![ダービーに勝った。TJの髪を刈った。津村大志[リコーブラックラムズ東京]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/KM3_0798_2.jpg)
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お互いのチームが熱をぶつけあった。
3月15日(土)に秩父宮ラグビー場でおこなわれた横浜キヤノンイーグルス×リコーブラックラムズ東京は、母体企業が業務面でも競い合う関係性から『事務機ダービー』と呼ばれる。
トップリーグ時代も含めた昨季までの11回の対戦で6勝5敗と勝ち越していたイーグルスは、ダービー5連勝中と相性の良さを感じさせていた。
しかし、今回の戦いを制したのはブラックラムズ。僅差の試合を27-20と勝ち切った。
両チームの選手が気持ちを込める好ゲームとなった。イーグルスとブラックラムズの間に力の差はほとんどなかった。
最終的に、セットプレーの安定感の違いが勝敗を分ける要因の一つになった。
ブラックラムズは13回のラインアウトで12回確保と安定し、スクラムも、序盤こそエンゲージするタイミングがなかなか合わなかったが、組み合えば押し込み、相手の反則をたびたび誘った。
先発予定だった3番の大山祥平が急遽パディー・ライアンに代わるアクシデントなどもある中で、1番の津村大志(たいし)は落ち着いて任された役割を遂行した。

津村は2023-24シーズンの途中に帝京大からアーリーエントリーで加入した。同シーズンもレギュラージーズンに1試合先発し、入替戦にも途中出場している(1試合)。今季は第5節以降、この日のイーグルス戦まで7試合連続で出場している(6試合が先発)。
事務機ダービーに向かう日々の途中、チームは選手たちに対してこの試合が持つ意味、戦いの歴史を伝える機会を設けた。
さらに試合当日もゲームキャプテンを務めるTJ・ペレナラが、自分たちが背負っているものを何度も選手たちに伝えた。
そういう空気の中で、社員選手の津村も燃えた。174センチ、108キロというサイズながら、相手の下に潜り込み、押した。
フィールドプレーでも低い姿勢で前に出たり、倒したり、後半22分まで奮闘を続けた。
「会社があるからラグビーができています。目に見える形で恩返しできてよかった」と語り、自分たちのプレーする姿が会社の結束を強くするのではないか、とした。それがまた、「僕らのモチベーションにもつながります」。
スクラムの攻防について、試合中、2番の大内真、3番のパディー・ライアンとコミュニケーションを取って相手との駆け引きに対応したと話した。
この日に向けて分析を重ねた準備が生きた。
「相手の組み方を分析し、自分たちがどう組むか話してきました。アングルをつけたり、バインドファイトをしてくるし、前へ詰めてくる。それに合わせるのではなく、準備してきた自分たちの組み方を実践できました」
組み合えば押せる感覚を得た。8人で固まり、フロントローはバックファイブの押しをしっかり前に伝える。積み上げてきたものを発揮できる試合が増え、自分たちのスクラム文化が根付いてきたようにも感じている。
ラインアウトでも、自分たちが取り組んでいるエアプレッシャーがうまくいった。
「セットプレーを強みにしているチーム、それも順位が上のチームにプレッシャーをかけられたことは自信になります」
ひとりのフォワードプレーヤーとして「めちゃくちゃ嬉しい」と相好を崩した。

2023-24シーズン後、オーストラリアのキャンベラにあるクラブ、ガンガーリン・イーグルス(Gungahlin Eagles)で2か月を過ごした。
試合にも出場し、いい経験を積む。しかし、ブラックラムズのスクラムに馴染むタイミングが遅れ、今季序盤に出場機会を逃すことにもつながった。
しかし慌てず、チームの組み方と自分の特徴を擦り合わせる。頭が下がりがちだった点も修正。コーチと映像をチェックし、練習を重ねた成果だ。
リーグワンのコンタクトレベルの強さに「命懸け」で対抗していると話す。しかし、小さいからこそ「相手の懐に入っていける」と自分の生きる道を知る。賢く、勇敢に戦う。
チーム内では散髪係も務めている。手先が器用で、帝京大3年時、周囲から推されて同学年の散髪担当になったのがきっかけ。ダービー前日にも2人の頭にハサミを入れたそうだ。そのうちの一人はTJだった。
仲間の頭を刈って、社員の人たちが見つめる中で勝った。
チームは今季初の連勝。上位チームとの差も縮まって、23歳のプロップはまた自信を深めた。