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『藤島大の楕円球にみる夢』は4月7日(月)放送。ブレイブルーパスの内側、分かります。
1990年代のウルグアイ代表のレプリカジャージーを着る藤島さんと山内さん。(撮影/松本かおり)
2025.04.06
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『藤島大の楕円球にみる夢』は4月7日(月)放送。ブレイブルーパスの内側、分かります。

ジャスラグ編集部

 英語をただ日本語にするだけではない。言葉の持つ意味と、話す人の意思のバランスを絶妙にミックスする。記者会見場で接する記者は、いつもそう感じる。

 スポーツライターの藤島大さんがパーソナリティを務めるラグビー情報番組「藤島大の楕円球にみる夢」が、4月7日(月)、夜6時からラジオNIKKEI第1で放送される。

 今回のゲストは東芝ブレイブルーパス東京の通訳、山内遼さん。トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(以下、HC)の言葉を報道陣に伝え、府中のグラウンドでは、日本人選手たちと外国人指導陣、選手たちをつなぐ。
 多様化が進む現代のラグビーチームにおいて重要な存在だ。

 正確に互いの意思を伝える仲介役を務める通訳の見た目はやんちゃ。髪型はちょんまげ。サイドは剃り上げる。
 遠くにいても、すぐ分かる。

 1997年8月生まれの27歳。北海道に生まれ、父親の仕事の関係で幼少期をアメリカ・サンフランシスコで過ごす。小学校から日本で暮らした。
 中学から三鷹中等教育に通い、サッカーをプレーした。中3の途中からラグビー部に入った。
 高校に進学し、2年時にはアルゼンチン(サルタ)に留学。現地クラブでもプレーした。

試合前にモウンガとバス。(撮影/松本かおり)


 帰国後、高校ラグビー部に戻り、東京外国語大学の国際社会学部に学ぶ。大学ではSO、FBでプレーし、4年時にはキャプテンを務めた。
 英語とスペイン語を堪能に話す。

 ブルースシンガーのような声は、大学4年時のアクシデントによるものだ。練習のとき、ボールキャリーをした。タックラーが喉にヒット。気道が破裂し、生死をさまよう大怪我を負った。

 何度も手術を受け、少しずつ声が出るようになった。事故前のような声量はなくなったものの通訳として活躍する道を歩めているのは、能力や知識、人との縁だけが理由ではないだろう。
 この人の芯にある反骨心と向上心によるものだ。

 大学ラグビー部の先輩が日野レッドドルフィンズのスタッフになったことで、通訳のオファーが届く。「やらせてください」と伝えたからには、まだ駆け出しだからとか、やりながら上達しますという姿勢は嫌だった。
 コーチ陣が頻繁に使う言葉を抜き出し、実践的に使えるように短期間で態勢を整えた。頭の中の整理能力とは、通訳には欠かせぬものなのだろう。

 人生を辿っても楽しいけれど、2023-24年から始まったブレイブルーパスでの体験談はさらにおもしろい。
 トッド・ブラックアダーHCという人間や、パス練習の相手を務めるリッチー・モウンガの素顔。そして、リーチ マイケルの圧倒的な存在感を言語化する。

 多くのコーチ陣がチームを支えるブレイブルーパス。各領域にきめ細かな指導が行き届いていることがチームの強さの下地にあると感じる。
 その中心にいるブラックアダーHCは包容力がある。そして目力。「目を見て話されると頷くしかない」と言う。

 目の前の相手に躊躇なく襲いかかることが求められるラグビー。あるコーチは、それぞれの深いところにあるその要素を引き出す。誰がその資質を持っているか見きわめることもできる。

 通訳の魅力は、コーチや選手の感情の機微を身近に感じられることのように思う。それは、自分が生きていく上でも生かすことのできる財産かもしれない。
 さまざまな状況の中での態度や発する言葉には人生訓が浮かぶ。

「日本人の特徴でもある、隣にいる仲間のことをがっかりさせたくないという思いは、ラグビーに向いているのではないでしょうか」
 そんな話を聞いていると、この人は一人ひとりを見つめる力があるから、言葉を選ぶセンスがあるのだと気づく。

 一人前の通訳となれたかどうかの物差しは、日本語にも英語にもこだわりのある「リーチさんから合格をもらえるかどうか」。
 ブレイブルーパスの魂と言っていい人の言葉はいつも重い。

▽ラジオ番組について
 ラジオNIKKEI第1で4月7日夜6時から全国へ放送。radiko(ラジコ)のサービスを利用して、PCやスマートフォンなどで全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。
 放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。U-NEXTでも配信予定。4月14日の同時刻には再放送がある。


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