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ワールドカップで過去3度優勝したラグビーのニュージーランド代表が、新しいフェーズに突入するか否かで議論を生んでいる。
いまは自国にいるプレーヤーだけが選考対象だが、現在のヘッドコーチであるスコット・ロバートソンがその流れに一石を投じそうなのだ。
海外拠点の選手もセレクションの対象にできるよう、ニュージーランド協会に訴えるつもりのよう。11月下旬、その趣旨を海外メディアが報じた。
12月7日、この件で意見を聞かれたのはシャノン・フリゼル。所属する東芝ブレイブルーパス東京の本拠地にいた。
昨年までオールブラックスことニュージーランド代表として、33度のテストマッチ(代表戦)に出てきた30歳だ。
「そのことは噂で耳にした程度なので、それほど自分ごととしては捉えていません。確かに昨年のワールドカップフランス大会で優勝した南アフリカ代表の主力は、ほとんどが日本でプレーしている。そう考えたら、(レギュレーションの変更は)もしかしたらうまくいくのかもしれないですね。ただこれまで国内でプレーしている選手だけを選んできたオールブラックスも、別に失敗しているわけではない。強いチームであり続けている。だから、それならそれでもよいのではないかな」
身長195センチ、体重114キロの30歳。ブラインドサイドフランカーを主戦場とし、強烈な突破とタックルを繰り出す。
昨秋のワールドカップフランス大会を準優勝で終えると、その時にチームメイトだったリッチー・モウンガとともにブレイブルーパス入り。そのまま加盟するリーグワン1部へ挑み、クラブ史上14シーズンぶりの日本一に輝いた。
ニュージーランド協会の規定変更の是非について問われた日は、新しいシーズンの開幕前最後のトレーニングマッチに出場していた。
12月22日の初戦(神奈川・日産スタジアム)でぶつかる、昨季4位の横浜キヤノンイーグルスに28-24と勝利。フリゼルは本職と異なるロックで先発し、インパクトを示していた。
トッド・ブラックアダーヘッドコーチはこうだ。
「(フリゼルは)ロックでの出場もあるかな、といったところです。彼には(過去に在籍した)ハイランダーズ時代にロックでプレーした事実がある。きょうに関しては怪我人など諸々の事情のためロックで起用しました。ただ基本的には、チームでナンバーワンの6番(ブラインドサイドフランカー)として考えています」
当の本人も所感を述べる。来日2年目の目標も穏やかな口調で語った。
——ロックで奮闘しました。
「強いイーグルスに対し、身体を張らなきゃいけないミドルエリアで、タイトファイブのジャージィを着てプレーできたのはいい経験になりました。ロックは過去にもプレーしたことがあり、好きなポジションのひとつです。きょうは約60分戦えたので、100パーセントの準備ができたと言ってよいです。より完璧な状態で開幕を迎えられる」
——コンタクト。本当に素晴らしかったです。
「身体を当てるのが好きなので、それができたのはよかった」
——昨年までは代表活動が多かったフリゼル選手。今年は自国の規定に倣う形で、夏以降の代表戦には関わっていません。逆に、自チームのシーズン前の準備に長時間を費やしています。
「(長期のプレシーズンは)久しぶりのことです。身体作りから入り、開幕に向かっています。やっぱり、試合が一番楽しい。その一番楽しい試合に向けて完璧な準備ができたと自信を持って言えて、それが自分の身体でわかっているのはとてもよいことです」
——身体面の数値に変化はありますか。
「細かい数字はトレーナーに聞かないとわかりませんが、感覚としてはすごくいい状態なのは間違いない。フィットネス、心肺系はもちろん、ストレングスの部分でもかなりパワフルにプレーできています」
——来る新シーズン。リーグワン史上初の連覇が期待されています。
「プレシーズンの初めに、(チーム内で)話がありました。もちろん先は見過ぎないということは前提にありながらも、今季ひとつずつ積み重ねていった末に優勝できたら、リーグワン史上初のチームになれると。ただ、昨季は下馬評が低く、少し甘く見てもらえていた部分があったかもしれません。今シーズンはチャンピオンチームとして狙われる側になる。さらにタフになる。チーム全員でそのチャレンジを楽しんでいきたいです」
——盟友のモウンガ選手とはどんな話をしていますか。
「引き続き、攻撃をリードしてくれる点がリッチーの強みになるのでしょう。ただ、特に2人でどうするかについては話していません。今年は東芝というチームに慣れてきて、(11月上旬の)鹿児島合宿でもすごくいい時間を過ごせた。ここが、チームの強みになる。
普段は家族の兼ね合いで一緒に飲みに行けないような選手とも、合宿という場所ではコネクションが作れるんです。今回も何人かで小さなグループになって外食したし、ビールも飲んだ。チームのアクティビティもたくさんやりました」
——個人の目標は。
「グラウンド内では、もう1回優勝する。フィールド外では、もう少し日本の文化にさらに溶け込んでいきたいです。富士山に行ったことがないので、歩いてみたいです。6時間ぐらいで登れるらしいから…」
ここまで語ると、隣にいた山内遼通訳が「いまは雪が積もっていて難しい」と助言。そもそも、2024年の登山シーズンはすでに終了している。
フリゼルは笑う。
「ありがとう! 明日、行こうとしていたけど、雪が溶けたらにするよ」