![【Just TALK】窓を見つけ、いく。そして奪う。リアム・ギル[リコーブラックラムズ東京]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/KM3_0504_2.jpg)
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若手の手本になっている。
ジャパンラグビーリーグワン1部のリコーブラックラムズ東京へ今季加入のリアム・ギルは、全体練習を終えると「特別講義」を開くことが多い。
自らと同じフランカーやナンバーエイトといったフォワード第3列、さらに身体をぶつけることの多いセンター、ウイングの選手を集め、得意のタックルやスティールのスキルトレーニングをおこなう。
「どうしたら『いい位置』に入りやすいか、よく起こる状況がどんなもので、それに対してどうすべきかを話しています。それに沿ってトレーニングしておけば、試合で同じシチュエーションになった時により直感的に判断できます」
32歳。身長184センチ、体重95キロのサイズは、国際舞台にあっては大柄ではない。それでも地上戦での粘り強さ、運動量を長所に、オーストラリア代表15キャップを獲得してきた。
2011年から6季いたスーパーラグビーのレッズ、2017年から約3年間在籍したフランスのトゥーロンでは、元日本代表の五郎丸歩さんとチームメイトだった時期もある。
来日は2020年。当時入団したNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安は、2022年シーズン(2021年度)終了後にピリオドを打った。NTTドコモレッドハリケーンズ大阪との再編で、浦安D-Rocksとして再出発した。

ギルがブラックラムズに入ったのは、D-Rocksが2部にいた2シーズンを経てのことだ。
——まずは移籍の決断についてお聞かせください。
「D-Rocksは2部にいて、難しい立場ではありました。再編により、色んなことが起きました。そんななか、僕が求めたのは、新しいチーム、新しい選手、新しいコーチたちとフレッシュな楽しみを見つけることでした。自分が楽しみ、経験を還元でき、行ったチームのためになれるような場所を探しました」
——あらためて、前所属先の「再編」について伺います。
「コーチングスタイル、マネージメントサイドにおいて、全く異なるふたつのものがひとつになった。その難しさはあった。それ以上は詳しく言いません」
——大企業がクラブを支える日本ラグビー界の仕組みについて、海外からやってくる選手は好意的に述べる人が少なくありません。ただ、責任企業の事情で様々なことが起こりうるのも確かです。
「ふたつの企業がひとつになり、ひとつのチームを支えること自体は正しい判断だったと思います。ただ、ひとつのチームが機能するには時間が必要です」
——D-Rocksは今季1部に初昇格。現在最下位も2勝を挙げています。
「リーグワンはレベルが上がっていて、経験も深まっています。ふたつがひとつになったD-Rocksもそのリーグワンになじみ、ひとつのやり方を見つけ、歩き始めるところにあるのではと感じます」
異国で希少な経験を積むなかで、「自分が楽しみ、経験を還元でき、行ったチームのためになれるような場所」を探していた。
辿り着いたのが、タンバイ・マットソン新ヘッドコーチのもと上位進出を狙うブラックラムズだった。
前年度12チーム中10位で入替戦進出のブラックラムズは、第12節終了時点で4勝8敗、9位につける。第12節までの3戦では2勝1敗と、調子を上げている。6傑によるプレーオフ行きへ可能性を残す。
3月15日、東京・秩父宮ラグビー場での第11節では、昨シーズンまで2季連続4強以上の横浜キヤノンイーグルスに27-20で勝った。
ギルは言う。
「感覚はよくなっている。いろんな試合をやっているだけ身体のあちこちには痛みがあります。ただ、ただ、チームとしては徐々に大人になっているというか、成熟し始めている。
コーチ陣はハードなトレーニングをしながら、ラグビーから離れた時間も大切にしている。とてもうまくマネージメントしてくださっていて、それが助けになっています。ハードトレーニングとオフのメリハリがついている。
今シーズンは5週間プレーして、1週間はお休み。僕たちがベストになるべきは試合のある週末だというなか、お休みの1週間はリカバリーのできるスケジュールを組んでもらっています。
その時期もクラブハウスに来ることは来るのですが、『来なさい』とチェックされることはない。自分でリカバリーをマネージメントする。また、他に必要なことがあればチームの外でやる」
——いまのブラックラムズのよさは。
「コーチが私たちの決断を信頼してくれている。そのベースが私にとっての素晴らしい基礎で、そこから学べることがあります。プレシーズンからチームでハードワークしてきました。いまのところのシーズンは『まぁまぁ』といったところでしょう。ただ、成長の度合いや結果は誇りに思えます」

本人も、一貫性のある働きで仲間を助けている。
3月1日に秩父宮であった第10節では、後半20分頃、三菱重工相模原ダイナボアーズを相手に自陣22メートルエリアで2度のスティールを試みた。
1度目は複数名のサポートを引き寄せながら球出しを鈍らせ、2度目は相手の反則を誘った。序盤に大きくリードしたこのゲームは、22-7で制している。
——ワークレートは圧巻。タックルしたらすぐに次の仕事に移る姿勢は印象的です。
「誉め言葉として受け取ります。なぜなら、いつもそんな風にプレーしたいと思っているからです。ありがとうございます。
(動けるのは)マインドセットゆえです。もちろん、プレシーズンの仕事量も影響しているでしょう。その時期にハードワークするほど、ラグビーのためにフィールドに立った時には楽になり、プレッシャー下でも正しい判断ができる」
——「プレシーズン」の過ごし方は。
「(チーム練習で)スキル系の動きを交えたフィットネスを。アンストラクチャー系のゲームをしながら、そこに走りも入る」
——個人的にはどんなことをしていますか。
「バイクでトップアップをします。年を重ねてからは(走り込みよりも)バイクがいいかなと。この年齢でブレイクダウンに行き、タックルに行き…ということをするには、フィットネスは欠かせません。そうすることで、スキルが機能する身体になっていきます」
——得意のジャッカルのコツは。
「スティールをするための『窓』、スペース、チャンスがあるのかを見て(仕掛けるかどうかを)判断します。自分を信じ、チャンスがあれば、行く」
——リアムさんのような体格の選手が活躍すると、「日本人選手もサイズを言い訳はできない」という言説が発生します。一方、リアムさんのパフォーマンスは誰もができるわけではありません。
「私はフォワードのなかでも小さい部類です。ということは、スキル、フィットネスをたくさんやらないといけない。クリアな判断を下すためにそれらが必要だからです。身体の使い方も賢くないといけません。(単純な)フィジカルバトルだったら負ける可能性が高い。そのため直感的に…というのが適切かはわかりませんが、(接点に仕掛ける)スピードなどで勝負したいです」
取材には3月26日に応じた。3月30日には秩父宮で、コベルコ神戸スティーラーズと第13節をおこなう。