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【Just TALK】「見られている。期待も。ちゃんとしなきゃ」。服部亮太[早大1年/SO]
シーズンの深まりとともに、仲間との絆が強くなっていることも感じている。(撮影/松本かおり)

【Just TALK】「見られている。期待も。ちゃんとしなきゃ」。服部亮太[早大1年/SO]

向 風見也

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 注目度は高まるばかりだ。早大ラグビー部1年の服部亮太が、加盟する関東大学対抗戦Aで存在感を示す。

 身長178センチ、体重80キロで司令塔のスタンドオフを担う。パスのモーションスピードとキックの飛距離に長ける。

 現役時代にその位置を務めた大田尾竜彦監督にも、「(他の)人にないものがある」と太鼓判を押される。

 11月3日には東京・秩父宮ラグビー場で、大学選手権4連覇中の帝京大と対峙。強い破裂音を伴うロングキックと穴場を切り裂く加速力で光り、48-17と快勝した。

 さらに23日には慶大との「早慶戦」で持ち味を示す。総じてエリアゲームで存在感を示したうえ、防御を引き寄せながらのパス、シャープな走りも披露した。

 前半26分には、「50・22」のキックを披露。チームが自陣から果敢に攻め上がるなか、球を受けるや相手のチャージに屈せずに蹴った。

「スペースが裏に見えていて、蹴るしかないと思って。まずは裏のスペースをしっかり見る。で、前、横を見る。(慶大のチャージは)速く、蹴りにくいところは、ありました」

 57-3。ここまで対抗戦全勝。12月1日の東京・国立競技場での明大戦へ愛好家のボルテージを高める。

 早慶戦後のミックスゾーンとファンクション後の会場入り口付近で、取材に応じた。

——スタンドには1万2000人超の観衆が集まりました。

「この大舞台を楽しむことを(目標に)掲げていました。ミスしても恐れずにやろうと思っていました」

——実際に観客席を見て。

「『人、多いな』とは思いましたが、個人的には帝京大戦の時と(場内の雰囲気は)さほど変わらないかなと感じました」

——後半も風下から鋭いキックを蹴っていました。

「風上だと飛び過ぎて、風下だと飛ばない部分があるなか、自分で(加減を)コントロールしていこうと決めていました」

——相手に仕掛けながら投げるパスについて。

「それは高校時代から教えられていて。相手に正対してパスするようにと練習してきたのが活きていると思います」

自ら仕掛けられるところも魅力で強み。(撮影/松本かおり)


 地元・福岡の帆柱ヤングラガーズで小学1年から競技を始め、2021年に佐賀工高入り。その頃から、早大の展開ラグビーが好きだった。

 高校には、慶大OBで元日本代表の野澤武史氏がスポットコーチとして訪れていた。服部は野澤に「早大、いけるんじゃない?」と背中を押されたという。早大のスポーツ推薦枠は決して多くはない。実力が見込まれたのが伝わる。

 野澤が出身校の慶大を勧めなかったことについて服部は、入学するために超えるべきハードルの高さを伝えられたと笑う。確かに慶大では、運動部向けに特化した推薦制度がない。周辺によると、AO入試も、年を追うごとにラグビーマンが受かりづらくなっているようだ。

 とにかく、服部は志望校の早大へ進んだ。春先は怪我の治療に時間を費やしながら、名門の空気を吸った。

 視線が細部に向いた。8月上旬、都内の拠点でこう話していた。

「(最初は)トレーナーさん、マネージャーさんの仕事量の多さにびっくりしました。いつもここ(クラブハウス)でパソコンを開いて、お金の計算だったり、対外試合のこと(調整)だったり…。練習のためのテーピング類も全部、揃えてくれている。ラグビーでは、ジュニア、シニアとも(グレードを問わず)スピードがある。リハビリしながらでも、そう感じました」

 新たな環境では身体作りにも注力した。もともと食が細かったのを改善し、トレーニングの効果を高めようとした。

 進歩の過程とあり、大田尾監督は「キックとランのバランス」に伸びしろがあるとする。ただ、本人の努力を認めてもいる。早慶戦のあとに述べた。

「きょうの一番の収穫は、彼が80分間プレーできたこと(9月22日の日体大戦以来となるフル出場)。途中で足がつったり、パフォーマンスが落ちたりして『代えようか』となるのではなく、最後までできたのは成長です」

 大田尾も佐賀工を経て早大入り。それと同じルートを辿った名手には他に、五郎丸歩がいる。

 学生時代から日本代表に選ばれたフルバックで、2015年にはワールドカップイングランド大会へ副将として臨んで南アフリカ代表などから歴史的3勝。2021年に引退するまで、ゴールキックの名手として広く知られた。

 この五郎丸がこの秋、出演したYouTubeの番組で服部を賞賛。国内にあって希少なロングキッカーとして、「長距離砲で日本代表を前進させてくれる選手が久々に来た」と将来に期待していた。

 この発言を、当の本人は早慶戦の当日に知ったという。

「今朝(23日)、先輩とかに(動画を)見せてもらって。高校、大学の先輩が言ってくれているのは嬉しく思います」

——注目度が高まっていることはどう捉えていますか。

「見られている。期待されている。その分、ちゃんとしなきゃいけないと改めて思います」

いまは伝統の「早明戦」を見据える。

「相手はここに賭けてくる。僕たちもしっかり準備して、対抗戦の残る1試合を戦う」

——「早明戦」のイメージは。

「会場は明大の空気というか。先輩は『お客さんは8割が明大のファン』と言っていて。完全アウェーというイメージしかないです」

——そんななか、どんなプレーをしたいですか。

「まず、エリアをしっかり取る。アタックでも、ディフェンスでも、きょうのようなラグビーをすれば負けることはないです。落ち着いて、いつも通りのプレーができればいいかなと思っています」

——早大の佐藤健次主将は、「明大はスーパースター集団みたいなイメージ。それに対して、スーパースター軍団ではない早大は自分たちを見失わないように。やるべきことだけにフォーカスする」と話しています。

「明大には高校日本代表、U20(20歳以下日本代表)の選手がたくさんいる。ただ早大には愚直に、ひたむきにやっていく人間がたくさんいる。練習が終わった後、ひとりひとりが足りないスキル(個人トレーニングを)ずーっと、やっています。(同期には)一般で入ってきた学生もたくさんいて、浪人生も3~4人はいます」

——となると、年上の同級生がいるのは初めての体験ですか。

「そうですね。何か、不思議な感じがします」

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