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今季の主役もこの人か。
前年度に東芝ブレイブルーパス東京へ入ったリッチー・モウンガは、加入1季目となる昨季のリーグワン1部で優勝。MVPにも輝いた。
長らくオールブラックスことニュージーランド代表のスタンドオフとして披露してきたスキル、判断力を、初めて仲間入りした海外クラブでも見事に溶け合わせた。
同リーグ史上初の連覇がかかる新シーズンは12月21日に開幕。モウンガは、同22日に神奈川・日産スタジアムでおこなわれる初戦へ「フォーカスを当てている」と宣言した。当日は、昨季4位の横浜キヤノンイーグルスとぶつかる。
11月30日、東京都府中市内の本拠地でのプレシーズンマッチに先発した。同3位の東京サントリーサンゴリアスに挑んだ。
自身がフィールドに立った前半を14-21とし、最後は28-47と敗れた。しかし、「開幕を見据えての準備はできています」と述べた。
——オフ明け後初の実戦。どんな感触でしたか。
「楽しかったです。5~6か月ぶりに試合をして、自分がなぜラグビーをしているか、なぜラグビーが好きかを思い出すタイミングとなりました。
対するサンゴリアスさんがいいチームでした。また私たちも、前半のメンバーの多くは今回が1試合目。『1試合目っぽい』パフォーマンスもあったと思います。
ディフェンスはしっかりできていましたが、アタックのチャンスがもらえた時に相手からのプレッシャーと無関係にミスを犯すことがありました。それは直さなきゃいけない。
見えたスペースに対してアタックしたかった。ただ、無理にパスをしようとしたところでノックオン、反則をしてしまった。ボールキャリーして、タックルされ、少し身体が痛いような感覚も久々に思い出しました。
ただ、1試合目のパフォーマンスとしては不満というわけではありません。40分プレーでき、自分たちのチームに大きな怪我がなく終えられたのは嬉しいことです。一方、サンゴリアスさんにひとり、倒れた選手がいました(ゲーム中の故障により担架で運ばれた)。無事であることを祈るのみです。
…開幕を見据えての準備はできています。シーズンに向けて身体を慣らし、身体を当てられる状態を作ってゆく」
——今年のプレシーズンの期間は、昨年まで注力していた代表活動へ加わらずに所属チームに帯同。それは久しぶりのことだったと思います。
「状態がフレッシュです。オールブラックスに行っている時は、(おもに11月まである)代表活動が終わるとそのまま(当時在籍していたクルセイダーズの)プレシーズンに入るため、それほどしっかりした準備期間が取れませんでした。今回は(夏に)日本に戻ってきてからしっかりとしたプレシーズンを過ごせた。身体にとっては、すごくよかったです」
——これからどんなシーズンを過ごしたいですか。
「自分に課すべきは、優勝を目指してプレーすること。またリーグを通して圧倒的な力を示し続けたい。個人としては、自分の周りの若い——特に大卒で入ってきた——選手にどれだけ影響を与えられるかを考えたい。彼らのキャリアにとってポジティブな存在となりたいです」
——ライバルについても伺います。今季、対戦が楽しみな選手はいますか。
「来日前は、リーグワンがこんなに移籍の多い場所だとは知りませんでした。今季もコーチ、選手のクラブ間での動きが活発で、シーズンが楽しみです。
まず対戦したいのはチェスリン・コルビ(南アフリカ代表で東京サントリーサンゴリアスに入団2年目)。本当に素晴らしく、彼の出る試合を見るのは楽しみです。
チェスリンと同じ南アフリカ代表で言えば、三菱重工相模原ダイナボアーズに入ったカートリー・アレンゼ。彼のことも、テストマッチのプレーを見ていい選手だと思っています。相模原は府中とそれほど遠くないので、いずれ会いに行って話す機会を作りたいです。
また、浦安D-Rocksに入った南アフリカ代表ナンバーエイトのヤスパー・ヴィーセ。彼を見ていると、対戦するのが怖いと感じます!
リーグワンに世界王者(南アフリカ代表はワールドカップ2連覇中)の選手が入るのは素晴らしいことです。今年は、リーグワンにおいてもっともタレントの多いシーズンではないでしょうか。ファンの皆様と一緒に楽しめる、長いシーズンになると思っています」
——毎年チャンピオンチームが変わるリーグワンにあって、初めて連覇を達成するには。
「まだシーズンは始まってもいません。優勝云々という(具体的な)ことは先の話なので考えていません。また、連覇に関しても、去年は去年と捉えています。今年の僕らとは関係がない。今季から新しい選手やスタッフも入っています。いまは個人、チームとも、開幕節にフォーカスを当てています」
本人が話した通り、モウンガは今年の代表活動には参加していない。
ニュージーランドには、自国でプレーする選手しか代表チームに選ばれない決まりがあるのだ。
もっとも現在オールブラックスを率いるスコット・ロバートソンヘッドコーチは、海外拠点の選手も代表の選出対象にするようニュージーランド協会に働きかけるつもりかもしれない。11月下旬、その趣旨を海外メディアが報じた。
もしもレギュレーションに変化があれば、モウンガのキャリア選択にも影響が出そうだ。当事者はどう思うか。
「正直に言って、私のエネルギー、関心は、日本での自分のシーズンに向いています。もしも代表資格のルールが変わり、私がブレイブルーパスでプレーしながらオールブラックスに選ばれることが可能になるなら、それは素晴らしいことだと思います。しかし、そのことは自分の力の及ぶ範囲にはありません。いまの自分がフォーカスするのは、これからのブレイブルーパスでのシーズンです」