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【Just TALK】アーロンは「ついていったるから」の感じ。小村真也[トヨタヴェルブリッツ]
アーリーエントリーでヴェルブリッツに加わり、第10節(3月1日/浦安D-Rocks戦)以降は5戦連続出場中。直近の2試合は先発SOとしてプレーした。(撮影/松本かおり)
2025.04.09
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【Just TALK】アーロンは「ついていったるから」の感じ。小村真也[トヨタヴェルブリッツ]

向 風見也

 帝京大ラグビー部のバックスリーダーとして大学選手権4連覇を果たした小村真也はいま、トヨタヴェルブリッツの一員として国内リーグワン1部で戦っている。

 アーリーエントリーという、卒業前の大学4年生が一定条件のもとリーグワンの試合に出られる仕組みを活用した。

 デビューは3月1日。第10節(福島・Jヴィレッジスタジアム/対浦安D-Rocks/〇36-31)で後半24分より途中出場した。

 その後、徐々にプレータイムを伸ばしながら、定評のあるパス、キックの技術を披露している。

 3月30日の第13節では、司令塔のスタンドオフとして初先発を飾った。クラサスドーム大分(旧レゾナックドーム)でフル出場し、前年度まで2季連続4強入りの横浜キヤノンイーグルスを29-17で破った。

 大阪府出身。身長180センチ、体重92キロの22歳。バスケット経験者とあり空中戦に強く、加速力にも定評がある。バックスで複数のポジションをこなせるうえ、英語も話せる。

 4月5日には敵地の熊谷ラグビー場で、前年度準優勝の埼玉パナソニックワイルドナイツと第14節をおこなった。現在12チーム中10位と苦しむチームは17-55で敗れるも、スタンドオフとして2戦連続スタメンの小村はハイスキルで気を吐いていた。

 着替えを済ませ、スタンド下のミックスゾーンに現れた。囲み取材に応じた。

——ワイルドナイツ戦を振り返って。

「戦えていた部分があったので…。悔しい気持ちはあります。アタックもディフェンスも、最後はちょっとプレッシャーがかかってしまった(終盤は反則がかさんで劣勢になった)。ただ、自分たちの形でできるようになったら、全然、戦えるなという自信はあります」

——前半30分、敵陣22メートルエリア。左方向へフェーズを重ねるなか、小村選手は右大外へ柔らかいキックパスを送ります。すると味方ウイングのジョセフ・マヌ選手が、高く跳び好捕。フィニッシュしました。このホットラインについては。

「ありがたいことに、(身長192センチのマヌは)キックを捕ってくれる! 信頼しています。(サインコールも)一応あるんですけど、試合中は相手のウイングの位置を見て、『空いてそうやな』と思えば…って感じですね」

——小村選手はラン、パス、キックのうちどんなプレーを選ぶにしても、いったん相手の防御ラインへまっすぐ走り込んでから次の動作に移っているような。

「フラットに仕掛けながらプレーするのが強みだと、コーチに言われている。そこは意識してやっています」

——堅守で鳴らすワイルドナイツを相手に「仕掛け」る。圧はかかりませんでしたか。

「(ワイルドナイツは、防御網の)幅をしっかり保っていて、穴が全然見つけられないチームなので。自分の中でもプレッシャーはかかっていました」

——そうは言っても、プレー中は適宜スペースに球を運んでいましたが。

「そうですね。プレーしている時(最中)は、あんまりプレッシャーを感じないタイプなので。(その場では)いつものように自分のプレーを出せているかなと」

——この日は後半12分から、ニュージーランド代表125キャップ(代表戦出場数)のアーロン・スミスさんと司令塔団を組みました。

「ちっちゃい時からテレビで見ていた選手と組めるのは嬉しい限りです。(学んでいることは)ゲームの流れによってのフォワードの使い方、スペースの探し方…。(関係性は)教えてもらうというより、『お前のプレーをしたら、ついていったるから』の感じ。なので、細かいところを見て学ぶことが多いです」

2002年5月28日生まれの22歳。180センチ、92キロ。(撮影/松本かおり)


——試合直後のグラウンドでは、キックオフ時に並んだスクラムハーフの茂野海人(日本代表16キャップ)さんと話し合っていました。

「終わったあとはいつもその試合のこと、ゲームの流れ、バックスについて色々と教えてくださる。ありがたいです」

——大学時代はウイングやフルバックを務めることが多く、スタンドオフでプレーするのは久しぶりです。

「大学 1 年の時ぶりぐらいですけど、ずっと練習もしてきましたし、大丈夫かなという感じですね」

——あらためて、ここまでヴェルブリッツにいて得られた発見は。

「コーチ陣にもやっぱりイアン・フォスター(共同コーチ=前ニュージーランド代表ヘッドコーチ)がいて、全然違うレベルにいる人だと毎日、実感しています。自分の知らなかったバックスのこと、ゲームの動かし方を教えてもらえる。僕、わからんかったら聞くタイプなんですけど、それに対して(フォスターは)全部の答えを持っている」

——その時に使うのは英語。小村選手は高校時代、ニュージーランドのハミルトンボーイズ高へ在籍。ネイティブ級との評判です。

「いやいや、全然! 通訳の方、素晴らしいですね」

——プレー中のコミュニケーションはスムーズですか。

「日本人の選手——海人さん、(フルバックの髙橋)汰地くんも、ラグビーの英語はわかってくれている」

——おもに英語で指示しているのですね。

「そうですね。

 皆がチームメイトとして接してくれる。気を遣うことなくやらせてもらっています。

 特にサイア君(センターで日本代表16キャップのシオサイア・フィフィタ)は、ラーメン(屋に)連れて行ってくれたり、コンビニに誘ってくれたり。僕は、一番、若いじゃないですか。どこに行っても誰かが払ってくれて、お金を使うことがないです!」

——アーリーエントリーはあってよかったですか。

「よかったです。本当は(コンディション回復に専念するため)アーリーエントリーではやらない予定だったんですけど、メディカルの方に助けていただいて、(試合に)出させてもらっている」

——ヴェルブリッツに合流する前、休息は取れましたか。

「(休みは)あまりなかったんですけど、大学選手権の決勝(1月13日/東京・秩父宮ラグビー場/対早大/〇33-15)が終わってから1週間くらいオフがあって、同期と宮古島に行きました。卒業式は(ヴェルブリッツの)試合が近かったので(欠席した)」

——いまの目標は。

「毎試合、練習でも、毎日、毎日、学びが多い。目の前のことに集中してちょっとでも成長できたらいいかなと」

——早期の日本代表入りが期待されますが。

「入りたいですけど、まずは自分のレベルを上げることが先。ひとつずつステップアップできたらと思います」

——ご自身のスタンドオフとしての強みは。

「アタックでチームを動かせる、(防御に対して)フラットにアタックでき、ラン、キックのオプションもあることです」

——新進気鋭のプレーメーカーのよさと伸びしろは。

 この問いに、元ニュージーランド代表指揮官のスティーブ・ハンセンヘッドコーチはこう答えている。

「伸びしろは私自身にもあるので、まず彼がどういった点で順調かを話します。チームを指揮する能力、パスゲーム、トライのきっかけにもなっているジョセフ・マヌとの関係性…。若い選手なのでスキルや自信については発展途上ですが、それは時間をかけて育てていくものです。現在の彼の進捗に関しては、満足しています」





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