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【Just TALK】「皆が笑っている。職場が楽しい」。サム・ケイン[東京サントリーサンゴリアス]
今季は開幕からの10試合で4試合に出場。第8節以降は3戦連続で先発出場中。(撮影/松本かおり)
2025.03.10
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【Just TALK】「皆が笑っている。職場が楽しい」。サム・ケイン[東京サントリーサンゴリアス]

向 風見也

 オールブラックスことラグビーニュージーランド代表で104キャップ(代表戦出場数)を持つサム・ケインは、2023-24年シーズンにサバティカル(一時休暇)制度を利用して東京サントリーサンゴリアスでプレーした後、今季から新たに3年契約を結んでいる。

 2023年にはフランスで、自身3度目の挑戦となったワールドカップへ主将として挑んだ。サンゴリアスへはその直後に加わるも、怪我などの影響で開幕から6戦のみの出場に終わっていた。日本一を争うプレーオフにも加われなかった。

 その後は代表活動に参加の後、再来日した。

 序盤こそ故障や脳震盪に苦しみながら、第8節以降はここまで3試合連続で出場中。要所で強烈なタックル、スティールを繰り出す。

 いまは休息週を経て、3月16日の第11節(対三菱重工相模原ダイナボアーズ/たけびしスタジアム京都)を見据えていよう。

 現在地について自ら話したのは2月28日。本拠地での練習後だ。囲み取材に応じた。

——今日は全体トレーニングを終えると、同じフランカーの山本凱選手、下川甲嗣選手とタックルや接点の動きに関する自主練習をされていました。

「毎週、3人で何かしらのことをしています。きょうしたのは、ブレイクダウン周りでの動きと、タックルに入る時の足のため方、コントロールの仕方についてです。(防御網の)ラインスピードを上げたいため、私たちは前に出る。そこで(走者に迫る時に)細かいステップを踏むことで、相手にダイレクションチェンジをされてもしっかり対応できるようにするのです」

——あらためて、サンゴリアスと3年契約を結んだ背景を教えてください。

「まず、サンゴリアス側が 3 年契約を提示してくれたことがひとつあります。個人的にも、昨季は怪我でチームに貢献できなかった。残していきたいものがあった」

1992年1月13日生まれの33歳。188センチ、107キロ。ニュージーランド、ロトルアの生まれ。(撮影/向 風見也)


——現在のニュージーランド協会は、他国でプレーする選手が代表になれないルールを設けています。日本でプレーするにあたっては、オールブラックスとしてのキャリアを休止する必要がある。

「そこはずっと考えていた部分ではあります。ただ私は、昔から日本でプレーしてみたい気持ちを抱いていました。ニュージーランドで13 年にわたってプロとして活動しており、タイミング的にも今回がよかった。もともとニュージーランド協会と結んでいた契約はあと1年、残っていましたが、交渉の末にこちら(日本)へ来られるようになりました」

——この3年間は、どんな時間にしたいですか。

「個人的にはまだ限界には達していないし、まだいいラグビーができる身体でもあると思います。しっかりと準備をして状態を保ち、タイミングを見て様々な経験を(仲間と)共有したいです。結局のところ自分は負けず嫌いなので、1 週間をかけて皆で準備したものを週末の試合で出し切り、勝つことを一番に考えます」

——来日2年目となります。オフの過ごし方にも幅が広がったのではないでしょうか。

「よく子どもを公園に連れて行きます。まだ小さいのでそんなに遠出はできませんが。最初に日本に来た時には慣れるのに時間がかかったものの、いまは馴染んできました」

 問答のさなか、クラブハウスでの日常に話題が転じた。

「サンゴリアスの環境は本当に素晴らしく、毎日仕事に行きたい気持ちでいられます。

 家からクラブハウスまで自転車で15 分以内という距離です。そのおかげで、家族との時間をしっかり過ごせるのはいいことだと感じます。(リーグワンでは)遠征に行くにしても、ほとんどが前泊だけで済みます。(それまでプレーしていた)スーパーラグビーの時は(海外での)長距離のツアーで家を空けることも多かった。それを考えても、家にいられる時間が長いことは嬉しい。

(同僚と)いつも笑い合える。皆が何を言っているのかを完全に理解できるわけではないのですが、とにかく皆が笑っている。それによって、仕事に来るのが楽しいのです。

 私もいま、日本語を学んでいます。先生に教わった言葉をチームの皆の前で試したら、『こういう言い方のほうがフランクだよ』とスラング風に直されます」

 こうなると気になるのは、どの選手が、どんなフレーズをオールブラックスのリーダー経験者に伝えたのかである。

 その手の問いは記者団からも飛んだが…。

「気をつけないといけないんですよ。それが使ってはいい言葉なのかどうか、自分でもわからない!」

 これぞオールブラックス。

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