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【Just TALK】「すべて食べたい、行きたい、買いたい」。ショーン・スティーブンソン[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ]
リーグワンデビューとなったブラックラムズ戦でのプレー。2023年8月5日のオーストラリア戦でニュージーランド代表のキャップを獲得。その試合でトライも挙げた。©︎JRLO
2025.01.23
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【Just TALK】「すべて食べたい、行きたい、買いたい」。ショーン・スティーブンソン[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ]

向 風見也

 クボタスピアーズ船橋・東京ベイにあって、ニュージーランド代表1キャップのショーン・スティーブンソンが鮮やかな印象を残した。

 1月14日に加入を発表して15日に本格的に合流し、同18日、東京・スピアーズえどりくフィールドで国内リーグワンデビューを果たした。

 ラグビーで不可欠な、周りとの連携を深める準備期間こそ短かった。それでも当日になると、持ち場のフルバックで活躍した。

 途中出場から約6分後の後半17分、敵陣10メートル線付近左中間で防御を引き寄せながらのパス、サポート、ランを重ねた。味方のトライを演出した。

 続く25分頃にも、敵陣10メートル線あたりの右中間でオフロードパスを繰り出した。27分のペナルティゴール成功の呼び水とした。

 その後もディフェンス、キックでもインパクトを示し、対するリコーブラックラムズ東京を26-18で撃破。第5節にしてチーム3勝目を挙げた。

 フラン・ルディケヘッドコーチの弁。

「彼は、(合流)初日の段階でプレーコールをすべて覚えていた。水、木、金でしっかりと(コンビネーションを)合わせ、きょうも大事な場面でヘルプしてくれていました」

 殊勲のスティーブンソン本人も、試合後に取材対応。この国での初陣を振り返った。

——日本のラグビーはどうですか。

「かなりクイックです。ただ、速さは自分の強みでもあり、私は日本へ十分にフィットできると思います。新しいコーチのもとで戦うのも、楽しみにしています」

——短時間の準備でゲームに出て、出色の働きを披露しました。

「長らくプロラグビー選手をしている。短い準備期間でもどうマインドセットを整えるかが、自分のなかでわかっています。また同じことを繰り返し、パフォーマンスを継続したいです」

 緊急補強が叶った。

 スピアーズでは開幕前に、ウェールズ代表92キャップを誇るフルバックのリアム・ウィリアムズが家族のサポートのため退団した。

 昨年12月に開幕した目下進行中のシーズンに際し、クラブは代役のフルバックをリサーチ。2025年度以降に向けた補強リストを見返す流れで、スティーブンソンに白羽の矢を立てた。

 前川泰慶ゼネラルマネージャーの談。

「本人に日本へ来たい意欲が強く、うちの目指しているところに合いそうだと感じました。ルールが変わってエスコート(キックチェイスを阻害する動き)がしづらくなったので、ハイボールの蹴り合いになるのは目に見えています。そして、うちのでかいフォワードを後ろに下げようと思ったら(相手が)誰だってキックを使う。そんななか、彼はサイズがあってハイボールを捕れる。それにランニングもあり、エリアを獲るキックもいい。リアムの退団から(スティーブンソンへアプローチするまでは)早かったです」

 スティーブンソンは身長190センチ、体重100キロの28歳で、母国ニュージーランドのチーフスの一員としてスーパーラグビーで活躍。24年は、代表のセカンドチームにあたるオールブラックスXVに名を連ねた。

 ニュージーランド協会およびチーフスとは、2025年まで契約を結んでいる。そのため今回の来日は、短期的なサバティカルという形で実現させた。

1996年11月14日生まれの28歳。190センチ、92キロ。マオリ・オールブラックスの経験もある。(撮影/向 風見也)


 いまおこなわれているリーグワンのシーズンでプレーできるのは、現状では今回の第5節から3月1日の第10節まで(鹿児島・白波スタジアムで東芝ブレイブルーパス東京)。

 その後はチーフスに戻るが、翌年度からは再びスピアーズに在籍する予定だ。

 前川氏は続ける。

「本人はニュージーランド代表(選ばれるには自国のクラブへの在籍が必須)のツアーに選ばれたらそこに行くつもりでしたが、去年は選ばれていませんでした。そんな中、僕らが(24年度入団への)交渉をしたら、『3月1日までであれば』という話になりました。『シーズン途中で抜けられるのは…』という話(今季加入への消極論)もありましたが、うちでちょうど他のフルバックに怪我人も出ていたし、『来季に入ってもらえるのが決まっているのなら、そのためにも』と、このタイミングで来てもらいました」

 チーム合流が開幕に間に合わなかったのは、ビザの取得に時間がかかったためでもある。とはいえ年末、スティーブンソンは観光ビザで短期的に訪問。一時的に練習へ混ざった。前川氏はこうも話す。

「明るく、皆となじむのが早かったです。うちに、彼がノースハーバーでプレーしていた時に一緒だったブリン・ホールがいたことも大きかったかもしれません」

 当の本人も、自身の去就などについて述べる。

——あらためて、来日の理由を教えてください。

「18歳から約10年間、ニュージーランド協会のもとでプレーしています。新たにエキサイティングなチャレンジがしたいと思っていたところ、スピアーズから話がありました。ニュージーランドから離れることに悲しさはありますが、いいチャンスをもらえたことに感謝しています。日本のファンの前でプレーすることも幸せです。

 いろいろな方と電話、SNSでやりとりをしてきましたが、日本についてはいい話しか聞いていません。(触れたい文化は)すべてです! すべてのものを食べたいし、すべてのところに行きたいし、すべてのものを買いたいです!」

——今後の予定について教えてください。

「正直、わかっていません。まず、向こう5週間はいます」

——来季以降は。

「25、26年度はチーム(スピアーズ)と契約しています。スピアーズは色々なことをしてくれた。私もチームのために尽くしたいです」

 この午後スティーブンソンと一緒のジャージィを着た面々も、好感触を得た。

 ナンバーエイトのファウルア・マキシ主将は「ワールドクラスの選手と一緒にプレーでき、嬉しいです」と、昨年日本代表デビューを果たした右プロップの為房慶次朗は「練習中からキックが飛び、アグレッシブなランもすごかった。もっと、見ていきたいです」とそれぞれ語った。

 2月1日には神奈川・相模原ギオンスタジアムで、三菱重工相模原ダイナボアーズとの第6節に臨む。





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