プレーヤー、ファンも、地元で支える人々も、キックオフを指折り待った。
12月22日、ルリーロ福岡がリーグワン参入年初試合のキックオフを迎える。
3年前にうぶ声をあげたチームが、歴史的第一歩を久留米総合スポーツセンター陸上競技場(福岡)で踏み出す。
相手は、自分たちと同様に今季からリーグワン(ディビジョン3)に加わったヤクルトレビンズ戸田。当日の久留米は好天が予想されている。
12月9日に都内ホテルで催されたトップリーグのプレスカンファレンスには、クラブキャプテンを務める西村光太(FL/NO8)が参加していた。
2022年設立時から在籍しているオリジナルメンバー、3人のうちの一人。黒川ラフィ(WTB)、井上柊人(WTB)とともに、クラブ理念に賛同して歩き始めた日が懐かしい。
今年1月31日にリーグへの参入が正式に決まった。西村はその結果をパソコンの画面で確認し、知った。
「まさに入試の結果を見るような感じでした。設立当初からリーグワン、リーグワンと言い続けてきて、それが叶った」
「(開幕が)楽しみで仕方ない」と胸の内を語った。
西村は山口・高川学園から九州共立大へ進み、卒業後はコカ・コーラレッドスパークスに入団した。
しかし、2020年の春から在籍したレッドスパークスは2021年いっぱいで活動終了(2020-2021シーズンが最後)。「一度はラグビーを離れることを考えました」。
現在ルリーロには70名超の選手が所属する。その中には「僕以外にも、同じような経験をした人が30人はいると思います」という。
西村同様、レッドスパークスでプレーしていた者。リーグワン元年を最後に活動休止となった宗像サニックスブルースOB。所属チームで戦力外となった選手たちもいれば、このチームで初めてトップレベルへの道に踏み出す若者もいる。
そんな集団が平日の夜、各自の仕事を終えた後に高校(浮羽究真館)の校庭、土のグラウンドに集まり、決して十分とは言えない照明の中で練習を積んできた。
選手雇用でチームを支える地域の企業がたくさんある。果樹園が職場の者。病院で介護職に就く選手もいて、高校の教員も。ALT(外国語指導助手)として中高生と向き合っている外国人選手もいる。
西村自身は、チームの運営スタッフとして働いている。
地域企業とコミュニケーションを取ってスポンサー提案をしたり、選手と雇用先をつなぐ。
うきは市の中にある、うきはブランド推進課ラグビータウンプロジェクト推進係、『うきは市地域おこし隊』にも所属する。雇用促進プランナーは、地域もチームも選手も幸せにする仕事。やり甲斐を感じている。
そのポジションに就いて暮らしていると、支えてくれている人たちと触れ合う機会も多い。地域の人々の期待が直に伝わってくるという。
リーグワン参入が決まった際、嬉しかったけれど、正直、最初は実感がなかった。しかし、2月におこなったリーグワン参入祝賀会に集まったファン、スポンサー各社関係者の顔を見た時は感無量。涙が出そうだった。
西村は最近、自身のSNSに「不可能と言われた挑戦。諦めず信じて挑戦したから今がある。リーグワン盛り上げます」と思いを綴っている。
チーム創設から3年。当時、自分たちが描いていた夢を心の中で嘲笑している人たちもいたかもしれない。でも、思いを本気で口に出し続けていたら、多くの人たちが仲間になってくれた。
2022年9月18日のトップキュウシュウ、FFGブルーグルーパーズ戦がチーム初の公式戦。その日の記録シートには観客数140人とあった。
2024年12月22日のリーグワン初戦には、どれだけの人が来てくれるだろう。
勝てるだろうか。最初のトライは誰だ。
声援の大きさはどれくらいか。試合後、スタンドのファンの表情は。選手、スタッフはいろんな思いを頭に巡らせてキックオフの時を待つ。
そのすべてがルリーロ物語、リーグワンの章の1ページ目に記される。
それは、草創期の章、仲間が増えた章に続く第三章。登場人物が多く、一人ひとりにストーリーがあり、個性豊かな本は、まちがいなく面白い。