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創設3年目、地域に愛されるチームが見たかった光景。ルリーロ福岡が刻んだ2024年12月22日
後半37分、WTB八文字雅和がトライを奪う。(撮影/松本かおり)
2024.12.25
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創設3年目、地域に愛されるチームが見たかった光景。ルリーロ福岡が刻んだ2024年12月22日

田村一博

 この数字は一生忘れない。
 2418。
 12月22日、久留米総合スポーツセンター陸上競技場に集まった人の数だ。

 2022年4月の創設から3年目のルリーロ福岡。親会社などメインスポンサーを持たず、地域や賛同者(社)のサポートを受けて活動している特別なチームが、リーグワン参入初シーズンの開幕戦をホストスタジアムで戦った(ディビジョン3)。

うきは市を中心に、福岡県南部に拠点を置くチーム。熱心な声援が飛んだ。(撮影/松本かおり)


 対戦相手は、同じ新規参入チームのヤクルトレビンズ戸田。両者とも緊張があったか、前半はそれぞれミスも多かった。
 互いに1トライずつを奪う展開となり、ルリーロは7-10とリードを許した。

 レビンズは前半23分に、相手トライライン直前に攻め込み、ペナルティトライを奪った。さらに36分にはSOニック・イブミーのPGで3点を追加した。
 ルリーロの歴史にファーストトライを刻んだのはLOフィナウ・マカヴァハ。敵陣ゴール前で得たPKから速攻で出て、インゴールにボールを置いた。

 スタジアム内には、試合開始直後からルリーロコールが響いた。
 接戦の前半にルリーロには逆転勝利の期待がかかったが、後半3分、7分とモールからトライを許して相手に先手、先手とゲームを進められたのが痛かった。
 その後トライラインを越えたのは1度だけで、17-25と敗れた。

チームのリーグワン初トライを奪ったのはLOフィナウ・マカヴァハ。(撮影/松本かおり)


 選手3人の設立当時から考えれば、3年目でこの日を迎えられたこと自体が奇跡。初勝利こそ成らなかったが、試合後、ピッチから戻る選手たちは観客のスタンディングオベーションに包まれた。

 その光景を見ながらチームの島川大輝代表は、「地域の方々が、みなさん来てくださった。全員顔が分かる2400人。胸を張っていいと思います」と話した。

 忘れられない1日を振り返って、「朝から涙腺が緩みっぱなしでした」という。
 地域の多くの人たちが出演するパフォーマンスや、試合開始までのピッチ上の演出などのリハーサルに参加し、いろんな感情が湧き出た。いきなり本番に臨んでいたなら、「たぶん泣きっぱなしでした」。

「創設当時、描くチームの未来図を語ると、本当に人(選手)は集まるのか、本当にお金は集まるのか、本当にリーグに入れるのか、『本当に? 本当に?』 と、100万回聞かれました」と思い出す。
「難しい課題や高いハードルを越えてきました。そんな日々を、チームと一緒に作ってきた人たちが、きょうの2418人だと思っています」

今季から加わったCTB重一生をチームメートがサポートする。(撮影/松本かおり)


 島川代表同様、豊田将万ヘッドコーチ、三股久典キャプテン(SH)も、待ち望んでいた試合を終えた感情を言葉に込めて吐露した。

 三股主将はこの日グラウンドに入った際、多くの観客がいるのに驚いた。試合前には仲間たちに、「地域の人たちに支えられてここまできたことを忘れずに戦おう」と声をかけた。

「試合中も、ルリーロコールや選手個人への応援の声が聞こえそれが力になった。きょうは100パーセントの準備をして臨んだ試合で勝てませんでしたが、次は勝利を届けたいですね」

 豊田HCは就任して2か月。それ以前から、日々練習を積み重ねてきた選手たちに敬意を表し、「みんなグラウンド上でベストを尽くし、いまやれる最大限のことをやってくれました」とした。

「ただ後手を踏んで、自分たちのペースで試合をすることができなかった」とパフォーマンスを振り返り、もっと状況判断力を高め、自分たちが優位性を持って戦えることを増やしていきたいと今後の展望を口にした。

 スタジアムの空気については、「たくさんの方が選手たちを後押ししてくださった。それに対し、頑張る姿を見せられたことは良かったと思います。応援は、次への一歩につながります。支えていただく人をもっと増やせるように、これからも前を向いていきたい」と話した。

写真左上から時計回りに。ジャッカル成功のPR廣野翔太と、雄叫びをあげるクラブキャプテンのNO8西村光太。島川大輝代表。途中出場のカーン・ヘスケス。三股久典主将(左)と豊田将万HC。(撮影/松本かおり)


 かしいヤングラガーズ、東福岡高校と、福岡育ちの同HC。早大では大学日本一チームの主将となり、卒業後はコカ・コーラレッドスパークスでプレーした。
 日本代表キャップ9を持ち、2018年度シーズンを最後に現役引退したあとは、九州産業大学女子ラグビー部のヘッドコーチを務めた。東福岡高校のコーチを務めた後、2か月前の10月2日に現職への就任が発表された。

 リーグワンの他のビッグクラブと違う、限られた条件の中で活動するチームで指揮を執る決断は、簡単ではなかっただろう。
 就任の経緯について豊田HCは、島川代表、後藤悠太GMとの縁がきっかけと話した。
「ふたりとも学生の時から知っています。チームを立ち上げた時から声をかけていただいていましたが、私が前へ踏み出せなかった」とし、それでも機を見ては声をかけてくれていたことに感謝する。

 ルリーロには、三股主将をはじめ、レッドスパークス時代にともにプレーした選手もいれば、当時、対戦相手として戦った者もいる。
「そんな選手たちが人生を懸けてプレーしている姿を見て、自分も踏み出そうと決めました。やるからには覚悟を持って取り組みたいし、チームを勝たせないといけない」
「勝てるチームを作れるようにやっていきたい」と、選手たちの強みを引き出して戦う姿勢を打ち出す。

 試合当日、キックオフ前、ハーフタイム、試合後と、島川代表に声をかける人たちがひっきりなしにいた。
 スタンドにはルリーロの応援グッズを持っているファンも多数。好天に恵まれた日曜正午のキックオフからの数時間には、多くの人たちが見たかった景色があった。

 第2戦、中国電力レッドレグリオンズも久留米総合スポーツセンター陸上競技場でおこなわれる。
 スタジアムに向かう人の列が長く、幅が大きくなっていく光景が見たい。

スタンディングオベーションに応える選手たち。(撮影/松本かおり)


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