![2戦続けて先発3番。リサラ・フィナウ[埼玉ワイルドナイツ]は、「お父さん、お兄さんたち」の中で育まれる。](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/04/KM3_4411_2.jpg)
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坂手淳史、茂野海人のトップリーグ・リーグワン通算100試合出場と、埼玉パナソニックワイルドナイツ、トヨタヴェルブリッツの両チームから節目の試合を迎える選手が出た。
4月5日に熊谷ラグビー場で両チームが激突した試合(リーグワン/ディビジョン1)は、55-17とワイルドナイツが快勝した。
後半20分まで24-17と競った試合は、ワイルドナイツがラスト20分に5トライを集めた。この勝利で同チームはレギュラーシーズンでの6位以内を決め、東芝ブレイブルーパス東京に続き、プレーオフ進出が確定した。
ワイルドナイツはこの試合、アーリーエントリーで今季から加わったリサラ・フィナウ(大東大卒)が前節に続いて3番で先発。10番には2023年の春に加入、今季リーグワンデビューを果たし、前節に初先発を経験した齊藤誉哉(明大卒)を起用し、フレッシュなメンバーを含む布陣で試合に臨んだ。
ベンチスタートの谷山隼大(筑波大卒)もデビューを果たし、ジュシュア・ノーラも花園近鉄ライナーズから移籍してきた後、初めての出場となった。
ホストスタジアムに1万127人のファンを集め、未来のワイルドナイツも感じさせたその一戦で、フィナウが記念すべき初トライを挙げた。
17-12のスコアで迎えた前半37分、敵陣トライライン前でできたラックに参加した背番号3は、自らボールを持ち出してインゴールにボールを置いた。「目の前にスペースがあったので、チャンスと思い、迷わず出ました」と試合後に振り返った。
サラの愛称でチームメートに可愛がられる。この日は後半11分までピッチに立ち、トライを挙げたほか効果的なボールキャリーを何度も見せ、10回を超すタックル。スクラムについても「修正するところはまだまだありますが、練習通りに組めたと思います」と話す。

大東大の2年時までNO8として活躍も、日本代表のフロントローに選ばれるためにプロップに転向。2シーズンでワイルドナイツの戦力となり、リーグワンの舞台を経験できている。
良い成長曲線を描いている。
トンガ出身。青森山田高校に入学し、北国で友情と日本語の基礎を育んだ。大東大でも周囲の協力を得て語学力を伸ばした。
この日は「お母さんみたいな人」と慕う大東大ラグビー部の米山聖子副部長と、日本語の先生も応援に駆けつけてくれた。
デビュー戦の前はガチガチだった。
「まわりの人たちに大丈夫か、と言われるほどでした。緊張が顔に出るタイプなんです」と第13節、3月29日に宮城でおこなわれた浦安D-Rocks戦当日を振り返る。
「でも近くにいる仲間たちが、いつも通りのプレーをしてくれ、と言ってくれました」
緊張のあまり、自分がどんなプレーをすべきか頭の中で整理していたことが真っ白になったけれど、チームメートの言葉に安心し、キックオフの笛が鳴るといつも通りに試合に入れた。
思っていた以上にはやく巡ってきた最初の一歩は、「焦ることなく、楽しんでプレーできました。ワイルドナイツのスクラムを組めた」と記憶に刻まれた。2週続けての先発となったヴェルブリッツ戦は、少しだけ心に余裕ができた。
目指しているところに自分を導いてくれる、いいチームに入った。質の高いトレーニングと、個々への栄養指導のお陰で128キロあった体重は122キロへ。肉体は引き締まった(189センチ)。
そして、「お父さん、たくさんのお兄さんがいるような感じです」と頼りになる先輩たちのことを表現する。
コーチ陣だけでなく、選手たちの教えが嬉しい。厳しいことも言ってくれる。自分のためと分かっているから、素直に自分の中に入る。
「アサさん(ヴァル アサエリ愛)、ガッキーさん(稲垣啓太)、坂手さんたちが、日本代表の経験もそうだし、すべてを教えてくれます。自分からも聞きます」
「お父さんはアサさん。お兄さんはエセさん(エセイ・ハアンガナ)、(ベン)ガンターさんかなあ」と、人懐っこい表情を見せる。
隣でスクラムを組む2番の坂手主将はフィナウについて、「いいですよ。スピードもある。そして、賢いですね。ただ、スイッチが切れることがあるので、そこは直していかないといけない」と話す。

キャプテンは、2020年に加入した右プロップ、藤井大喜がインタビューで、「スイッチが切れることを指摘される」と答えていたことを例に出して言う。
「いいプレーをしても、それをどうやって続けていくか、一貫性がないとこのチームでは上にあがっていけないし、そういう選手をチームは必要としています。そういうことを僕らが伝えないといけないと思っています」
プロップとしてスクラムを組み始めた頃のことを、「体のあちこちが痛くなった」と懐かしそうに語るフィナウ。その時から2年弱。いつかサクラのジャージーをつかむためにも、「ワイルドナイツで試合に出られるようになることがいちばん大事」と足元を見つめる。
同じトンガを故郷とし、青森山田、大東大と、いつも一緒にいたハニテリ・ヴァイレア(センター)は、すべて途中出場ながら三菱重工相模原ダイナボアーズですでに6試合に出場。リーグワンデビューも、自分よりはやかった。
「初めて試合に出る時に連絡をもらい、僕も自分が出ることになった時、伝えました。お互いに頑張って、と励まし合っています。これからも助け合っていきます」
日本語検定は現在3級。2級(合格率は10数パーセントと言われる)へのチャレンジも続けていくつもり。
夢を叶える旅は続く。