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新しい熱狂の地、『KAI TAK STADIUM』(啓徳体育園内の啓徳主場館)は、これまで長くセブンズの名勝負を刻んできた香港スタジアムのある香港島から見ると、九龍湾の対岸にある。
1998年に閉港となった香港・啓徳空港の跡地に造られた新スタジアムで、2025年の香港セブンズ(HSBC SVNS 2025/香港大会)が3月28日(金)に始まった(〜30日)。
サクラセブンズ(7人制)は大会初日の第1試合でカナダと対戦して17-24と敗れるも、第2試合のスペインには24-19と逆転勝ちした。
プールステージの第3試合、対オーストラリアは3月29日(土)におこなわれる。
同試合に勝って、カップトーナメントの準々決勝進出を決めたい。

今季のサクラセブンズは調子がいい。2024年11月30日、12月1日のドバイ大会で7位となると、ケープタウン大会(南アフリカ)で6位、パース大会で5位、そしてバンクーバー大会で史上最高位の4位となった。
大会ごとに順位を上げる歩調を続けるなら、香港では3位。その可能性はまだ残っている。
兼松由香ヘッドコーチは今大会、チームが掲げるスローガンを『プレッシャー』とした。
4強入りを果たし、周囲の期待も大きくなる。そのプレッシャーをはねのけてサクラセブンズらしく戦うこと。それに加えて、「自分たちは4強以上を狙える実績を残してきたチーム」というプレッシャーを相手に与えるようなパフォーマンスを出そうと言う思いからだ。
その空気は敗れたカナダ戦にもあった。
今季のランキングはここまで、日本が5位、カナダ6位とサクラセブンズが上回っているが、昨年のパリ五輪ではカナダは銀メダルだったように、歴史を見れば相手の方が格上だ。しかし、この日の日本は堂々としていた。
反則やハンドリングエラーが出て相手に2トライを先行されたものの、後半開始すぐに7点を返す。
その後に2トライを許して勝利は逃すも、2トライを返して最後は7点差にしてボーナス点を得た。

ボールを奪い返せず、なかなか攻撃に転じられなかったことは敗因となったけれど、自分たちのスタイルに持ち込めば攻略できる確信があったように見えた。
そして、終盤の追い上げは次戦に結びついた。
続くスペイン戦、この試合も先手を奪われる展開となった。しかしサクラセブンズは序盤からよく動いた。キックオフから90秒守り続ける。
先制を許しても、堤ほの花主将がこの日3つめのトライを奪い、再びリードされても、今度は梶木真凜が倒されてもすぐに立ち上がり、長い距離を走り切った。
ハーフタイム直前にトライを奪われて12-19とされるも、そこでも粘って守り、スペインの体力を奪った。
結果から言うと、サクラセブンズは後半に岡元涼葉、辻﨑由希乃がインゴールにボールを運んで逆転勝ちを収めた。
後半からピッチに立ち、値千金のトライを奪った辻﨑は、「相手は疲れていると分かっていたから自信があった」と言い、事実、巧みなフットワークで相手を翻弄、最後に決定的なシーンを走り切った。
2019-20シリーズのオーストラリア大会(シドニー)以来、2度目のキャプテンに指名された堤は、「カナダ戦ではコンタクトのあとに、もっと足を動かさないといけなかったのに、それができていなかった。スペイン戦では、もっとサクラセブンズらしく戦うことを強く言い合って戦ったことが結果につながったと思います」と話した。

ちなみに堤は、新しい舞台での日本選手初トライスコアラーとなった。
その堤に何度も好パスを送った庵奥里愛も、今シリーズが同代表初キャップながら大会ごとにチームへのフィットを高めている。
キャプテンとの息の合ったコミュニケーションについては、「日体大時代からのつき合いですから(庵奥が1学年上)」と表情を崩した。
兼松ヘッドコーチは次戦のオーストラリア戦について、「一度も勝ったことがない相手。選手たちにはブレイクスルーするつもりで戦ってほしい」と期待を込めた。
スタジアムではサクラセブンズへの声援が大きい。新しいセブンズの聖地となる場所で、ビッグパフォーマンスを見せたい。