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ソックス主将、姫野くんといつか。芦田朋輝[スカイアクティブズ広島]
1995年3月24日生まれの30歳。名南工→愛知工大。仕事はオイルやバッテリーなど、車のサービス商品を担当。(撮影/松本かおり)
2025.04.21
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ソックス主将、姫野くんといつか。芦田朋輝[スカイアクティブズ広島]

田村一博

 今季から指揮を執るダミアン・カラウナ ヘッドコーチは、チームをまとめる芦田朋輝(あしだ・ともき)のことを「ソックス」と呼ぶ。
 芦田の芦→足→靴下からの連想でそうなったという。

 そのソックス主将率いるマツダスカイアクティブズ広島が、4月20日に山口・維新みらいふスタジアムでおこなわれたヤクルトレビンズ戸田との試合に48-3、相手をノートライに抑える快勝を収めた(リーグワン/ディビジョン3)。

 スカイアクティブズはこの勝利で今季の合計勝ち点を51として首位に立つ。
 レギュラーシーズン2試合を残した時点で、ディビジョン2との入替戦進出を決めた(前日に狭山セコムラガッツも確定)。

 雨が降る、タフな条件の中での試合にもかかわらず、8トライを挙げて快勝した試合。スカイアクティブズはFWが接点で前に出てリズムを作り、BKも積極的に走り、攻撃の時間を長く得た。

 試合を振り返って主将は、「直近の2試合でうまくいっていなかったセットプレーにフォーカスして準備してきました。雨の中でフォワードがプレッシャーをかけることができて、この結果が残ったと思います」と話し、クリタウォーターガッシュ昭島戦、狭山セコムラガッツ戦に連敗していたチームが復調した手応えを言葉にした。

 そして入替戦進出決定についても、「素直に嬉しく思っていますが、(レギュラーシーズンの)残り試合をしっかり戦うことが大事。もっとチーム力を高めていきたい」と落ち着いて話した。

練習グラウンドは海の横。シーズン中も15時まで働いた後、練習に出る。(撮影/松本かおり)


 自身はレビンズ戦の試合開始直後に左肩を痛めたが、80分間ピッチに立ち続けた。
 持ち味は、外国出身選手にも負けないコリジョン。「接点で体を強く当てるプレー」を武器としている。
 183センチ、105キロと大きくはないが、均整のとれたボディ。少しくらい痛みがあろうとウエートトレ―ニングの重量は落とさず、常に進化を求めているという。

 ソックスこと芦田主将は、2018年にチームに加わった30歳。学生時代に副将は務めていたが、キャプテンの大役は今回が人生で初めてのことだ。
 カラウナHCに指名された時には戸惑いもあった。しかし、「チームへの期待感もあったので、自分自身にとってもいいチャレンジになると思った」という。

 重積を担い、「自分の行動ひとつで、伝わるものも変わってくると意識しています。最後まで相手を追いかけたり、どんな時でも諦めない」心構えで仲間を牽引する。
 カラウナHCは「最初の2週間、練習を見つめて決めました。誰が頑張るか、誰がリードするかを見ていました。すべての局面でソックスは体を張って、気持ちを出していた。彼をキャプテンにするのが自然だと思った」と言う。

 京産大でプレーしていた叔父の試合を見て、ラグビーに惹かれた。入学した名南工業高校(2021年度から名古屋工科高校)に部があった。迷わず入部したのが運命だった。
 どっぷりとラグビーの中で生きる人生が始まった。

 15人ギリギリで活動していたから、2年時は全クラスに足を運んで勧誘活動をしたと覚えている。当時は愛知県内の多くの大会で1回戦敗退が多かったけれど、ラグビーは楽しかった。

 日本代表、トヨタヴェルブリッツの姫野和樹は同じ愛知で同学年も、対戦したことはなかった。(姫野がいた中部大春日丘とは)実力差がありすぎて、公式戦で対戦することもなければ、練習試合もなかった。

 そんな背景から、「彼は絶対、自分のことを知りません」と笑う。リーグワンのカンファレンスなどで同じ空間にいることはあっても、話したことがない。
 自分たちが高いステージに昇っていって、そこで対戦できたら最高だ。

「同世代のスター。僕らの高校にも噂が届くぐらいでしたから。同い年で、あれだけ動き、高いパフォーマンスを出せることは本当に刺激になっています」
 対峙する時がきたら「いつもと同じ。体を強く当てて、ボールに絡めたらいいですね」と言うところに誠実さがにじむ。

フットワークと強さを活かして前へ出る。ディフェンスは、激しく、しつこく。(撮影/松本かおり)


 愛知工業大学からスカイアクティブズに入ったのは、自分で編集した動画を複数のチームに送り、売り込んだのがきっかけだった。
 広島の地に来てトライアウトを受ける機会を得て入団に漕ぎつけた。

 誘いがなかった中で、自分から動いて道を切り拓いた。若き日の強い意志がなければ、いま、何をしていただろう。
「チャンスをいただけたチームで、自分のできることをやっていこうと思ってきた」行動が、周囲からの信頼の根っこにある。

 イキのいい若手も増え、外国出身の選手たちもチームに馴染んで、力を発揮してくれている。チームの躍進は、競争力の高まりにあると感じている。
 キャプテン自身、今季開幕からの全13戦中、脳震盪で欠場した1試合を除いてすべて先発出場しているのも、競争の中に身を置いているからだ。

 競い合う中で、一人ひとりの絆も太くなっている。カラウナHCの提案もあり、今季から勝利のあとにロッカールームでうたう歌を作った。
 全体をいくつかのミニチームに分けて、それぞれからウイニングソングを募った。それらを融合させてブラッシュアップしてできた歌が、この日も聞こえていた。

 今季その歌をあと4回歌うことができたら、目指しているステージに届く。







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