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国内のラグビーシーンで2016年以降ずっと4強以上の東京サントリーサンゴリアスだが、2024年度のシーズンでは開幕から4戦連続で白星なし。今季初勝利を挙げたのは、1月19日の第5節。三重交通G スポーツの杜 鈴鹿での三重ホンダヒート戦だ。
加盟するリーグワン1部で昇格2年目の相手に、2枚のイエローカードを出すも27-19で戦い終えた。苦しみながら、全体のうち4分の3ほどの時間でリードを保っていた。
小野晃征新ヘッドコーチは言う。
「1点差でも勝ち切ることへ準備して、選手たちが最後、我慢強く結果を残してくれた。引き分けが2回続いて(第3、4節はドロー)、あと1点を取る、止めるというこだわり(を意識した)。ここまで『次にもうひとつアクションをすることで、大きく変わる』というシーンもいっぱいあったと思うので、そこへも悔いなく準備したうえでパフォーマンスを…と(試合前に)話していました」
立役者のひとりはチェスリン・コルビ。31歳だ。
身長172センチ、体重80キロと小柄も、南アフリカ代表として2023年までにワールドカップ2連覇と実績を残した。サンゴリアスでは入団2シーズン目にあたる。
この日はウイングとして先発した。
4点差を追う前半18分には、自らのフィニッシュで8-7と勝ち越した。敵陣ゴール前右のラインアウトモールから展開された球を左隅で受け、カバー役のタックルを食らいつつもトライゾーンへ飛び込んだ。
その後も渋く光った。防御に囲まれるなかで背後のスペースにキックを放ったり、持ち場と逆側の区画へ回ってチャンスを作ったり。
着替えを済ませると、フィールドの脇の取材エリアで即席のインタビューに応じた。
——おめでとうございます。きょうの勝因は。
「きれいなラグビーではなかったと思いますが、ネバーギブアップの精神で最後までやり抜いたことで勝てました」
——ご自身のトライシーン、振り返ってください。
「エッジ(グラウンドの端側)でトライが獲れることは、私がチームでウイングをやっている理由になります。フォワードをはじめとした内側の選手のおかげでそのチャンスが生まれている。常に、内側にいる選手たちに感謝しています」
—— 足技については。
「できればボールを持って走りたいですが、裏にスペースがあるのであれば全体的に前に出るためにもどんどんキックをしていかないといけない。フォワードのためにも、前に出続けるのが大事です」
——連敗中の心境は。
「毎週、勝てることが理想です。そのために自分のできることをやっていかないといけない。最終的にはチームが勝つか負けるかが一番大事。自分のパフォーマンスを問うより、自分がチームの勝利にどう貢献できるか。謙虚な気持ちで、ずっとそう考えていました」
2019年のワールドカップ日本大会時は、コルビの人柄をにじませるエピソードが広く伝わった。
スタッフが試合後のロッカールームを片付けようとしたら、コルビが自分も手伝いたいからごみ袋を渡してくれと申し出たようなのだ。告げられた側が恐縮するのに対し、「いいから。俺が、やりたいんだ」と清掃を始めたという。
時を経て、鈴鹿の地でこう述べた。
——「チームの勝利に貢献」。具体的にはどんなことを指しますか。
「オンフィールドでも、オフフィールドでも、貢献できるところを常に探しています。それはコミュニケーションの時も、自分のプレーの時もある。最終的には、チームが勝つことが重要。どのポジションでも、どの立場でも、チームのために100パーセントを尽くしていく」