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落胆していた。
コベルコ神戸スティーラーズのマイケル・リトルは、1月5日、ジャパンラグビーリーグワンの第3節に先発フル出場した。
前年度5位のチームの13番をつけてラインブレイク、タックルで気を吐くも、ディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京に26-32と惜敗。会場の東京・味の素スタジアムで残念がった。
——最後まで力強い突破を繰り返していました。試合の感想は。
「筆舌に尽くしがたいと言いますか、表現するのが難しいと言いますか…。神戸のラグビーがしっかりできていなかった。試合終了間際 の10 分ぐらいになって、ようやくボールを動かし始めた。何とも言いづらいです」
——確かに終始リードを許していました。
「バックラインにたくさんのタレントがいます。松永貫汰、山下楽平、李承信(それぞれウイング、フルバックで出場)にもっと早くボールを渡せていたら、よりチャンスを切り開けたのかもしれません」
——思うように攻められなかったことには、ブレイブルーパスの防御のしぶとさも関係していますか。
「少しは、あるとは思います。ただ、どちらかというと(問題は)自信にある。もっと自信を持ってボールを動かせたら、もう少し結果が変わる。今回は1週間を通し、『東芝はここをこうすれば…』といった予習もしてきましたが、学んだ知識を活かせなかったことも(課題)。
ただオンフィールド、オフフィールドを通し、進んでいる方向は間違っていない。自信を持って、スティーラーズはいいチームだと言えます」
スティーラーズでは昨季、かつてオーストラリア代表を率いたデイブ・レニーがヘッドコーチに就任。関係者によれば、レニーは毎朝のミーティングを慣例化してスタッフを早起きにさせたという。フィールド上でも、ボールを持たない選手の勤勉さに変化を加えたか。
2022年入部のリトルはこうだ。
——レニーさん。どんな人ですか。
「正直、たまに、怖いです。ビビり散らかしています! けれども、すごくいい人です。選手とその家族ひとりひとりに寄り添う対応をしてくれるんです。何か間違いを犯した時にはしっかりと指摘される。それを、選手はリスペクトを持って聞く」
通訳担当者が関西弁を用いたためか、「極端に驚いている」のくだけた言い回しで「ビビり散らかしている」。リトルはさらに続ける。
「ビビり散らかしている、なんて言いましたが、デイブ・レニー、アタックコーチのマイク・ブレア、ディフェンスコーチのウェスリー・クラークらスティーラーズのコーチ陣には——ジョークを言うことはあっても——リスペクトの気持ちでいっぱいです」
身長180センチ、体重98キロの31歳。イタリアに生まれたニュージーランド人で、フィジーにもルーツを持つ。
父のウォルター・リトル氏は元ニュージーランド代表で、日本の三洋電機(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)でプレー経験がある。2001年にはパシフィック・バーバリアンズの一員として、この日の会場でウェールズ代表に36-16で勝利している。
その頃、日本で暮らしていたリトルは言う。
「かなり前のことなので、覚えていません。…私も、この会場で勝てたらよかったのですが。ブレイブルーパスとは今季中に再戦があるので、次こそはと思っています」
息子がプロラグビーマンとして来日したのは2017年.三菱重工相模原ダイナボアーズに入団し、2018年にはスーパーラグビーに日本から参戦のサンウルブズにも加わった。
一時帰国の期間があったためナショナルチームとは縁が遠かったものの、いまは状況が変わった。
国際統括団体のワールドラグビーが代表規定に関するレギュレーションに手を加え、ルーツを持たない国での代表資格取得の条件が「5年以上の連続居住」から「5年以上の協会登録」となった。
そのため、5年以上に渡って日本の組織に在籍するリトルはまもなく代表資格を勝ち得られそうだ。今季のリーグワンでも、日本出身者と同じ「カテゴリA」の区分で登録される。本人は述べた。
「年をとり始めているので、『(代表首脳陣に)見てもらえるのかな?』という気持ちは、正直、あります。
…ただ、この問いは別な場所でも聞かれていて、いつも同じように答えています。
まず、自分自身の居場所を確保しないといけない。神戸のセンターのポジションの地位を確立する。ポジション争いは激しく、油断ならない。まずはひとつひとつの試合で頑張る。その流れで日本代表から声がかかるなら、期待に応えたいです」