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【Just TALK】「我々は昨季、『試合を通して優勢である』ことに慣れてしまった」。サム・ケレビ[浦安D-Rocks]
今季は開幕からの全11試合中、8試合に出場している。(撮影/松本かおり)
2025.03.16
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【Just TALK】「我々は昨季、『試合を通して優勢である』ことに慣れてしまった」。サム・ケレビ[浦安D-Rocks]

向 風見也

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 フィジーをルーツに持つ核弾頭だ。

 浦安D-Rocksのサム・ケレビは、3月14日、東京・秩父宮ラグビー場でリーグワン1部の第11節へ本職のセンターとして先発した。

 前半12分の先制トライ時に突進を重ねるなど、攻守で爆発した。チームは後半4分までに22-0とリードした。

 しかし最後は、一昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイに22-33と逆転負けを喫した。昇格初年度のクラブにあって、オーストラリア代表50キャップの31歳は何を思ったか。

——きょうの所感は。

「チームのパフォーマンスは誇りに思います。前半はすごくいいラグビーができ、後半もその片鱗はちらほらと見られました。ただ、質の高いチームを相手に隙を与えてしまうと、勢いで(流れを)持っていかれてしまう」

——ご自身は素晴らしいキャリーと防御を披露していました。

「アタックでもディフェンスでもチームに勢いをもたらすのが自分の誇りなので、そういっていただけて嬉しいです。ただ、チームのために自分の仕事をしているだけです。チームが80分間、機能しないといけない」

3月14日のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦。前半12分に先制トライを挙げた。(撮影/松本かおり)


——チームを勝たせるうえで、どんな障壁がありますか。

「メンタルの部分が大きいと思います。自分たちができる部分に集中しなければいけないところで、レフリーをはじめとした外的要因に左右されてしまっている。自分たちから、ゲームに影響力をもたらさないといけないです。ひとつの局面に負けた後、またもうひとつの局面に負けてしまうと、スピアーズのような質の高い相手に勢いを与えてしまう。ひとつ負けた、その次を勝たないといけないです」

 22点リードで迎えた後半5分、相手ボールのキックオフを確保されるやまもなく失点。その後は次第に反則も増え、向こうの破壊力を真に受けた。

 ケレビら実力者を擁するD-Rocksだが、安定的な強化を重ねてきたスピアーズに屈した格好。勢いを保てなかった。

 これで8勝1敗2分のスピアーズが12チーム中暫定2位(翌日3位)となったのに対し、1勝10敗のD-Rocksは最下位にとどまっている。

——D-Rocksときょう戦ったスピアーズ、もしくはケレビさんが2019~22年度までプレーした東京サントリーサンゴリアスとの間に、主力選手の経験値、ポテンシャルと、極端な差があるわけではありません。それでも星取表は残酷な結果を示しています。ギャップはどこにあると感じますか。

「(自軍には)ディビジョン1慣れしていない選手がいるのも事実。また、ふたつのチームが合併した後、そこをつなぐことは、難しいことです」

——確かにD-Rocksは、22年に前身のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安とNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(現レッドハリケーンズ大阪)の再編によりできたクラブです。

「すでにD-Rocksとしてひとつのチームにはなっています。ただ、いい癖、習慣を積み上げるのには時間がかかる。練習の時も、試合の時も、全ての局面でいい癖をつけていかないといけない。その習慣が、ピンチになった時に出るものなのです。いまはそれ(よい習慣)が、スコッド全体に染み渡っているのか…。きょうは試合直前、故障でメンバーが代わりました(南アフリカ代表ナンバーエイトのヤスパー・ヴィーセが当日欠場を発表)。そのあたりも含め、いい癖づけが必要です。

 ディビジョン2では20分あれば相手を完全に崩せた。ただ、ディビジョン1ではそれに80分が必要です。我々は昨季、『試合を通して優勢である』ことに慣れてしまった。

 いま理解すべきは、流れが自分たちに来ないこともある、ということです。悪い状態の時にどう流れを取り戻し、80分間、パフォーマンスを出し続けるかが大事です。それはフィジカルの問題でも、どれだけ努力するかという話でもない。メンタルです。

(D-Rocksには)質の高い選手が揃っているので、1回、自分たちの思ったようにいかない局面があったその次にどうできるかが鍵になります。集中力を切らさず戦い続ける。それを1分、1分、積み重ねていかないといけない。それをきょうは前半にできていて、後半はできなかった」

オーストラリア代表キャップ50。186センチ、106キロの31歳。(撮影/向 風見也)


 京都成章高出身でフッカーの藤村琉士ゲーム主将は、「(後半も)対抗はできるんですけど、もう1段階、上げていかなあかん」と語った。

「いいチームは80分間、素晴らしい。(自軍も)後半も変わらずにやらないと…と、自分たちは考えないといけない」

 向こうの対面がハーフタイム明けから南アフリカ代表76キャップのマルコム・マークスに代わったことについては、藤村は「すごくいいプレーヤーで、強かった。ただ、彼(マークス)がどうとかではなく、スピアーズのフォワードが全体的にエナジーを出してきていた。それを、僕たちもやらないといけない」と続けた。


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