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ナナイロプリズム福岡、北九州の地で歓喜。地域密着の国際女子セブンズ大会で初優勝
久留米(福岡)を本拠地に地域に根ざした活動を続けるナナイロプリズム福岡。悲願の初優勝。(撮影/松本かおり)

ナナイロプリズム福岡、北九州の地で歓喜。地域密着の国際女子セブンズ大会で初優勝

田村一博

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 多くの声援を受け、前後半とも2トライずつを奪った。
 粘り強く、そして激しく守って強豪を後半の2トライだけに抑えた。

 ナナイロプリズム福岡(以下、ナナイロ)が北洋建設Presents Nanairo CUP 北九州『Kyushu Women’s Sevens 2025』を制して初めて同大会で優勝した。
 2月8日から始まった大会は同9日に順位決定戦がおこなわれ、ファイナルはナナイロが24-14のスコアで制す。ながとブルーエンジェルス(以下、ながと)に快勝した。

 今年が4回目の同大会は、第2回大会から小倉駅から近いミクニワールドスタジアムが戦いの舞台となっている。
 昨年から国際大会となり、主催は日本ラグビー協会になった。共催は北九州市と一般社団法人Nanairo labで、福岡の総合建設会社、株式会社北洋建設(地域みらいグループ)が協賛する地域に根ざした大会は年々大きくなっている。

ファイナルで2トライ。ナナイロのスピードスター、迫田夢乃。(撮影/松本かおり)


 オーストラリアからの2チーム、シンガポールの1チームを含む計10チームが参加した今大会を見たファンからは、「年々レベルが高くなっている」との声が聞こえてきた。
 現役のサクラセブンズや同代表経験者も多く出場していた。

 ファイナルはキックオフ直後から互いによく動いた。ながとは、ボールを手に攻め続けた。しかし、ナナイロの防御は固く、2分過ぎに攻撃に転じた。小笹知美がビッグゲインを見せて相手反則(イエローカード)を誘い、ペナルティトライで7点を先行した。

 数的優位に立ったナナイロは攻撃の手を緩めなかった。前半終了間際にはしつこく攻め続け、最後は迫田夢乃がインゴールへ入る。
 その迫田は12-0とリードして入った後半2分に強気の外勝負でトライを奪い、スコアを17点差とした。

 試合は17-0で迎えた後半4分に決まった。
 ナナイロは相手に圧力をかけ続けた。ながとの手からこぼれたボールを受けた中村知春がゴールポスト下に入って24-0とした。
 そして相手の反撃を2トライに抑えて24-14で歓喜の瞬間を迎えた。

 今大会でキャプテンを務めた黒田佑美は、戦いを見守ったファンに向けて「嬉しい気持ちでいっぱいです。応援ありがとうございました。これから始まる2025年のセブンズシーズンで勝つために、チームに戻って修正するところは修正し、太陽生命ウィメンズシリーズへ進んでいきます」と嬉しい気持ちと今後へ向けての決意を口にした。

 先制点を呼ぶ快走を見せた小笹は元サクラセブンズの33歳。年齢を重ねて、より元気を増している。
 自然体で周囲を引っ張り、自らはつらつと動く存在。若い選手も多い中で信頼感厚いプレーが印象的だ。

後半4分、ナナイロの中村知春は相手がこぼしたボールを奪い、トライラインへ一直線。(撮影/松本かおり)


 同選手は「これまで勝ててない相手に、自分たちができることをやろうと言って試合に臨みました。それを試合の入りからしっかりできたことがよかった。メンバーは去年と大きく変わっていませんが、一人ひとりが何をすべきか理解が深まった結果だと思います」と勝利を分析した。

 サクラセブンズのキャップ70を誇る中村も、大一番で存在感を示した。
 トライだけでなく、巧みなスペース感覚で仲間を動かし、自らハードワークし続けた。アスリートの輝きを放ち続けた。

「ながとさんは、いいライバル。勝利のマインドを持つ相手に勝ち切れたのはチームとして自信になったと思います。7人だけでなく、全員で勝つプロセスを経て結果を残せたことは大きい」と勝利の持つ意味を語った。
 昨夏のパリ五輪後、15人制の国内シーンを戦い、この大会でのびのびとプレーし、頂点に立った。「いまがラグビーを一番楽しめている気もします」と相好を崩した。

 2トライの迫田夢乃は、「外勝負でいけと言われていて、その通りやって走り切れたのが良かった」と自分のパフォーマンスを振り返った。
 ただ、この試合の優勝だけでは満足しない。太陽生命シリーズでの優勝、サクラセブンズでの活躍を目標に上昇していく決意を口にした。

 チームの根幹を固め、力を伸ばす桑水流裕策ヘッドコーチは、「やっと勝てました」と実感のこもった言葉で喜びの気持ちを話し始めた。
「勝った事実は、絶対に選手たちの自信になると思います。太陽生命シリーズで優勝するには、ながとに勝たなければいけない。それを体験できました」

ナナイロの吉野舞祐が激しくぶつかる。(撮影/松本かおり)


 一人ひとり自分の強みで勝負しよう、と伝えて選手たちを送り出した。
「自分のトイメンに勝つ。その意識でプレーし続けてくれました。ディフェンスでもつながりを切らさずやり切ってくれました」

 ながとの村杉徐司ハイパフォーマンスディレクターは、「この負けを今シーズンにどう生かすか、という考えもありますが、やはり勝ちから学ばないといけない。昨シーズン、(太陽生命シリーズの熊谷大会で)日体大に負け、国体で負けて(決勝で福岡に敗退)、今回も負けました。負けグセをつけてはいけない」と準優勝を総括した。

 怪我人もいた。セブンズの本番シーズンを睨んだ選手起用もあった。そういう側面はあったものの、常勝軍団は、やはり勝つことでその強さをより確かなものにしないといけない。
 大会前、選手たちには「ミスは恐れなくていい。あなたたちがなりたい自分と、僕たちがなってほしいあなたたちに対し、リスクがあっても挑戦していこう」と伝えた。
 その行程を今回は踏めなかった。
 太陽生命シリーズの開幕までに、自分たちの強さを再度揺るぎないものにするための準備を重ねていく。

海外チームの参加もあり、熱戦と楽しい時間が続いた。(撮影/松本かおり)

【最終順位】
①ナナイロプリズム福岡
②ながとブルーエンジェルス  
③女子シニアアカデミー
④PIECES(自衛隊PTS+BRAVE LOUVE)
⑤追手門学院大学 女子ラグビー部 VENUS
⑥Bond University Rugby Club (オーストラリア)
⑦神戸ファストジャイロ
⑧Briars Rugby Club(オーストラリア)
⑨B.A.C. (シンガポール)
⑩琉球アイランドガールズRFC


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