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【Just TALK】「こんな場面、誰でも緊張する。思い切ってやれ、と」。佐藤健次[埼玉ワイルドナイツ]
結果的に28-28と引き分けた試合。痺れる展開の中でデビューを果たした。左は先発HOの坂手淳史主将。©︎JRLO
2025.02.10
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【Just TALK】「こんな場面、誰でも緊張する。思い切ってやれ、と」。佐藤健次[埼玉ワイルドナイツ]

向 風見也

 昨春に早大4年にしてラグビー日本代表となった佐藤健次が、2月9日、国内リーグワン1部で初陣を飾った。

 身長177センチ、体重105キロで、ポジションは最前列中央のフッカー。埼玉パナソニックワイルドナイツの一員として、前年度王者の東芝ブレイブルーパス東京との第7節でリザーブに名を連ねた。卒業前の大学4年生が公式戦に出られる、アーリーエントリーの制度を利用した。

 会場の埼玉・熊谷ラグビー場のピッチに飛び出したのは、後半40分。28-28と同点だった。

 代わりに退く坂手淳史主将に、こう言われたという。

「こんな場面、誰でも緊張する。思い切ってやれ」

 勝ち越しに向けたラインアウトでボールを投入した。事前にロックのリアム・ミッチェルにサインを確認してもらっていた。試合はそのままドローで終えた。

「緊張」という言葉を重ねた。

「あの緊張感の試合に出られたのはいい経験。もっと頑張っていきたいです。東芝にも日本代表の方が多かったので、いろいろな人に『おめでとう』と言ってもらえました」

 桐蔭学園高時代に全国高校大会2連覇を達成。最終学年時は主将だった。

 早大では、ポジションを以前のナンバーエイトからフッカーにした。

 4年目は主将として大学選手権で準優勝した。帝京大に敗れるも、シーズンを通じてハンドリングスキル、フィジカリティ、スクラムワークで光った。昨春の日本代表活動参加で得たものは大きい。

 リーグワン元年の2021年度まで2シーズン連続日本一という強豪のワイルドナイツへ、どんな思いで加入したか。今後の展望は。ブレイブルーパス戦後に報道陣に囲まれ、ジョークを交えながら話した。

——大一番でのメンバー入り。内々では(2月)4日の火曜に伝えられたようですが。

「いろんな人が声をかけてくれました。(プレー面で)『これ、大丈夫?』とか。優しい人たちに助けられた。 

(ワイルドナイツは)僕が入るまでは『ちょっと冷たいのかな』と思っていたんですけど、皆さん温かく、優しく、いいチームでした!」

——かなり早いデビューでした。

「すぐに出たいですとは言っていましたけど、こうなるとは思っていなかった。びっくりしたところはあります。ただ、いい準備はできていた」

「卒業は大丈夫なはずです」。(撮影/向 風見也)


——チームへの合流は約2週間前とのこと。東京・秩父宮ラグビー場で帝京大に15-33と敗れた大学選手権の決勝は1月13日。その後の休みは長くはなかったはずです。

「負けたのに休めないな、休んでいる暇はないな、もっとやることがあるな…と。もともと早く合流しようと思っていたんですけど、負けたことで次へのステップへの位置が固まりました。僕、休んだら腐っちゃうので」

——そして、熊谷市内のトレーニング場で汗を流しています。スタートに際し、ワイルドナイツの仕組みを覚える必要があった。

「まず、1週間目で長田智希さん、福井翔大さんが一緒に映像を見てくれて、いちから(サインプレーや試合のプランなどを)教えてくれました。(覚えるのは)大変でしたけど、大変とは言っていられなかったので、頑張ります」

——ワイルドナイツには前年度までは、日本代表としてワールドカップに出た坂手主将、堀江翔太選手という2人の名フッカーがいました。坂手選手は今季もフィールドに立っています。あらためて、ワイルドナイツ入団を決めた理由は。

「自分が一番、成長できると思った。また、自分のやりたいラグビーに一番合っていると感じたのがワイルドナイツでした。坂手さんがいたことも自分の中では大きくて。堀江さん(翔太=昨季限りで引退しアンバサダーに就任)もコーチ(のような役目)で残るとも聞いていた。素晴らしい2人のフッカーから学べることは大きいと思いました」

——いま、2人から何を学んでいますか。

「坂手さんからは毎回、毎回(の練習で)スローイングのことで教えていただきました。先週は試合(への準備)があったにもかかわらずです。自分が成長できているひとつの要因です。

 ラインアウト(スローイング)のフォーム、坂手さんに言われて少し変えました。

 堀江さんも週2~3回くらい来ていて、会うたびに新しい気づきが多いです。『ラインアウトのスローは、8割がメンタルだから!』って。それは確かになぁ…と」

——ロッカーナンバーは「47」。以前は堀江さんの番号でした。

「自分から希望したわけではなく、気づいたらそうなっていました。堀江さんの背負っていた偉大な番号。プレッシャーはありますが深く考えず、僕らしくワイルドナイツに貢献したいです」

——ワイルドナイツの青いジャージィ、いかがですか。

「桐蔭の時は、青でした。外から見た感じはあまりわからないですけど…似合っていないんだろうなと思います!」

——これからはプロ選手です。

「どれだけ自分を律せられるか。自由な時間が増え、大学生の頃まで(周りに)決められていたものをこれからは自分でやらなくてはいけないことがあり…というなか、調子に乗らず、地に足をつけてやっていきたいです」

——目標は。

「常に成長し続けること。1年目だからと言い訳する必要はない。まずはワイルドナイツで欠かせない、信頼のおける選手になる。優勝へのひとつのピースになりたいです」

——日本代表への定着も期待されます。

「日本代表もありますけど、まずはワイルドナイツにしっかり集中。優勝するために欠かせない選手になっていかないといけない。その結果、2027年(ワールドカップオーストラリア大会)に出られたらいいなと」

 ちなみにこの日は、都内の早大グラウンドで大学の「4年生追い出し試合」があった。

 佐藤は「(ブレイブルーパス戦の)メンバーじゃなかったら追い出し試合に行こうかと思っていました。早稲田の子たちには会えていないんで、どこかで会いたいです」。大学の卒業見込みについては、「(4年目の残りが)4単位とかだったんで、たぶん、大丈夫です」と笑った。


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