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「TJほどの9番と日本で対戦できる。最高だよ」。ファフ・デクラーク[横浜キヤノンイーグルス]
「ものすごく調子がいい」と満面の笑み。(撮影/松本かおり)
2025.03.13
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「TJほどの9番と日本で対戦できる。最高だよ」。ファフ・デクラーク[横浜キヤノンイーグルス]

田村一博

 それぞれのチームの9番が、観戦者の目を奪い、勝敗に直結するモメンタムを生む存在となる可能性は高い。
 3月15日に秩父宮ラグビー場でおこなわれる横浜キヤノンイーグルス×リコーブラックラムズ東京で、ファフ・デクラークとTJ・ペレナラがそれぞれのチームの9番のジャージーを着る。

 デクラークは南アフリカ代表キャップ58を持つ33歳。ペレナラも現在33歳で、ニュージーランド代表キャップ89を持つ。
 ペレナラはイーグルス戦ではゲームキャプテンを務める。

 ペレナラについて「最高の選手です」と話すデクラークは、今季ブラックラムズに加入した相手について、「リーグワンでのパフォーマンスもとてもいい。これまで何回も対戦してきましたが、日本でこれだけのクォリティープレーヤーと対戦できるのは嬉しいこと」と話す。

 両選手の足跡をたどれば、スーパーラグビーでの直接対決は何度もあるが、テストマッチでの対戦はそう多くない(ファフ=ライオンズ、TJ=ハリケーンズ)。
 オールブラックスでのペレナラは途中出場が多いため、テストマッチで2人が同時にピッチに立つことは限られているからだ。

左足からチームを前に出すキックを繰り出す。(撮影/松本かおり)


 それでも、2019年のワールドカップ、プールステージで両チームが激突した試合(23-13でNZ勝利/日産スタジアム)ではともにプレーした時間帯があった。
 2021年9月25日のザ・ラグビーチャンピオンシップ(19-17でNZ勝利/豪・タウンズビル)では2人揃って先発だった。

 対戦相手として、ブラックラムズでのプレーを見た感想を、「自由にプレーさせてもらっているように見えます」とした。
「おそらく、そういう権限が与えられているのでしょう。そうなると予測不能な動きをして、手強くなる」と警戒を深めた。

「ただ、SH同士での対決とよく言われますが、(じかにやり合うといった)そういうシーンはあまりありません。それより、FWがラックまわりで(ペレナラに)プレッシャーをかけられるようにコミュニケーションをとるつもりです」と話した。

 過去、同じピッチに立った記憶をひもといて、「TJは(試合中に)レフリーにずーっと喋っている印象があります」と笑う。
 あなたは?
「レフリーに敬意を払っているので、そういうことはあまりしないようにしているのですが、テンションが上がると、つい……ということはありますね」

 SH同士の小競り合いもよく見ます、と言うと、「若い頃は自分もよくそんなことをやっていたし、年上の選手たちに、よくやられていました。ま、スクラムハーフは、そういう特性のポジションですから」といたずらっぽく笑った。
 そして、「そのスタンダードは落とさないようにしています」とした。

 ただ土曜日の試合では、ペレナラに必要以上に仕掛けないとした。
「試合が終われば、ファンクションでもよく話してきた仲ですから、余計なちょっかいを出すのは違うかな、と」
 姑息なことはせず、「タックルとラインブレイクは思い切ってやる」と力強かった。

 バイウィークを挟んで2週間ぶりのゲームとなる今回。自身の状態を「過去最高にフィットネスが高い」という。
「ゆっくりできました。ここまで10節を戦った疲れもありません。次の5節も楽しみ。調子はもっと上がっていくと思うし、もっとチームの武器となる働きをしたいと思います」
 試合2日前の練習では、全体練習後に何度もキックの練習を繰り返していた。

ブレイクダウンのトレーニング。「2週間後、南アフリカ代表は日本でプレーする選手たち向けのオンラインミーティングをします。それには参加予定です」。(撮影/松本かおり)


 先月1歳になった愛娘がいる。父親となり、「家での仕事が増えて寝不足だよ」と言うけれど、「妻への愛情とはまた違う愛情がある。守ってあげたい」と表情が崩れる。
 前節が終わった後の数日の休みの間に、南アフリカから来日した両親と都内にある(ハリー・ポッターの)テーマパークを訪れてリラックスできた。エナジーを得て、リーグ後半戦へ向けての準備は整っている状態だ。

 イーグルスは開幕からの10試合で5勝5敗、現在5位という成績だ。その結果について経験豊富なスクラムハーフは、「これまで過ごしてきたシーズンの中盤では(今季が3季目)、いちばんいいチーム状態と感じている」という。

「いい試合も悪い試合もありましたが、規律やターンオーバーからの切り替え、キックを蹴ったあとのプレッシャーと、(全員が)常にオンの状態にいる。そういう細かい点が昨シーズンよりいいですね。積み上げてきたものを感じます」

 仲間への信頼が高まっている。百戦錬磨のワールドクラスが、持てる力を出し切る状況は整っているようにも感じる。


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