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いよいよ今週末、2025年度のスーパーラグビー・パシフィックが開幕する。
2月14日のバレンタインデーにクルセイダーズ×ハリケーンズのニュージーランド(以下、NZ)勢の対決で幕を開ける。NZ国内のメディアも賑わいを見せてきており、王国のラグビーファンも待ち切れないようだ。
昨季までNZ 5チーム、オーストラリア(以下、AUS) 5チーム、フィジー1チーム、パシフィック1チームの合計12チームが競い合っていた。しかしレベルズ(AUS)の財政難でチームが解散となり今季から11チームに削減されておこなわれる。
16節でレギュラーシーズンを争い上位6チーム(昨季の8チームから変更)でプレーオフをおこない、優勝を争う。AUSのチームが4チームになりASUの各チームのレベルが上がると予想される。以前のようにNZチーム優勢とはいかないだろう。
開幕を目前にNZのフランチャイズのブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズと、NZを本拠地として活動しているモアナ・パシフィカの6チームを分析する。
今回はブルーズ、チーフス、ハリケーンズの3チーム。
◆ブルーズ/今季も充実メンバー。ボーデン復帰で連覇を狙う
21年ぶり4回目の王者に輝いた2024年のブルーズ。タレント揃いながらも長年優勝から遠ざかっていたチームを見事に機能させたのは、昨季ヘッドコーチ(以下、HC)に就任したバーン・コッターだった。その指導力の影響は大きい。オールドスタイルと言われるほどの、一昔前のヨーロッパスタイル。FWにこだわるシンプルなゲームプランが見事にチームにマッチした。
SO/FBボーデン・バレットがサバティカルから今季チームに復帰、昨年以上に充実したメンバーとなった。最も層の厚い10番と15番のセレクションはHCを悩ませそうだ。
10番のポジションは、バレット、SO/FBスティーヴン・ペロフェタ、そして昨年飛躍して代表キャップを得たSO/CTB(12番)、ハリー・プラマーの3人のオールブラックスで争う。
15番のポジションは、ここでもバレット、ペロフェタの名前が挙がり、積極的なランが光るコール・ホーブス、193㎝の大型BK、ザーン・サリヴァンと言った能力の高い選手で奪い合う。
BKには他にも、13番リーコ・イオアネ、WTBケイレブ・クラーク、マーク・テレアと代表クラス(ABs/ABs XV)のタレント揃いだ。
プレシーズンマッチを見てもFW勢に勢いを感じる。
昨季大活躍のNO8ホスキンス・ソトゥトゥは、大会MVPに選ばれながらも結局一度も代表には選ばれなかった。その悔しさもあるだろう。その存在は、今季も他チームの脅威となる。
BK同様に人材豊富なFWもいい。昨季のように泥臭いプレーでボールを確保できれば、他チームが太刀打ちすることは難しい。ブルーズが今季も頂点に立つ可能性は十分にあり1996、1997年に成し遂げた以来の連覇で黄金時代の到来となるか。
●注目選手 : LO/FL/NO8キャメロン・スアフォア
昨季、癌の治療をしながらプレーをした勇敢な男。コンディションも戻ってきた。プレシーズンマッチでは持ち味の強さを活かし、ボールキャリーで前に出る力を発揮した。
昨季代表デビューしたLOサム・ダリーが肩のケガで離脱、FL/NO8アキラ・イオアネがチームを去った(花園近鉄ライナーズへ)のは痛手だ。しかしスアフォアには2人のポジションをカバーできる能力がある。チームにとって貴重な存在だ。苦境を乗り越えた男がチームに勢いを与える。
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◆チーフス/2年連続のファイナリスト。3度目の正直となるか
2025年、チーフスの頭には優勝しかない。
昨季はプレーオフに標準を合わせ、レギュラーシーズンで2度負けた1位通過のハリケーンズを準決勝で撃破した(30-19)。しかし、万全で挑んだはずの決勝でブルーズに完敗(10-41)。2年連続して決勝で涙を呑んだ(2023年はクルセイダーズに20-25)。
今季こそ3度目の正直で、2013年以来の優勝となるか。
今季のチーフスは選手入れ替わりが少ない。昨季同様の成績が見込まれる。
FWには代表クラス(ABs/ABs XV)が多数おり層の厚さが感じられるものの、アキレス腱のケガでHOサミソニ・タウケイアホが出遅れる。昨年またたく間に世界に名を売ったFL/NO8ウォレス・シティティはシーズン直前に膝の手術を受けた。主力2人の長期離脱の影響が気になる。
上記のケガ人の穴埋めとして、クルセイダーズからHOブロディー・マカリスター、ブランビーズからFL/NO8ジャローム・ブラウンといった経験豊富な選手を獲得した。まだ表舞台での活躍を見せていない20歳のFL/NO8マラカイ・ランプリングもいる。素材はいい。出場機会に恵まれれば、昨季大ブレークしたシティティの再来となっても驚かない。
BK陣の層も厚く、多くの選手が代表クラスで経験値を上げている。
昨年代表デビューしたSHコルテス・ラティマがチームに新たなスパイスを持ち込むか。同ポジションのザヴィア・ローは、素早いパスワークと密集をするりと抜けるランプレーが魅力でラティマも油断できない。
昨年代表の10番で多くの試合を経験したダミアン・マッケンジーが今季も10番の位置に入るのか、若手有望株のジョッシュ・ジェイコブが割って入るかが注目される。
シーズン序盤を日本でプレーするWTB/FBのショーン・スティーヴンソンの不在の影響は気になるが、層の厚さで十分カバーできそうだ。
人材豊富なCTBのポジションは、アントン・レイナート=ブラウン、クイン・トゥパエアのキャップホルダーをはじめ、能力の高い4選手でポジションを争う。WTB/FBのエモニ・ナラワ、エテネ・ナナイ=セトゥロの2人は決定力抜群。今季も他チームにとって脅威のBK陣になる。
●注目選手 : SOジョッシュ・ジェイコブ
ここ数年メキメキと実力を付けているジェイコブは、昨年はオールブラックスXVに選ばれた。10番だけでなく15番もこなす。NPC(NZ州代表選手権)レベルでは、文句なしの活躍ぶりをしているが、ワンランク上のスーパーラグビーレベルでも実力を発揮できるか。
昨季クルセイダーズ戦に10番で出場した時は、持ち味のランプレーでディフェンスを切り裂くなどインパクトあるプレーを見せた。攻撃のセンスは抜群。ディフェンス面でも成長すれば、さらに上を目指せるだろう。
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◆ハリケーンズ/今季も充実のFW。鍵はケガ人続出の10番のポジション
昨季のハリケーンズはレギュラーシーズンを1位で通過したものの、準決勝でレギュラーシーズンに2度勝利したチーフスにリベンジされた(19-30)。その悔しさがあるだけに今季にかける思いは強い。
主力オールブラックスのCTBジョーディー・バレットがサバティカル(アイルランドでプレー)、TJ・ペレナラ(BR東京)、その他でもWTB/FBジョッシュ・モービー(仏・モンペリエ)、WTBサレシ・ラヤシ(仏・ヴァンヌ)などの実力のある選手数名がチームを去り戦力ダウンの印象を与える。
しかしメンバーを見ると、もともとの層の厚さと補強で今季も充実したメンバーと言えるだろう。
FW陣は、HOアサホ・アウムア、PRはタイレル・ロマックス、パシリオ・トシ、FW第3列は、ピーター・ラカイをはじめ代表クラスの名前がたくさん挙がる。
特にFW第3列は、ラカイの他にデヴァン・フランダース、ブレイデン・イオセ、デュプレッシー・キリフィ、ブラット・シールズと言った能力の高い選手がずらりと並ぶ。昨季は、サバティカルでアーディー・サヴェア(今季モアナ・パシフィカに移籍)不在でも十分やっていける事を証明した。
BK陣は、大きなケガを乗り越えてパワーが増して復帰のSHキャム・ロイガードを中心に今年もエキサイティングな陣容と言える。チームを去ったSHペレナラの補強としてモアナ・パシフィカからエレ・エナリを獲得した。ただ10番のポジションは、ブレット・キャメロンが膝のケガで長期離脱。大きな痛手だ。
SOエイダン・モーガンがチームを去り、SO/FBルーベン・ラブを含め、開幕前に10番候補の選手に怪我が相次いだ。不安材料だ。
2季振りにチームに復帰のライリー・ホヘパ(昨季クルセイダーズで6試合出場)、スコッド外からカラム・ハーキンが加入し、SO/FBハリー・ゴッドフリーを入れた3人で10番を争う。
序盤戦を欠場するラブの復帰までにチームが持ちこたえることができれば今季も上位は固いだろう。
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【注目選手】: CTBライリー・ヒギンズ
将来性抜群ながらもハリケーンズのCTBの層の厚さもあり、あまり出場機会に恵まれていない。
華麗なランニングスキルでディフェンスラインを突破、スキルフルで周りの選手を活かす能力にも長けている。昨年のNPCでウエリントンの優勝に大いに貢献した。今季はジョーディが不在とあり。出番が増えそうだ。
同ポジションのビリー・プロクター、ピーター・ウマガ・ジェンセン、バイリン・サリヴァンと言った実力者と対等に渡り合える力を充分に持っている。昨年はオールブラックスXVに選ばれた。今季の活躍次第ではその上が見えてくるかもしれない。
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