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カマイシ、コウベの7も、帝京の9も大きく超える20だ。
11月25日に始まっていた第64回全自衛隊ラグビー大会の決勝が12月4日、秩父宮ラグビー場で行われた。
Aブロックで優勝したのは船岡駐屯地。頂上決戦で習志野駐屯地と戦い、65-3の圧勝で20大会連続の優勝を手にした。
ワイルドボアーズの愛称で活動する同チームは、トップイーストリーグのCグループでも活動している(2024年度は8チーム中4位)。
この日は、『PARATROOPS』こと、習志野駐屯地の第1空挺団隊員が活動する同ラグビー部(関東社会人リーグ1部/今季は8チーム中3位)を圧倒。10トライを挙げた。
前半は習志野の果敢な攻守もあり、思うように戦えなかった船岡。しかし、各局面で少しずつ上回り、やがて流れを引き寄せた。
22-3で迎えた後半のキックオフ後は、攻め手の多さを見せて次々とトライラインを超えた。NO8小野賢蔵主将(3曹)は、優秀選手にも選出される活躍だった。
スピードあるバックローの小野主将は、この日、スクラムからのサイドアタックでスピードと強さを見せ、トライを奪った。
SO山田将孝のゲームメイク、FB伊藤圭哉(ともに3曹)のランニングも光り、日頃からリーグ戦で揉まれているチーム力を発揮した。
自身も20連覇の初優勝時から10大会以上をプレーヤーとして過ごした安藤貴樹監督(2等陸尉/男鹿工出身で元SO)は、「リーグ戦と違う緊張感があったが、後半は船岡のプレーを出せた」と選手たちを愛でた。
そして、「習志野さんは、ひたすら熱いタックルをしてくるチーム。きょうもそうでした」と対戦相手へのリスペクトの気持ちも示した。
チームの先頭に立った小野主将は京都・桂高校の出身。本人は花園への出場はならなかったが、2013年に同校が夢の舞台に立った時にチームを率いた杉本修尋監督の指導を受けた。
幼稚園の時から、洛西ラグビースクールで楕円球を追っている。
26歳のリーダーも、序盤は緊張感の中でプレーしたと話した。
「20連覇ということでOBの方々も応援に来られていました。(それもあって)少し硬かったのですが、後半は思い切ってプレーできました」
また、通常戦っているリーグとの違いについて、「トップイーストではチャレンジャーですが、こっちではチャンピオン。プライドもある。それが浮き足立つ原因にもなりました」。「次は21連覇を目指す」と語り、「最初から気持ちを高めて戦えるようにしたい」と誓った。
この日のパフォーマンスを振り返り、「攻撃は表と裏を使って深みのあるアタックをした」と話した主将は、「後半、キックを使って敵陣に入ってプレーしたのが良かった」。10トライの猛攻は、「よく走る」ことが原点となっている。その土台の上に、強いディフェンスもある。
スタンドには迷彩服姿の各自衛隊隊員の応援も目立ち、習志野自衛隊の応援は賑やかで、平日午後に実施されたファイナルの空気を盛り上げた。
表彰式での受賞者の動作がキビキビしていて気持ちいい。「10度の敬礼」も揃っている。感謝の気持ちを伝える声も大きい。
大会の開催回数からも伝わるように、ラグビー×自衛隊の関係性は長く続いている。ラグビーの競技性とスピリットが、任務に求められるものとマッチする。
自衛隊ラグビーから、トップレベルの舞台で活躍する道を歩んだ人たちもいる。
日本代表キャップ24を持つ往年の名LO、小笠原博さんは、その筆頭だ。かつてNECグリーンロケッツでプレーした東考三さん、現在静岡ブルーレヴズで指導にあたる田村義和スクラムコーチ、宗像サニックス、豊田自動織機シャトルズ愛知で活躍した福坪龍一郎さん、東京ガスのWTBだった三浦惇さんも、小笠原さんと同じ習志野自衛隊ラグビー部の出身だ。
2011年以降はワールドカップ開催のたびに国際防衛ラグビー大会(International Defence RUGBY Competition)も開催され、日本の自衛隊チームも選抜チーム(ディフェンスブロッサムズ)を作り、各国の軍人たちと戦っている。
大会最終日は、Aブロック決勝戦の前にBブロック決勝、国分・北熊本駐屯地×善通寺駐屯地もおこなわれた。見ていて感じるのは、点差に関係なく、どのチームも激しいタックルを最後の最後まで続けていることだ。
自衛隊ラグビーからは、選手たちの日常が伝わってくる。