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【Just TALK】「もう、私は日本人」。ポーシャ・ウッドマン[三重パールズ]
父と叔父は元オールブラックス。自身は、ネットボールの選手として活躍していた。(撮影/向 風見也)

【Just TALK】「もう、私は日本人」。ポーシャ・ウッドマン[三重パールズ]

向 風見也

 日本の女子ラグビー界に、世界トップクラスのアスリートがいる。

 ポーシャ・ウッドマン。身長170センチ、体重75キロの33歳だ。

 国際統括団体のワールドラグビーが選ぶ年間最優秀選手賞を、15人制(2017年)と7人制(2015年)の両方で受賞した唯一の女子選手である。

 母国のニュージーランドでは15人制代表のブラックファーンズとして、2017、2021年に2度のワールドカップで優勝とトライ王に輝いている。

 7人制代表のブラックファーンズ・セブンズでは、2013、2018年のワールドカップセブンズで頂点に立ち、2020年、2024年にはオリンピックの金メダルを掴んだ。

 代表引退を経て、昨夏、三重パールズへ加わった。ウイングやセンターとして突破力を披露するうえ、人柄でも周りを魅了する。

 チームメイトで15人制日本代表の北野和子は、こう証言する。

「最初に、彼女の謙虚さにびっくりしたんです。自己紹介で『自分はミスもするし、わからないこともあるから皆に迷惑かけてしまうかもしれない。しっかり教えて』と。メダリスト手でもそういうことを思うんだ…と感じました。頑張って日本語を覚えて、練習でもよく声かけをしてくれます。チームに勢いを与えてくれる存在です」

 同じく齊藤聖奈はこうだ。

「最初にポーシャが(拠点の)四日市に来た時は『うわぁ、ポーシャ・ウッドマンや』って身構えていたんですけど、ポーシャがそういうキャラじゃないというか、『私、本当に凄くないから、教えて』と。天然なキャラで笑かしてくれることもある。ひとりのプレーヤーとして、すぐにチームとコネクションできています。要所、要所で大事な声もかけてくれる、エース的な存在です」

15人制女子ニュージーランド代表では24キャップで34トライを挙げた。三重パールズでは1月19日のYOKOHAMA TKMとの全国女子選手権準決勝にCTBで出場した。©︎JRFU


 本人が取材に応じたのは1月19日。三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場で、15人制の全国女子選手権の準決勝に出た直後のことだ。試合では自ら活躍し、横浜TKMを34-24で制していた。

——勝利、おめでとうございます。

「TKMが強いのはわかっていましたが、自分たちがやってきたことをやれば勝てるという自信もありました。ボールを持っていれば、できる、と。ただ、たくさん課題が出ました。決勝(後述)までに修正したいです。ファイナルは厳しい試合になると思いますが、今回のゲームから学ぶ。私たちはやればできる」

——ウッドマンさんにとって、パールズはどんなチームですか。

「私の新しい家族です。英語が喋れずに静かにしている子たちも含め、サポーティブでいてくれます」

——あらためて、日本でプレーすると決めた理由を教えてください。

「オリンピック東京大会の前に日本でキャンプをしたことがあります。またセブンズ(7人制)の国際大会でも北九州を訪れました。その時、日本の人々、文化がすごく気に入って、大好きになりました。ニュージーランドの家族をここに連れてきたかった。この(パールズ入りの)機会があったら、もう断る理由はありません」

——日本文化について。

「日本とニュージーランドの文化は似た部分があります。リスペクトするところ、人を認め合うところがそうなのです。日本にいることはとても心地いいです」

 チームミーティングが始まる直前に報道陣の前に現れ、笑顔で、身振り手振りを交えて話すレジェンドについて、齊藤はさらに興味深いエピソードを紹介する。

「『もう、私は日本人だ!』なんて言って、5本指ソックスを履いちゃって」

 足の指をそれぞれのさやに納める形の靴下を、ウッドマンは愛用している。

「ハイ! 快適。ひとつひとつの指がコントロールできる。私は、日本人です!」

 決勝は2月2日に東京・秩父宮ラグビー場である。昨季の決勝で24-40と敗れた東京山九フェニックスが相手だ。





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