![首位攻防戦快勝の理由は、良き日常に。佐々木剛[東芝ブレイブルーパス東京]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/KM3_1182_2.jpg)
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リーグワンの前身であるトップリーグの2005-2006シーズン以来のことだった。当時はまだ三洋電機ワイルドナイツ。第10節、第11節に、ワールドファイティングブルとヤマハ発動機ジュビロに敗れて以来のリーグ戦での連敗だった(それぞれ7-24、18-56)。
3月22日、埼玉パナソニックワイルドナイツが東芝ブレイブルーパスに31-42と敗れた。同チームは今季開幕からの10戦で9勝1引き分けと唯一の負けなしで、首位を走った。
しかし、前節(第11節)の静岡ブルーレヴズ戦に17-22と敗れており、2005年度以来の国内最高峰のリーグ戦で連敗を喫した。
秩父宮ラグビー場で開催したホストゲームで、ワイルドナイツを今季2回目の敗戦に追い込んだブレイブルーパスは、その勝利によって第12節終了時点で首位に立った。
10勝1敗1分けの勝ち点46とし、同45のワイルドナイツを上回った。
第7節、2月9日に熊谷で戦ったときには28-28の引き分けだった同カード。ブレイブルーパスは、その時の体感を活かして今回の勝利を手にした。
両試合に背番号7で出場した佐々木剛(たけし)は、約1か月半前に対戦した時に「アタックは通用する」と感じた。
「なので、きょうはディフェンスで相手の勢いを止められるか、が大事でした。そこを良くできた」と戦いを振り返った。
先を走っていたライバルに勝ち、「率直にうれしい」と相好を崩した佐々木は、33-22と勝った、前週のトヨタヴェルブリッツ戦で得た感覚もこの日に生きたと言った。
「その試合、ゴール前で長く守る局面もありましたが、守れた。それを自信にして、さらにペナルティをなくすように気をつけました」

相手の一次攻撃時にコンタクトするケースが多い。そこで勢いをつけさせない。それが佐々木の役目。
もともとブレイクダウンに強みを持っている。相手ボールを奪うシーンもあった。
後半23分に6番のシャノン・フリゼルがイエローカードを受けたことを踏まえると、ディシプリン面では反省点は残った。
チームは5試合連続でイエローカードを出されている。
ただ毎試合14人で戦う時間帯があり、そのぶん全員がいつも以上にハードワークをして勝利をつかんできた。ギリギリのプレーをしないと勝てない競り合いの中で規律を徹底する挑戦は続く。
その意識はいろんな局面に表れ、ワイルドナイツ戦ではラインアウト時に強いプレッシャーをかけ、相手にフラストレーションを与えた。
佐々木はこの日、ディフェンス時に相手と体をぶつけて「いける」と感じたという。
「ディフェンス時に、そう感じました。食い込まれてトライされたシーンもありましたが、何フェーズも耐えたシーンも、ターンオーバーもあった」
接点での好感触はエナジーとなった。
普段からサイズアップやパワーアップに取り組んでいる。しかし、コリジョン時に手応えを感じられているのは「自分たちのやることが明確になっているから」と感じている。
「相手のセットアップに対し、自分たちはこう守る、というものがある。立ち方もそうですし、体の当て方、(ターゲットの)どこにインパクトを与えるかなど、小さいことの精度が上がっています」
ディフェンス担当のタイ・リーバ コーチの指導はきめ細か。映像クリップを作り、いくつかのシーンをレビューする。例えば、数的不利な状況でも相手のパスが長ければ思い切って上がろうなど、次回への提案をしてくれる。
「決断が大事、と。迷うと相手のリズムになると言ってくれます」と話す。
ファーストフェーズに絡むことが多い佐々木は、ただ激しくタックルするわけではなく、状況を見て的確に、そして激しく動くことを心がけている。
自分がファーストタックラーなのか、セカンドなのか。それぞれで動きが変わる。
一の矢となったなら、低く刺さって相手の前身を止める。そこで上に入れば大きな相手には前に出られるし、2番目のタックラーが入るスペースを消してしまう。
ファーストタックラーが先に下を止めていてくれたらオフロードパスを封じる。
「外側に立つことが多いので、お腹から上半身に当たってボールを止めます。パスを出されてすれ違われることを許さないようにします」
仲間が足を固めてくれているので、引き倒し、ボールを奪い取ることにもアプローチする。
ワイルドナイツ戦ではアタック面でも輝いた。
前半33分のPR小鍜治悠太のトライはラインアウトから4フェーズを重ねて奪ったものだった。佐々木は3次目に低い姿勢で鋭く前進して好機を広げた。
「あそこは、いいテンポでボールが出てきた。相手がポジショニングする前に出られたので、みんなのお陰です」
アウトサイドでボールを前に運ぶシーンもあった。
「(アタック時は)外側にいることが多いので、スペースを見つけ、内側に情報を伝えますし、ボールを呼び込みます。パスを受けたらフットワークを使って前へ」
高校時代(青森・八戸西)、砂地のグラウンドで足腰を鍛えられた。それを活かせる状況だ。
「スペースがなければディフェンダー間にシャープに走り込みます」
次のフェーズに好機をつなぐ。

今季は開幕からの全12試合中11試合に先発で出場。昨季もプレーオフを含む14戦に出た(全18試合)。
昨季頂点に立ったチームでポジションを獲得しているのだから日本代表への期待も高まる。
本人も「毎試合ベストを出し続けられたらチャンスも出てくる」と赤白ジャージーを着る意欲がある。
現時点では代表チームからの接触はなく、「(同じポジションには)フィジカル面もサイズもある、いい選手がたくさん。そこに小さい体(180センチ、101キロ)で食い込むには自分なりの武器を見つけないと」と話す。
「サイズがないぶん、ワークレートを高く動き回って、できるだけ多くのブレイクダウンに頭を突っ込む。そして、低いタックルも。マコウ(元ニュージーランド代表主将)みたいにどこにでもいるのが理想です」
ブレイブルーパスが連覇すれば、自然と代表ヘッドコーチの目もこちらを向くだろうか。「チームは毎日の練習からすごくいい雰囲気。勝った、負けたに一喜一憂しない」という。
ミーティングから始まる毎日のトレーニング。ルーキーの亀井茜風が音楽に合わせたダンスを踊り、みんなの気持ちをほぐしてくれる。そんなアプローチがあるから、直後に指導陣の話を聞く集中力は高まり、いい雰囲気で練習に入れる。
「K9(ケーナイン/試合メンバー外の選手たち)の人たちが練習で試合以上のプレッシャーをかけてくれます。ユニット練(スクラムやラインアウトなど)では50パーセントぐらいの割合で、勝つ方が入れ替わる。そんな日常があるので、ポジティブな状態で試合に入っていけています」
砂地で下半身を鍛えた高校時代。大東大では主将を務め、リーダーシップを磨いた。そしていま、良き指導陣と仲間に恵まれている。
実直なバックローは、いい道を歩んでいる。