![でっかい体。大きな可能性、夢。山極大貴[NECグリーンロケッツ東葛]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/KM3_0775_2.jpg)
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新しい扉を開いた。
ビッグマンが、さらに大きくなるため新たな経験を積んでいる。
198センチ、120キロ。NECグリーンロケッツが誇る巨漢、山極大貴(やまぎわ・だいき)が初めてゲームキャプテンを務めた。
3月23日(日)におこなわれたリーグワン、ディビジョン2(以下、D2)の日野レッドドルフィンズとの試合でチームの先頭に立って45-21の勝利を手にした。
保善高校、専修大を経て2020年にグリーンロケッツに加わった。以来、背番号4のジャージーを多くの試合で着た。
今季初戦、2024年12月22日におこなわれたレッドハリケーンズ大阪戦でトップリーグ+リーグワンでのキャップ数を50とした。ルーキーイヤーから前シーズンまでの4季で49キャップを積み上げてきたのだからどれだけフル活動を続けてきたか分かる。
今シーズンも今回の第9節、レッドドルフィンズ戦まで1試合を除く8試合に出場し、すべて先発で80分のプレータイムと、鉄人ぶりを発揮している。
ラインアウト成功32はD2の5位。昨季はシーズンを通してタックル成功132を記録。それはD2で最多の数字だった。
チームの中での存在感を年々大きくしている山極は、キャプテンとしてチームを率いたレッドドルフィンズ戦で勝利をつかみ、「狙っていた通り、(相手より3トライ以上多くトライを奪い)5ポイントを取れてよかった」と安堵の表情を見せた。

ターニングポイントは前半40分の判断だったと言った。
敵陣22メートルライン近く、やや左。相手ペナルティでPKを得た。12-14とリードされていた。
PGで逆転してハーフタイムを迎えることもできた。しかし、チームはPKを左タッチへ蹴り出し、ラインアウト→モールでトライ(2番の大澤蓮)。SOリース・パッチェルのコンバージョンキックも決まり、19-14とした。
「ノータイム(残り時間がない状況)だったのでショット(PG)でもいい場面でしたが、パッチ(パッチェル)とスモールトークをして、モールでいかしてくれ、と判断しました。あれでチームとして自信がついたし、後半のいい流れにもつながったと思います」
ロッカーに戻り、もっと体を当てていこうと話した。後半が始まると、全員がその言葉に忠実に前に出て、相手に圧力をかける。4トライを奪った40分を振り返り、「僕らのラグビーができた」と話した。
ゲームキャプテンの大役を果たし、「役職で人は変わるんだな、と思いました」と言った。学生時代、キャプテンやバイスキャプテンだった経験はない。
今季チームを率いていたSHニック・フィップスが第4節に重い怪我を負い、長期離脱が決まる。チームは新体制を組む。そのとき、マリティノ・ネマニ(CTB)の主将、山極の副将就任が決まった。
今回の試合ではネマニも試合直前にコンディションを崩して欠場となったから背番号4がチームを束ねた。
「(副将やゲーム主将は)去年まで想像していなかったことです。しかしやることになって自覚が芽生えました。リーダーシップが出て、自分にできることは何かを考えました。いい機会をもらった。(この機会を終えたからと)任せきりになったら意味がなくなる」
副将という立場を、「自分を成長させてくれる」とした。
シーズン途中で山極を副将に指名し、この日のゲームキャプテンを任せたのはウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(以下、HC)だ。
同HCは「ギワ(山極)は今季、ラインアウトリーダーです。リーダーとしては、それが最初のジョブです」と話した。
必ずメンバーに入る。周囲のロールモデルになれる。言葉での発言は少ないかもしれないが、行動で示す。そして、スタッフ陣、選手たちからリスペクトを得ている。
HCは、リーダーに必要なそれらの要素すべてを山極が持っているから指名したとし、「リーダーとしての役割を与えられてもパフォーマンスに影響が出ない選手」との評価も付け加えた。
「言葉ではなく、プレーで引っ張るしかない」と話す山極は、シーズン途中の2月に副将に指名された際、驚いたけれど嬉しかったと回想する。
「ヘッドコーチに呼ばれた時、察しはつきました。中堅だし、たくさん試合に出してもらっている。頑張ります、と答えました」
もともとミスが出てチームの空気が沈みそうな時、「思い切りやろう」、「次、次!」と、仲間を盛り上げる声は出していた。
チームの空気を明るくする存在。もっと具体的な指示の声を出せるようになりたい。

27歳のニューリーダーのいちばんの強みは、HCも言うように、ピッチに立ち続けられることだ。
「ロックでコンビを組む外国人選手、例えばパリパリ(パーキンソン)にしても今回のエド(エドワード・アナンデール)にしても、最初から全開でハードにプレーし、試合の途中で動けなくなるまでやる。そういう姿を見ていますので、自分は常に最後までプレーし続けるつもりでいます。幸い、大きな怪我もなくやれています。少しの痛みはあってもテーピングでどうにかなるもので済んでいます」
入団5シーズン目で、2季目からはプロ選手として活動している。それだけに自己管理もしっかりしている。体調を整えることに注力する。
睡眠時間を十分に確保する。早いときには午後8時、遅くとも午後9時には就寝し、朝からの練習に備えて午前5時半には起床。午前7時30分か8時からのトレーニングが始まる1時間前にはグラウンドに到着する。
シモンズベッドのクイーンサイズの、さらにロングサイズを購入し、『ヒツジのいらない枕』も使用。快眠へのこだわりも、丈夫な体を支えてくれている。
近年は外国人選手が務めていたラインアウトのコーラーを、今季から任された。
最初はミスもあったが、コーチからサイン選択の理由を問われたり、選手たちとの連係、他チームのプレーを見つめることで、コミュニケーションの量やナレッジが高まった。
日本代表への思いは強い。すべてのことを成長につなげ、その目標に到達したい。
「今年28歳になります。(D2ということもあり、代表セレクターに)見てもらえるかどうか、そのチャンスがいつくるかも分からない。誰が見ているかも分からない。試合に出続け、全力でプレーし続けるしかないと思っています」
エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチはハードワーカーが好きだと知っている。「動き続けるロックになる」と誓う。
夢を見るのは、快適な睡眠環境の中でだけでいい。代表への気持ちを必ず叶えるつもりで成長の足は止めない。