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クライストチャーチ近郊の田舎町、盛り上がる。クルセイダーズ×ブルーズ、プレシーズンマッチ
昨季は9位に沈んだクルセイダーズ。巻き返しを誓う。(撮影/松尾智規)

クライストチャーチ近郊の田舎町、盛り上がる。クルセイダーズ×ブルーズ、プレシーズンマッチ

松尾智規

 2025年度のスーパーラグビー・パシフィックの開幕(2月14日)が間近に迫ってきた。
 ニュージーランド(以下、NZ)国内では、夏のスポーツ、クリケット、そして元日本代表DF、酒井宏樹がキャプテンのオークランドFCが引き続き好調なサッカーが依然として盛り上がっている。
 しかし、ラグビーの話題もテレビのスポーツニュースやトークバックラジオなどで徐々に取り上げるようになってきた。

 まもなく始まるシーズンに向けて1月31日(金)、2月1日にNZの各チームがプレシーズンマッチに突入した。昨季は大不振でプレーオフを逃したクルセイダーズが2024年の王者ブルーズを迎えて1月31日に試合をおこなった。

 クライストチャーチから西へ車で40分ほどの場所にある、人口1180人の小さな町カーウィー(Kirwee)のカーウィー・ラグビークラブが試合会場だった。
 町の人口の約3倍となる3000枚のチケットは前売りで即完売。今季のクルセイダーズの会員になっている人は無料で招待されている事から観客は3000人を超えていただろう。
 金曜日の午後3時半のキックオフにもかかわらず、スター選手を見ようとたくさんの人がピッチをぐるりと囲んだ。

 20分×4本でおこなわれた試合は、両チームとも司令塔のポジションに目がいく。
 ブルーズは昨季大きく飛躍し、バックアップから初の代表キャップを得たSO/CTBハリー・プラマーが先発で背番号10を付けてゲームキャプテンとして出場した。そのプラマーは、12番AJ・ラム、13番コーリー・エヴァンズ、14番コール・ホーブス、15番ザーン・サリヴァンと言った若手有望株のBK陣を上手く引っ張っていたのが印象的だった。

昨季王者のブルーズは今季も、いいパフォーマンスを出して戦いそう。(撮影/松尾智規)


 対するクルセイダーズ。前半は21歳のタハ・ケマラが10番で先発したが、ブルーズの圧に戸惑っていた印象だった。
 後半からは、今季新加入のジェームズ・オコナーが10番の位置に入った。華麗なラン、パスだけでなく、ブレイクダウンで身体を張る姿が何度か見られるなど意気込みの高さを感じられた。34歳と年齢は重ねてもセンスの良さは相変わらずで、印象的なパフォーマンスをしたと言っていい。

 試合は、前半はブルーズが優勢。後半に入りクルセイダーズが14-14と追い付くも、FWの力の差が出て終盤にブルーズが3トライを奪い35-19で勝利した。
 SO/FBボーデン・バレット、WTBケイレブ・クラーク、WTBマーク・テレアなどのオールブラックスの主力選手が出てないものの、ミスが少なくコンビネーションも良かった印象が強い。まだプレシーズン初戦も、すぐにシーズンに入っても良いくらいの状態に見える、充実した内容だった。今季も昨季同様に調子が良さそうだ。

 対するクルセイダーズもHOコーデイー・テイラー、PRタマティ・ウィリアムズ、FBウィル・ジョーダンなどのオールブラックスの主力選手が出ていなかったが、ゲームキャプテンを務めたFLイーサン・ブラカッダー、FL/NO8カレン・グレース、CTBダラス・マクロード、HOジョージ・ベルなどのキャップホルダーをはじめ昨年のレギュラークラスの顔ぶれも多く出場してメンバーは豪華だった。
 プレシーズンマッチ初戦でもミスが少なかったブルーズとは対照的に、クルセイダーズは特に序盤にミスが多かった印象で、チャンスでもなかなかトライに繋がらなかった。
 途中勢いが出た時があったが、ラインアウトでもミスが多発するなど、一試合を通じてブルーズのFWにプレッシャーを受けていたことが気になる。

 今週末のプレシーズンマッチでは、各チームともオールブラックスがでてくると予想される。
 今季復活を目指すクルセイダーズのプレシーズンマッチ2戦目(2月6日)の登録メンバーには、PRタマティ・ウイリアムズ、PRフレッチャー・ニューウェル、CTBデイヴィット・ハヴィリ、WTBセブ・リースFBウィル・ジョーダンと言った現オールブラックスの名前がある。

素朴なスコアボード。ラグビー王国の風景。(撮影/松尾智規)

◆試合後の選手との触れ合いは笑顔がいっぱい

 プレシーズンマッチ恒例と言える光景は、試合後に選手たちとの触れ合いがピッチの上でおこなわれることだ。ちびっこが一目散にお気に入りの選手に走っていく姿は微笑ましい。
 試合に出場しなかったオールブラックスの選手たちもファンと触れ合う中、今季クルセイダーズに加入したオコナーの周りにもたくさんの人だかりができていた。ひとりひとりに丁寧にサインを書くだけでなく、笑顔で会話を楽しむ姿が印象的だった。

 そのオコナーは、昨季チームを去ったSOリッチー・モウンガの穴(10番)をなかなか埋められない状況を改善する存在と、大きな期待がかかっている。それゆえ子どもたちだけでなく、たくさんの大人たちからも声をかけられていた。

ローカルクラブでのプレシーズンマッチは選手たちと距離が近いのが魅力。この日、ジェームズ・オコナーは大人気。(撮影/松尾智規)


 とても雰囲気の良い試合後の触れ合いの中で、ひときわ子どもたちを惹きつけていたのは、ブルーズのPRアンガス・タアヴァオだった。しゃもじに付けたマイクを握りしめ、誰かとずっとおしゃべりをしている姿があった。
 最後はクルセイダーズのPRジョージ・バウアーを参加させて2人で漫才のようなことをしていた。その姿に子どもたちは大喜びで、2人の周りにはたくさん人だかりができた。
 ブルーズのジャージを着ていても、クルセイダーズファンの子どもたちを引き寄せるタアヴァオのキャラクターは今季も健在のようだ。

 あちらこちらでサインや写真を撮る姿が見られ、たくさんの笑顔が広がった。
 地元の子供たちからは、「この小さな町でこんなに沢山の人が集まったのは初めて見た」と興奮気味に答えている姿があった。気持ちが高ぶっているのは子どもたちだけでなく大人たちも同じように見えた。

 ラグビーシーズンが近づいてきてラグビー王国の皆も嬉しそうだ。

陽気なアンガス・タアヴァオ(右)がジョージ・バウアーに模擬インタビュー。(撮影/松尾智規)





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