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【スーパーラグビー・パシフィック】キッズラウンドは最高! 盛り上がるクライストチャーチで、クルセイダーズが圧勝
クルセイダーズの出場選手紹介時は、子どもたちが描いた絵が映し出された。(撮影/松尾智規)

【スーパーラグビー・パシフィック】キッズラウンドは最高! 盛り上がるクライストチャーチで、クルセイダーズが圧勝

松尾智規

 3月15日(土)、暦の上ではニュージーランドは秋。真夏に戻ったかと思えるほどの強い日差しが照り付けた午後、クライストチャーチのアポロプロジェクツスタジアムでは、キッズラウンドにちなんださまざまなイベントが開催され、スタジアムは子どもたちの笑顔で溢れていた。

 今季のスーパーラグビー・パシフィックは、カルチャー(文化)、キッズ、ANZAC(毎年4月25日は、第1次世界大戦で戦ったオーストラリア・ニュージーランド軍団 “ANZAC”のメンバーを追悼する日)の特別ラウンドが設けられており、3月14、15日におこなわれた第5節は、スーパー・キッズ・ラウンドとして開催された。

 ニュージーランド(以下、NZ)のフランチャイズの5チームは、マーベル(マーベル・シネマティック・ユニバース)に関連したジャージを着用した。ブルーズは「スパイダーマン」、チーフスは「ブラックパンサー」、ハリケーンズは「キャプテン・アメリカ」、クルセイダーズは「アイアンマン」、そしてハイランダーズは「ハルク」を選んでピッチに立った。

写真左上から時計回りに。子どもたちが楽しめるアトラクションが何種類も。クルセイダーズのホーム試合名物の騎士たち。ハーフタイムの仮装パレード。盛り上がるスタンド。(撮影/松尾智規)


 クライストチャーチでおこなわれたクルセイダーズ×フォースの試合に足を運んだ筆者がスーパー・キッズ・ラウンドの様子を紹介したい。
 前週のレッズ戦に続き2週連続でアフタヌーン・ラグビーとなったこの日も、たくさんの子どもたちがスタジアムに駆け付けた。西側のゴールポストの後方には様々なスポンサーのブースが並び、そこでは、工夫を凝らした催しで子どもたちの関心を集めた。

 一番人気はフェイスペイントで、試合直前まで長蛇の列があった。
 ボール投げ(パスターゲット)も人気があった。ターゲットにボールを入れることができればラグビーボールがもらえる。子どもたちを引き寄せた。景品がもらえるもらえない関係なしに真剣にボールを投げる姿が見られ、試合が始まる前に景品のボールが無くなるほどだった。

 また、空気で膨らませた大型エアー遊具でラグビーを疑似体験できるコーナーは活発な男の子たちで賑わい、障害をすり抜けたり、身体をぶつけるなど楽しんでいた。紹介しきれないくらいのブースがあちらこちらにあり、活気に満ち溢れていた。
 これらの催しは、キッズラウンドでなくても(クライストチャーチの試合会場では)大抵のものが常に開催されている。まだラグビーがよく分からない子どもたちが試合の途中で退屈してもよいような工夫がされている。

◆ 9トライの猛攻でクルセイダーズが圧勝。子どもたちも大人も満面の笑み。


 キッズラウンドにちなんだ試合前のメンバー紹介もユニークだった。
 ビッグスクリーンに映し出されるクルセイダーズの選手紹介では、通常の写真の代わりに、子供たちが描いた選手の似顔絵が登場した。1~15番の各選手のユニークな似顔絵は、選手が変わるごとに観客から歓声や笑いが起こり盛り上がった。

 その後、クルセイダーズのホームゲームでお馴染みの、騎士がピッチを駆け回る演出が登場。子どもたちはもちろんの事、大人たちもこの演出が大好きだ。みんなが立ち上がって拍手、叫び、旗を振るなど、毎回観客を魅了している。クルセイダーズのホームゲームでしか見ることができない特別な演出だ。

写真中央が5トライのWTBマッカ・スプリンガー。右端は3トライのWTBセブ・リース。(撮影/松尾智規)


 試合は、前半はシーソーゲームとなった。20-18とクルセイダーズがリードして折り返した。後半に入るとクルセイダーズがトライを重ねて突き放す。55-33のスコアで勝利した。
 チーム全体で合計9トライを挙げた猛攻の内訳は、セブ・リースが3トライ、マッカ・スプリンガーが5トライと、WTBの2人で8トライを挙げた。デイヴィット・ハヴィリ、ブレンドン・エノーのCTBの2人が素晴らしいスキルでWTB陣にボールを提供。何度もトライアシストした。
 パスを受けた時には、あとはトライするだけ。そんな状況を作り出すパフォーマンスは素晴らしかった。

 チームも昨年の不振からすっかり立ち直り、強いクルセイダーズが戻ってきたような試合内容だった。キッズラウンドの特別な日に、ホームの観客の前で良い試合を見せることができた。

 この日は強い日差しが照りつけ、暑さが心配された。しかし、疲れを見せることなくはしゃぐ子どもたちの姿が多く見られた。ハーフタイムには、仮装した子どもたちを中心としたパレードがピッチをぐるりと回った。誰もが満足そうだった。

 クルセイダーズのホームゲームでは毎試合後、ファンがピッチに降りることが許される。試合が終わる前から、ゲートの前でその時を待つファンもいる。キッズラウンドのせいか、子どもたちが憧れの選手にサインや写真を求める姿は、いつもより多く、選手たちと長く触れ合っているように感じた。

写真左/Sky Sport NZの公式 X より。写真右上/試合後にはファンがピッチへ。写真右下/初めてラグビー観戦に訪れたファミリー。(撮影/松尾智規)


 さらにピッチ上では、幼い子どもたちがしっかりメンテナンスされた芝の上で寝転んだり、駆け回る姿があちらこちらで見られた。初めて観戦に訪れた家族もいて、ラグビーがわからないながらも、キッズラウンドで盛り上がるスタジアムの雰囲気を楽しんでいた。

 この日、クルセイダーズが勝利したこと以上に印象的だったのは、何よりも子どもたちの笑顔があふれていたことだ。キッズラウンドは、引き続きラグビーを楽しんでもらう狙いがある。新たなラグビーファンを育む素晴らしい試みだ。将来的にラグビーを始める懸け橋となる。大切なイベントだと強く感じた。
 この日の午後、クライストチャーチにはいい時間が流れていた。スタジアムの盛り上がりは、イベントの大成功を伝えた。


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