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「エディーは大丈夫」。2トライ1アシストでPOMのゲニア[花園近鉄ライナーズ]、自分と恩師を語る
1988年1月17日生まれの37歳。174センチ、82キロ。オーストラリア代表キャップ110。スーパーラグビーのレッズ、レベルズ、トップ14のスタッド・フランセでプレー経験がある。2019年度にライナーズに加わった。(撮影/松本かおり)
2025.02.23
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「エディーは大丈夫」。2トライ1アシストでPOMのゲニア[花園近鉄ライナーズ]、自分と恩師を語る

田村一博

 放り、走った、蹴った。
 6トライを奪い、39-12と快勝した試合で背番号9は前半に奪った3つのトライにすべて絡み、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

 2月22日に長崎で行われた九州電力キューデンヴォルテクス×花園近鉄ライナーズで、ライナーズのウィル・ゲニア(SH)が躍動した。
 37歳。オーストラリア代表キャップ110の実績をもつものの、現在の姿は、かつての栄光のあまりではない。ハードワークを欠かしていないからだ。

 自分について、「良くなっていると思う」と、さらりと言える。
「ゲームの激しさにフィットできる準備もしているし、経験が上積みされて、若い頃とは違うプレーもできるようになっています」
 年齢を言い訳にしたくない。「ハードワークし続けることで自分を成長させています」と話した。

「オフフィールドでは飲みに行くことも、リラックスする時間もありますが、優先順位のいちばんにラグビーがあるのは変わらない。そう決めたら、自分の日常も決まる」とプロフェッショナルの意識を言葉にする。
「楽しい時間も過ごしていますが、ラグビーをするのが好きなので、そこで成長できることを一番に考えることは(以前と)何も変わりません」

 キューデンヴォルテクス戦のパフォーマンスは、動き、判断とも、その言葉を証明するものだった。
 パス、キック、ランと、的確、そしてはやい。チームに勢いを与えた。

 0-7とリードされて迎えた前半20分過ぎ。相手ゴール前で攻め立てるチームを巧みにコントロールした後、9フェーズ目に右外で待つCTB岡村晃司にロングパスを放る。背番号12がインゴールに入った。

 24分はラインアウトから展開したアタックで自らインゴールへ飛び込んだ。
 SOクウェイド・クーパー、FB雲山弘貴が前に出てできたラックから出たボールを手にすると、右へのパスダミーからタテに走り、インゴールにボールを置いた。

キューデンヴォルテクス戦では2トライを挙げた。写真は前半25分、ボスト横にボールを置いたシーン。(撮影/松本かおり)


 36分過ぎにはラインアウトからモールを組んだ後、ライン際の狭いスペースを攻めようとしたキューデンヴォルテクスの細かなパスをインターセプト。50メートル以上をひとりで走り切った。

「チームとしてすごくいい試合ができました。今日はハーフバックとしてとてもラッキーだった。FWがたくさん仕事をしてくれましたから。ボールキャリーやディフェンスでしっかり前に出てくれたから、本当にプレーしやすかった。個人というより、チームとして他の選手たちがしっかりと頑張ってくれたから勝てたと思います」

「みんなが頑張ってくれるから、そこに(呼ぶ人、走り込んでくれるところに)ボールを放るだけでよかった」と仲間を称える。
 自身のインターセプトからのトライについては、「(相手の動きを)読んでいたことが、そのまま起きた感じです。パスダミーされていたら、逆に走られていた」と回想する。

「ただ、フィフティーフィフティーの状況でしたが、自信を持って動いた。それがいい結果につながったと思います」と話し、プレーのキモを伝える。
 50メートル以上のランについては「トライするには、走るしかなかった」とユーモアで返すも、ハードなトレーニングを積んでいることが分かるシーンだった。

 パプアニューギニア出身。父は同国の大臣を務めた人で、ゲニア本人は、勉強のためにオーストラリアへ留学した。そこでラグビーの才能が開花し、インターナショナルの舞台で多くの栄光を手にしてきた。

 2019年度からライナーズに加わり、今季が6シーズン目。年齢を重ねても、意識高く毎日を過ごせば、これだけのプレーができることを証明する。
 若い頃は、試合に出たい(レッズ/スーパーラグビー)、代表チーム(ワラビーズ)に入りたい。そんな、高いモチベーションを持って毎日を生きていた。

 現在のモチベーションはライナーズ愛。「ライナーズが好き」と笑顔で話す。
「チームが成功できるように努力していく。チームメートの成長を助け、目標に向けて一緒に連れていくことが、いまの私のモチベーションです」

 自身も若い頃、才能を見つけ、育ててくれる人と出会った。
 2007年2月3日、ハリケーンズ戦(25-16で勝利)に途中出場してスーパーラグビーにデビューしたのは、19歳と2週間の時だった。その時、チームを率いていたのは現日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズだ。

今季は開幕かにの6戦中5戦に出場。すべて先発でチームを動かしている。(撮影/松本かおり)


 エディーは翌週、2007年2月10日のクルセイダーズ戦(22-33で敗戦)には18歳と10か月だったクウェイド・クーパーにもレッズデビューの機会を与えた。
 ゲニアとクーパーがスーパーラグビーでコンビを組んだのはその時が初めて。そして、2人はいまもライナーズでともにプレーをしている。
 ちなみに、その時クルセイダーズを率いていたのはロビー・ディーンズだった(現埼玉ワイルドナイツ監督)。

 そんな若き日があるからゲニアは、「私はエディーが大好きですよ」と言う。
「たくさんの機会を与えてくれた人です。ハードワークすること、どれだけ熱くプレーできるか、をいつも求められました。息をするようにラグビーを考えろ、と。そのためにはプレーすること、そしてラグビーを好きにならないと、と言ってくれた。エディーはハードだし、タフな人ですが、いい選手になりたかったので、彼との時間を楽しめました。彼がいなかったら、いま、自分はこうなっていない」

 自分にとってメンターと言っていい人が率いる日本代表がいま、なかなか結果を残せないでいることを知っている。若い選手が中心となっていることも。
「時間はかかりますよ」と言って続けた。

「テストマッチレベルで戦うには、15試合から20試合は戦わないと、そのレベルには達しません。テストマッチで勝つための練習を重ねる時間が必要です。でも、エディーのこれまでを見てください。とこでも成功させてきた。素晴らしいコーチ。信頼し、我慢してください。大丈夫です」





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