグリオンズ戦では2トライ。写真は試合開始直後のトライシーン。(撮影/松本かおり)
2025.04.24
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うちのフォワードは最高だよ。チェイス・ティアティア[狭山セコムラガッツ]

田村一博

 背番号15の今季14トライ目は、キックオフから44秒後だった。
 4月19日に広島でおこなわれた中国電力レッドレグリオンズ×狭山セコムラガッツで、ラガッツのFBチェイス・ティアティアが先制トライを挙げた。

 この試合に47-6と完勝したラガッツは、リーグワンのディビジョン3で上位2チームに入ることが確定。ディビジョン2下位チームとの入替戦に挑む権利を手にした。
 今季からチームに加わったティアティアは、新規参入チームが初年度から浮上することに大きく貢献した。そして、上位ステージへの昇格を実現するためのキーマンのひとりでもある。

 フォースから加わった好ランナーは29歳。2024年のスーパーラグビー・パシフィックで6トライを挙げている実力者だ(WTBでプレー)。
 ラガッツにやって来て、今季開幕からの全13戦に出場し、そのすべてに先発(CTBで2試合)。全試合で80分ピッチに立っているから価値がある(第7節にシンビンあり)。

 開幕戦に続き、今季2度目のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた先のレッドレグリオンズ戦では2トライ、6コンバージョンキックで22得点の活躍だった。
 開始44秒のトライは、相手タッチキックを受けて、すぐにクイックスロー。走ったSOダニエル・ウェイトをサポートし、ラストパスを受けた。

1995年10月14日生まれ。ニュージーランド・ウェリントン出身。(撮影/松本かおり)


 前半25分のトライは、敵陣ピッチ中央の狭いスペースを走り、最後はタックラーを弾き飛ばす強さを見せた。
 181センチ、102キロ。サモアの血を引くニュージーランダーは第13節を終えた時点でディビジョン3の最多トライスコアラー。ゲインメーター(730m)は3位、ラインブレイク数(13回)は5位、ディフェンス突破(64回)は2位、21回のオフロードパスはトップと、各スタッツでリーグの上位に名を刻んでいる。

 ニュージーランドのウェリントン出身。スーパーラグビーではフォース以外にチーフスやハリケーンズでもプレーし、63試合に出場している。
 NZの国内州対抗選手権にも多く出場。サモアのU20代表への選出経験もある。

 2019年、ハリケーンズでプレーしている時に来日し、サンウルブズと対戦した。その際、滞在時に日本の人やカルチャー、食べ物が好きになった。
 そんな記憶があるから、「今回、セコムでプレーすることになり、5年越しの思いが実って嬉しい」と話す。

 来日初年度から活躍できている理由については、「スムーズに移住できるようにチームがいろいろやってくれて、日本での生活も、私がプレーに集中できる環境を作ってくれているお陰です」。
 思っていた通りの国、チームと、快適さを強調する。

 この日はプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたものの、「なんで自分が、と思っています」と言う。
「私はフォワード、フロントローが表彰されるべきだと思いました。彼らが前に出てくれたお陰で、バックスはエッジまでボールを運ぶことができたと思います」

 日々の練習でも、最後までスクラム練習に取り組むフォワードに近寄って、チームを支える大男たちがぶつかり合う光景を見つめる。
「スクラムが好きなので」という理由だけではない。リスペクトの気持ちが行動の理由だ。

SOダニエル・ウェイトの復帰戦だった先のレッドレグリオンズ戦ではゴールキッカーを務めた。「彼はキックで負った怪我から復帰したばかりだったので、少しでも負担を減らそうと思った」と優しさを見せた。(撮影/松本かおり)


「みんなが見ていないところで頑張っている人たちです。私たちが彼らを祝えるシーンは、トライのあとや、スクラムでペナルティを取った時などに限られている。バックスが脚光を浴びる時は、フォワードやスクラムで優勢な時が多いので、本当に感謝しています」

 試合中もレフリーに、それとなく「うちがスクラムで優勢だね」と声をかけることもある。
 コミュニケーション力は自分の武器。周囲とつながってディフェンスし、チャンスにボールタッチを増やす。入替戦を勝ち抜く決意も固い。

 短期決戦を勝ち抜くには「勢いが大事」と話す。
「チームの雰囲気はいいと思います。みんな、お互いのために体を張ってプレーできる」
 自分が上昇気流を起こす準備も進める。

 ラガッツのホームページにある座右の銘は『You are either in or in the way』。「本気で取り組むか、さもなければ邪魔になるだけだ」という意味だ。
 生まれながらのチームマンを得たラガッツは、さらに進化して勝負の時期に歩を進められるか。


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