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走る宅建士、八文字雅和。ルリーロ福岡と歩む充実、目指す勝利
1993年7月14日生まれ、31歳。高鍋ラグビースクール、高鍋西中→高鍋→流経大→コカ・コーラレッドスパークス→宗像サニックスブルース。2022年度からルリーロ福岡。(撮影/松本かおり)
2025.01.21
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走る宅建士、八文字雅和。ルリーロ福岡と歩む充実、目指す勝利

田村一博

 さまざまなバックグラウンドと夢を持った選手たちが集まっている。
 そして、まだ歩き始めたばかり。
 そんなチームの中で頼りになる。

 八文字(やつもんじ)雅和は31歳になった。
 今季からリーグワン(ディビジョン3)に参入したルリーロ福岡で、開幕からの全4戦にすべて先発。どの試合でもキックオフからフルタイムの時までピッチに立っている。

 開幕戦から、背負った番号は順に、14、11、13、13。試合中にポジション変更があっても、ハードワークを続けることに変わりはない。
 トライは初戦のヤクルトレビンズ戸田戦で挙げた一つだけも、攻守に貢献度は高い。

 1月19日、東京・AGFフィールドで戦ったクリタウォーターガッシュ昭島戦に26-64と敗れてチームは4連敗となった。
 ベテランと言っていい年齢になったスリークォーターバックは、「いろんなところから集まった選手がいるチームです。まだ成熟していないところもあり、うまくいかないことも多い。(D3の)各チームと一通り対戦する期間は、負けている中で、いい経験もできていると思います」と話す。

豊田将万ヘッドコーチは、レッドスパークス時代はともに戦った存在だけに、気持ちが分かる。「現役時代は、本当にいい選手でした。いま、こういう関係でプレーしているのは不思議な感覚です。いま、スタッフも少ない中で歯痒い思いもされていると思います。コミュニケーションをとっていますし、これからも増やしていきたいですね」。(撮影/松本かおり)


 そう言いながらも、「自分たちは、まだ弱い。それを自覚しながらも、前半からもっとタフに戦っていかないといけないと伝えました」と厳しさも打ち出す。
 勝負の世界で長く生きてきた者として責任を果たす。

 コカ・コーラや宗像サニックスで、いろんなことを経験してきた財産がある。それを若い選手たちに伝えていくのも自分の使命のひとつと理解する。
 試合の中でチームをリードするのはもちろん、普段から周囲に影響を与える。

 例えば、練習への入り方も意識しなければいけない。
 大敗したウォーターガッシュ戦は、立ち上がりから失点を重ね、前半に5-36と大きく離された。後半は21-28。何から何まで歯が立たないわけではないのだ。

「一人ひとりが意識しないといけないことです。(ウォーターガッシュ戦は)前半はうまくいきませんでしたが、後半は体が動いて戦えた。最初から、を練習から実践していかないといけない。仕事を終えて(午後)7時から動く時、(簡単ではないが)最初から(意識高く)やらないと」

 宮崎・高鍋高校出身。流通経済大学を経て、コカ・コーラレッドスパークスで2016年度から2020年度までプレーした。
 廃部となったことを機に、翌年は宗像サニックスブルースに所属。しかし、同チームも歴史に幕を下ろしてしまう。
 発足したルリーロ福岡でプレーする選択をした。

 宗像の地を離れる際、他の選手たちがリーグワンのチームを選ぶ中でよちよち歩きの集団を選んだ。
 痛めていた箇所の手術に踏み切ったことや縁もある中で、最優先したのは「大学卒業後もそうだったのですが、九州のチームでやりたい思いが強くて」だった。
 結果、夢を追う人たちと一緒に走る決断をした。

 現在は西日本産業株式会社(不動産)で働きながらラグビーを続けている。
 宅地建物取引士の資格も取得し、不動産売買の場においてお客さんをサポートする。

 うきは市(活動拠点)に暮らし、久留米のオフィスへ通勤する。
 午前9時の始業時から働き、19時の練習開始時間に間に合うように退社時間を17時としてもらっていることに感謝する。

 仕事とラグビーの両方に100パーセントで取り組むことは簡単ではない。しかし、これから上昇していくチームの一員であり、新しい分野に挑戦している立場にいることは、難しさ以上にやり甲斐を感じる。

元日本代表、宗像サニックスのカーン・ヘスケス(FL)らも所属している。サポートするのはSO松尾将太郎(前・浦安D-Rocks)。(撮影/松本かおり)


 以前は芝のグラウンド、立派なクラブハウスがある中でプレーをしてきた。
 しかし現在は、久留米大学の好意により週1で人工芝のグラウンドを使えるものの、高校の土の校庭で練習を積み、快適なクラブハウスがあるわけでもない。「最初は戸惑いもありましたが、いまは、それが当たり前になっています」と言う。

「うちのメンバーには、そこについてどうこう言う者はいなくて、いまあるものを受け入れています。これから先、徐々に良くなっていくとも思っています」
 選手は結果を残すことに全力を尽くす。スタッフは、地域との連携を深め、同志を増やす。

 これまでも、そうやってきたから3年目で、リーグワンの舞台で戦えている。
 これからもそれを続けていくことが、周囲の環境を高めることにつながる。近道はないと分かっている。

 まだ道の途中も、ゼロからスタートして、ここまで這い上がってこられたことは自信になる。
 他から「厳しいよ」、「無理でしょ」と言われる中で階段を昇ることができたのは、「一人ひとりの努力もあるだろうし、できない、無理、と言われた方が燃える人が多いからだと思います」と愉快そうに言う。

「もう、いい年齢です」
 八文字は、「引退するまでにチームをD2に昇格させたいし、その後も長く継続していけるものにしたいですね」と言う。
 走る宅建士は、「以前はラグビーばかりやっていた」時代を懐かしみながら、職場に仲間がいて、グラウンドに行けば個性的な仲間たちがいる現在のチャレンジを気に入っている。




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