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国内ラグビーシーンの最高峰、リーグワンの2023-24シーズンを制した東芝ブレイブルーパス東京に漂う空気を、「いい意味で部活みたい」と表現する言葉選びに引き込まれる。
スポーツライターの藤島大さんがパーソナリティを務めるラグビー情報番組「藤島大の楕円球にみる夢」が、12月2日(月)、夜6時からラジオNIKKEI第1で放送される。
今回のゲストは佐々木剛。昨季のリーグワン王者、ブレイブルーパスの躍進を支えた一人だ。
ポジションはフランカー。プレーオフ準決勝、決勝を含む14試合に出場した27歳が、チャンピオンチームの魅力、自身の歩んできた道を話す。
2023-24シーズンのプレーオフ準決勝、東京サントリーサンゴリアスとの試合で、背番号7が快足を披露したシーンを記憶している人もいるだろう。
後半1分過ぎ、ラインアウトからのサインプレーで抜け出したのはウイングのジョネ・ナイカブラ。加速する日本ラグビー有数のスピードスターに遅れることなくサポートラン。パスを受けて、トライラインまで走り切った。
その試合後、記者に囲まれた佐々木は、自身のスピードについて、「高校のグラウンドが砂だったので下半身が鍛えられました」と話した。
青森・八戸西高校の情景が頭に浮かぶ。働き者のバックローは東北の地で育った。
1997年4月17日生まれ。桔梗野小学校1年時、父の影響で八戸少年ラグビースクールに入った。
市川中から八戸西高へ。高校時代の恩師は、ラグビー部の指導にあたっていた釜澤研先生。佐々木にとっては大東文化大、ブレイブルーパスの先輩でもある釜澤晋氏(現在ブレイブルーパス事業部/営業部部長)の弟だ。
「ラグビースクールに入った時の校長は、釜澤先生のお父さんでしたので、釜澤家に育てられたようなものです」と笑う。
大東大時代は4年時にキャプテンを務めた。在学中にU20日本代表に選ばれ、ジュニア・ジャパンにも選出。『ワールドラグビー パシフィック・チャレンジ2020』に出場し、フィジー、サモア、トンガの準代表と戦った。
正代表にはまだ選ばれていないが、赤白のジャージーを着て海外で戦った経験があるだけに、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチの指導のもと、チームメートが先の日本代表活動に参加、奮闘した姿から刺激をもらった。「特に(松永)拓朗の活躍は、同じ社員選手なので嬉しかった」と話す。
身近な存在の飛躍に「自分も」と思う気持ちが湧いて当然も、ブレイブルーパスでさらに活躍することが求める場所へつながると分かっている。「開幕に向けて頑張っています」と高まる気持ちを伝える。
オールブラックスや日本代表、努力を惜しまぬ仲間に囲まれて過ごす日々は充実している。
そして、頂点へと続く道の中で極限の緊張感を味わい、それを突き破った自信は大きい。
シーズンクライマックスを迎える直前、世界的司令塔が口にした言葉が忘れられない。
「リッチー(モウンガ)が『チャンスは一度きりしかないもの。それをつかむ準備をしておこう。準決勝、決勝と考えず、一つひとつをファイナルのつもりで戦うんだ』と」
その言葉で良いマインドセットができた。サンゴリアス戦の快走も、準備が整っていたからこそのパフォーマンスだった。
リーグ王者となり達成感もあるけれど、チームの若手の成長を感じ、「自分も満足していちゃいけないな、という気持ちが湧き上がっています」と気を引き締める。
180センチ、101キロのサイズは、トップレベルのフォワードとしては小柄な方も、なぜ大男たちとやりあえるのか。世界的選手からの学び。向上心が伝わるトークがおもしろい。
練習後の仲間との会話は「このあと、どうする」から始まり、引退した先輩たちから宴席に誘われることもある。
「飲んだら(その次の日こそ)ちゃんとやれよ、と言われます」
ブレイブルーパスを部活みたいと言うのは、そんな空気が伝統として引き継がれているからだ。
先頭を走るチームの土台にある泥臭さが、会話の端々から伝わってくる。新しいシーズンのスタイルについて「攻撃力がより増すようなラグビー」と聞くと、開幕が待ち遠しくなる。
いろんなイメージが頭を駆け巡る45分は、あっという間に過ぎますよ。
▽ラジオ番組について
ラジオNIKKEI第1で12月2日夜6時から全国へ放送。radiko(ラジコ)のサービスを利用して、PCやスマートフォンなどで全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。
放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。U-NEXTでも配信予定。12月9日の同時刻には再放送がある。