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プレーできる幸せを感じて。川地光節[ヤクルトレビンズ戸田]は現在D3のトライ数首位
2024年12月22日のリーグワン初戦で3トライを挙げた。(撮影/松本かおり)
2025.01.12
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プレーできる幸せを感じて。川地光節[ヤクルトレビンズ戸田]は現在D3のトライ数首位

田村一博

 開幕からの2試合で5トライを奪い、川地光節(かわち・こうせつ)の名前はいま、リーグワン ディビジョン3のトライランキングの一番上に名前がある。

 今季からリーグに初参入ながら連勝スタートを切ったヤクルトレビンズ戸田の中で、チームを勝利に導く働きを見せている。 
 180センチ、109キロの体躯を使い、ゴール前で高い決定力を発揮する。

 12月22日に福岡・久留米でおこなわれた開幕戦のルリーロ福岡戦では、後半3分、7分、23分とインゴールに入った。いずれもラインアウトからモールを組んだ後のものだったが、ただボールを置いただけではなかった。

 2つ目のトライはFWの塊が崩れそうになった時、強引に前に出て取り切った。3つ目は相手の粘りを受けた後、タイミングよく単独で前に出てインゴール右隅に飛び込んだ。

 12月28日開催の第2戦(厚木)、クリタウォーターガッシュ昭島戦では途中出場だった。
 前半19分、負傷した1番の石井清に代わってピッチに入ると、後半12分と19分にトライスコアラーとなった。

 19分のトライは、モール最後尾でボールをコントロールし、最後にインゴールに押さえる役目だったが、12分のトライは、味方のボールキャリー→オフロードパスを忠実にサポートし、力強く前進。ディフェンダ―を引きずって5点を挙げた。

 福岡・筑紫高校出身。ラグビーは10歳の時に片江ヤングラガーズで始めた。
 父・光さんは1980年代に日本代表キャップ10を得た人だ。

 ルリーロ福岡戦を終えた後、試合を振り返って「3トライは嬉しいですが、チーム、味方の全員が前に出て体を張ってくれたので(自分が)スコアにつなげられた」と話した。
 穏やかな語り口。チームマンだ。

 アウェー戦ながら、地元・福岡で戦ったその開幕戦。「すごく緊張した」という。
「家族や地元の友人たちが見てくれる中で、自分ができるパフォーマンスを最大限出したいと思っていましたが、前半はてんやわんやしてしまった。それでも初戦に勝てたことは大きかったです」

 今年4月には32歳になるフッカーは、平坦な道は歩んでこなかった。法大卒業後、コカ・コーラレッドスパークスに所属した。
 しかし同チームは2020年度シーズンへの参加を最後に廃部となった。

1993年4月8日生まれの31歳。法大時代はLOでもプレーしていた。(撮影/松本かおり)


「怪我もしていたし、不完全燃焼でした」と、ラグビーを続けたい思いを胸に秘めていた川地は新天地を求めた。
 そんな時、高校時代のコーチとの縁でつながったヤクルトで楕円球を追い続けられる環境に身を置くことになる。社員選手として、ふたたび走り始めた。

 仕事とラグビーの両方に全力で取り組むレビンズ。川地は以前の自分を振り返り、「ラグビーも仕事」と思ってプレーしていたかもしれないという。
 しかし新天地では、仕事に全力を尽くした後に楕円球を追う仲間たちを見た。ラグビーへの深い愛情を感じ、自分の中にもあらためて燃え上がるものが生まれた。

 レッドスパークス時代は多くのプレータイムには恵まれなかったけれど、レビンズでは少しずつ出場機会を増やして今季を迎えた。
 その中での開幕2戦での5トライは、ポジション争いのある中でいいアピールとなった。1月12日の中国電力レッドレグリオンズ戦にも2番のジャージーを着て臨む予定だ。

 ルリーロ福岡戦について「アウェーという感じではなくて、むしろホームの感じがありました」と言ったのは、地元開催が理由だけではない。
 対戦相手にはSH三股久典主将を筆頭に、かつてレッドスパークスでチームメートだった選手たちが何人もいた。

 レッドスパークス時代の先輩で、いまもレビンズでともにプレーしているプロップの徳重元気は開幕戦には出られなかった。
 川地はルリーロ戦前、その徳重から「体を張っていけよ」と言われた。リーグワンでの初戦。故郷で、みんなが見つめる試合。そしてかつての仲間たちとの時間。それらに向かって全力でぶつかっていけ、と激励の言葉の意味を汲み取った。

 トップリーグも経験しているから、やっと這い上がった舞台で勝利を重ねることが簡単でないことは知っている。
「下から上がってきたチームです。チャレンジャ―として、やれること、やってきたこと出し切ることが大事。それがなければ勝てないと思っています」

 一度目の前が真っ暗になった経験があるから、プレーできる幸せを噛み締めながら、仲間のために体をぶつけ続ける。




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