親元で高校3年間を過ごすより、間違いなく濃い時間となった。
平田馳空(ちから)の高校ラグビーが12月30日に終わった。
高知中央高校のキャプテン、SHを務めた18歳は東京の出身。南国・土佐でラグビーに打ち込んだ日々を振り返り、「高知に来て本当に良かった。なにひとつ後悔はない」と涙ながらに話した。
チームは12月28日におこなわれた1回戦で若狭東に32-7と勝利するも、同30日の2回戦で常翔学園に14-81と大敗した。
「不甲斐ないキャプテンについてきてくれたみんなに感謝します」と言うけれど、今大会での勝利は同校にとって、2011年度大会以来、13年ぶりのものだった。
キャプテンもチームメートも、胸を張っていい足跡を刻んだ。
世田谷区ラグビースクール、立教新座中でプレーしていた平田主将が遠く離れた地へ向かったのは、中学時に指導を受けた恩師の存在があった。
その人が高知中央でコーチに就いた。
高校進学を考えた時に相談すると「鍛えてやるぞ」の言葉をもらった。
結果的に同コーチは1年時にチームを離れることになったけれど、決断してよかったと言える3年間を過ごせた。
「家では気づきませんでしたが、親にやってもらっていたことがたくさんあった。それらを自分でやるようになり、先輩、後輩と一緒に生活して、いろんなことを学びました」
そんな人間力の成長が、晴れ舞台で力を発揮できる下地にあった。
今大会の1回戦、若狭東に勝った試合でチームは5トライを挙げた。
最初のトライはラインアウトから。モールを組んだところからすぐにボールを動かし、PR竹内桜太がインゴールに入った。
FW陣が増量を果たし、パワーアップした。その力強さを生かしながら、スマートさもあった。
平田主将は「判断力とパスが強み」。自分たちのスタイルをうまく引き出すプレーの選択だった。
その試合、平田主将が左ライン際を抜け出すシーンがあった。ラック脇に防御がいないことを見て、的確に走った。
視野の広さもあった。しかし本人は、「今年はFWがフィジカルの強さで勝つ場面が多かったので、前に出てくれて、ああいう状況ができることが多かった。それで、今回も走れました」
完敗した常翔学園戦でも2トライをFWで奪った。平田主将は「自分たちのスタイルを出せて(2トライを)取れたのはよかった」と振り返った。
試合前、仲間たちに「準備してきたことを出せるか、出せないかでなく、やるか、やらないか。試合が終わった時、100パーセントを出し切ってそのまま立てなくなるぐらいやろう」と声をかけてグラウンドに出た。
「ディフェンスでの上がり、FWのモールディフェンスなど、やれることはやったと思います」
13大会ぶりの勝利も含む今大会のパフォーマンスを通して、後輩たちに伝えられたものがある。「若狭東戦では、自分たちが全国でも勝つイメージを(現実のものとして)見せられたと思います」と話した。
「去年は流経大柏、今年は常翔学園と、全国レベルの強豪と戦い、感じたものもあると思います。花園での1勝にとどまらず、年越しをするチームになってほしいですね」
キャプテンとして、留学生もいるチームをまとめてきた経験はこの先の人生でも自分を支えてくれそうだ。英検準2級の語学力を使い、英語、日本語を交えて、日本人選手とトンガからの留学生たちのコミュニケーションがスムーズになる役を買って出た。
サインにトンガ語を使ったりもした。
留学生たちから学んだ。
「トンガと日本の距離を考えれば、東京と高知なんて近いもんです。留学生たちはみんな、ラグビーで生きていくんだ、と強い気持ちを持っているからストイックに頑張る。それに対して、自分たちも応えないといけないと思っていました」
集合時間よりかなりはやくグラウンドに出る姿を見ていた。ジムで追い込んでいることも。
「だから練習では彼らにどんどんぶつかって、はね返されて、そうやってみんな強くなっていったと思います」
卒業後は高知から離れるけれど、仲間たちとの付き合いは一生ものだ。
人生を考えた末、進学先は自分で決めた。国士舘大学の理工学部で電子系の勉強をして、将来は電気主任技術者の資格を取りたい。
「ラグビー部にも入り、勉強と両立させます」
実家は東京も、ラグビー部は全寮制のため、これからも仲間たちとの共同生活が続く。
「これから花園を(テレビ中継などで)見るたび、今回見た第1グラウンドの光景を思い出すでしょうね」と言うキャプテンは、寮生活でも、高知での良き記憶を思い出すことがあるだろう。