![【Just TALK】俺にタックルのこと聞くの? 齋藤直人[日本代表/トゥールーズ]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/02/IMG_0488-1.jpg)
ラグビー日本代表のスクラムハーフで、現在フランス1部リーグ・トップ14のトゥールーズでプレーする齋藤直人が2月2日、小中学生向けのクリニック「齋藤直人×JAL SPECIAL RUGBY LESSON」に参加した。
会場の神奈川・横浜カントリー&アスレチッククラブは悪天候に見舞われるも、パスの極意、練習法、日々の心構えなどについて伝えた。トップ14の休息期間を利用し、少年少女に刺激を与えた。室内でのトークライブ、囲み取材を通して思いを語った。
——今回のセッションについて。
「セッションではあるのですけど、純粋に楽しんじゃっていました。JALさんのサポートのおかげでいただけた機会でした」
——子どもたちに伝えたいと思っていたことはどんなことですか。
「そんな、何か伝えようとは思わなかったですけど、自然と楽しむこと、あとは何か質問があれば——うまいこと言えるタイプじゃないですけど——自分が素直に思っていること、経験してきたことを伝えられたらなと」
——レッスン中、子どもたちへはパスをする瞬間、息を吐きながら投げるのがよいと助言されていました。いつから意識されているのですか。
「大学、くらいですかね。武川さん(正敏=当時の早大でコーチを務めていた元スタンドオフ)というコーチに教わったんですけど。
やっぱり、自分がラグビー選手になりたいと思ったのは、近くにトップ選手がいて…ということでした。自分はそういう選手にはなれていないですけど、(参加者に)身近に接して、少しでもいい影響を与えたり、将来のことを考えてもらえるようにできたりしたらいいかな、とは思っています」

トークセッションでは、参加者の質疑応答にも応じていた。相手の背景を聞きながら「自分が素直に思っていること、経験してきたこと」を話した。
例えば、中学3年生のフォワードの選手にトレーニング方法について聞かれると…。
「中学3年だったら成長中だと思うので、食べて身体をでかくすることが大事だと思います。あとは、いま何を伸ばしたい?」
答えはタックルだった。齋藤は「難しいね、俺にタックルを聞かれると…」と笑って続けた。
「これは、どの技術にも言えるけど、うまい人のものを見るというのが大事だと思っていて。いろんな人のやり方を見て、それをアレンジしながら自分のものにするというのは、いままで自分がそうしてきて大事かなと。
あとは、これも誰にでも言えるけど、いろんな人がいろんなことを教えてくれるから、まずはそれを試してみる。それが合えば続ければいいし、合わなければ違うな…と(切り替える)。そういうオープンなマインドは、成長していくうえで必要だと思います」
リーグワンの東京サントリーサンゴリアスに在籍していた昨季以前も、対戦相手にいる海外出身のスクラムハーフの一挙手一投足に視線を送っていた。画面を通し、欧州6か国対抗で活躍する面々にも興味を持ってきた。
他者のエッセンスを貪欲に吸収しながらも、自らのスタイルを大切にしてきた。ハイテンポで精度の高いパスを重ねた。
いまはフランスで、キック主体のゲーム作りに取り組む。現地では接点の周りからの陣地脱出が強く求められるとあり、技術的な指南を受けながら足技の精度、飛距離を磨く。
そもそも海を渡る決断をしたのは、それまでよりも大きく羽ばたくためだ。
2023年にフランスでのワールドカップに初出場も、予選プールで敗退。2027年のオーストラリア大会で結果を出すべく、自身の幅を広げたかった。
2024年は、日本代表が6、7月に実施したサマーキャンペーンのさなかに渡仏を発表した。10、11月の国内外ツアー時は、すでにトゥールーズに入団済みだった。
同年、テストマッチの戦績は4勝7敗。約9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズヘッドコーチは、スコッドを大幅に若返らせていた。齋藤は言葉を選ぶ。
「当たり前すぎるんですけど、選手もコーチも100パーセントで取り組んでいます。
いま、世間的には『若いメンバーが多くて、経験が…』と。でも、これって絶対に必要。経験は、すべてではないですけど大事だと思うんです。僕も最初は、外国人選手と試合をしたら怖いなという気持ちもあったかもしれない。いまは、そういうことはなくなった。これって、たぶん、経験からくるものです。
あとは、呼ばれた選手が結果を残すだけです。よくなっているとは思いますし、自分たちがどうなっていくべきかはもっと(よりクリアになるはず)」

――2027年までに取り組みたいことは。
「個人としては…。前回大会で、プレッシャー下で自分の能力を100パーセント出せなかったところがあったので、そこです。あとは、キッキングゲームのところ。ざっくりと言えば、そのふたつを伸ばしたいです。フランスでは基本、イグジッド(自陣からの脱出)のキックは9番(スクラムハーフ)から蹴る。そこは(これまでとの)違いですし、成長させなければならない点です」
―—フランスの環境で己を磨くことが、自らの課題解決につながるイメージでしょうか。
「直接、つながっているかはわからないですが、キックのところはそう言えます。プレッシャー下で自分の能力を…というところに関しても、(フランスでは試合の)フィジカルレベルが高い。コンタクトレベルの高くない練習でも、ブレイクダウンでかかるストレスは凄いです」
——トップ14で生き抜くにはキックが必須ですが、ジョーンズ率いる日本代表は高速展開を志向している。両立は難しくないですか。
「秋は、難しいとは思わなかったです。フランスも遅いわけではないですし。もともと(さばきのテンポが)速いことは自分の強みで、トゥールーズでもそれを求められる。
それに、いずれは(日本代表も)キックは、使うと思うんですよ。これはいまの(日本代表の)ラグビーを批判しているんじゃなくて、エディーさんも(キックは)必要だと言っていました。いまは積み上げる(ランとパスを重ねる方針を植え付ける)。そこは自分たちも理解しています。その意味では、いち選手としてキックを伸ばしておく必要があるなと」
いまはフランスに戻り、トゥールーズでの熾烈な定位置争いに挑んでいる。