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SOにはニコラス・マクカラン。出場停止となっているワーナー・ディアンズに代わって、サナイラ・ワクァがLOで先発する。3番には竹内柊平が2試合ぶりに戻った。
WTB(11番)には足首を痛めていた長田智希が復帰。ウルグアイ戦ではSOで先発した松永拓朗が15番を背負う。
11月22日、同24日にアリアンツスタジアム(トゥイッケナム)でおこなわれるイングランド戦に出場予定の日本代表メンバーが発表された。
欧州ツアーの最終戦で、2024年のラストマッチ。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)体制初年度の『超速ラグビー』元年を勝利で締めくくることができるか注目される。
試合登録メンバーについての記者会見には、コンディション調整のためエディーに代わってニール・ハットリー コーチングコーディネーター(以下、CC)が出席。ウルグアイ戦に続いてゲームキャプテンを務める齋藤直人も取材に応じた。
ジョーンズHCの体調は深刻なものではなく「念のため(の休養)。(本人は)試合を楽しみにしているし、当日は参加する」との説明があった。
ハットリーCCは選出したメンバーについて、「すべてトレーニングベースで決めた」とし、「(現在の)ベストの23名」と話した。
ツアー最後の試合前にして、ロンドンで活動している選手たちの中で全体練習から外れているのはファカタヴァ アマトひとりだけ。ハットリーCCはスタッフの尽力にリスペクトと感謝の気持ちを示した。
ベンチメンバーをFW6人、BK2人の構成にしたのは、「相手の特性と(直近の試合でBKがうまくいっている)自分たちの現状のバランスをとっての判断」と言った。
SOニコラス・マクカランの起用には、ハードワークを重ねてきたことを評価。「とてもいいプレーヤーで、(過去に)10番、12番でプレーしており、ブレイブルーパスで(NZ代表のリッチー)モウンガから(SOのことも)多くを学んでいるはず。ラグビーをよく理解しているし、自信があり、ディフェンスがうまく、ボールを持ったパフォーマンスもいい。齋藤(直人/SH・主将)との連係、関係性も良好にとれていると思う」と話した。
ただ、今後の起用については分からないとした。
「あくまで今週末の試合のことだけを考えた結果」と続け、「マクカランを10番に起用することがイングランドに勝つチャンスを最大化すると判断した」と伝えた。
また現地記者からは、元イングランド代表選手が出版した本の中に、当時同代表を率いていたジョーンズHCの選手、スタッフへの辛辣な対応が書かれていることに触れる質問も多かった。
実際に一緒に働いている者としてのフィーリングを問われたハットリーCCは、「私は(今回も含めて)3度一緒に仕事をしているが、楽しい。毎日チャレンジしている側面もあるが、それは自分のベストを引き上げるためや、選手に提供するものをより良くするためのもの」と話した。
ゲームキャプテンを務める齋藤は、ウルグアイに勝利したチームの空気について「ポジティブ」と話し、「イングランドは今シーズンの最初に戦った相手。そのチームと、今年最後の試合を戦う。自分たちがどれだけ成長できたかわかる試合」と話した。
「自分たちが積み重ねてきたものはアタックです。相手のはやいラインスピードに対してどれだけ仕掛け続けられるか」
最後までアタックマインドで戦い切るつもりだ。
ウルグアイ戦の途中からハーフ団を組んだが、試合の入りからは初めてとなるマクカランとのペア。準備期間に、一緒に映像を見て、コミュニケーションを取ってきた。
今季、何人ものSOとプレーしてきて「それぞれ特徴がある」とする。マクカランの長所も引き出す。
大観衆の中でのプレーについては、「自分たちでモメンタムを生み出すことが大事だし、流れが(相手に)傾きかけたときに引き戻すこともやらないといけない」と話した。
出場すれば、2022年6月に秩父宮ラグビー場で戦ったウルグアイ戦以来のテストマッチ出場となるLO秋山大地は、「メンバーに入ることを目指してきたので、やってきたことを認められた」と笑顔を見せた。
メンバー入りできない理由についてジョーンズHCからは、「もっと激しく、もっとアグレッシブに」と指摘されてきた。その言葉を受け、トレーニングから自分の強みを出していくことに集中してきたことが実った。
「自分の強みは激しさであり、低いタックルだと思っていますが、チーム内にも激しい選手がいます。だから、ボールを持っていない時の動きでも、もっと頑張ろうと考えてきました」
超速ラグビーのコンセプトの中に身を置いて、以前は起こったことへのリアクションを高めることを考えていたが、いまは予測して半歩でも一歩でもはやく動き出すことに注力できるようになっている。
「日本代表のジャージーを着てプレーすることを大きな目標としてきたし、尊敬する仲間たちと8万人の前でプレーするメンバーの中に入れた嬉しさも大きいのですが、ノンメンバーの気持ちも分かっています。試合に出ることの責任を持って、(彼らに)恥ずかしくないプレーをします」
自分の出番が来るまで、世界的LOのマロ・イトジェがピッチに立ってくれていることを願う。
初キャップが視界に入ったHO李承爀は、23人に入ったと告げられた時は「びっくりして実感がなく、ふわふわした感じでした」。しかし、試合が近づくにつれて気持ちが入ってきたという。
同じポジションの原田衛の膝が万全ではないことは分かっていたから、「いつでもいける準備はしてきた」と話す。大観衆の中でプレーすることについては、「経験したことはありませんが、想像し、前半にその空気を感じながら気持ちを作っていく」とした。
この日の朝、弟で、日本代表での実績も豊富な承信(コンディション不良で今ツアーには不参加)から電話があった。「頑張って、と言われました」と笑顔になる。
「HOとして、セットプレーをしっかりさせたい」と覚悟を口にした。
◆奮闘する人々いろいろ。
メンバー発表の前日(11月21日)の日本代表は、午前中に疲労回復を目的としたエクササイズに取り組んだだけで、午後はトレーニングなし。取材機会もなかった。
そのため、代表活動以外の取材に切り替えて一日を過ごした。
午前中はイーリング トレイルファインダーズ(プレミアシップ・ウィメンズ・ラグビー)に所属して女子チームと契約、2シーズン目となる今季も元気にプレーを続けている玉井希絵さんと会い、たくさん話した。
玉井さんはサクラフィフティーンのLOとしてワールドカップにも出場。通算16キャップを持つ人だ。
2022年にニュージーランドで開催されたW杯を最後に代表から離れているが、いまもプレーを続けている。
所属していた三重パールズを退団し、海を渡った。パソナグループのグローバルアスリート社員であり、トレイルファインダーズのプロップで、同クラブのマーケティング担当者のひとり。カナダ人3人、南アフリカ人1人の計5人でルームシェアの生活をしている。
イングランドに来て感じるのは、男子と女子のラグビーの価値に違いを作っていないことだと話す。例えば、女子、男子のダブルヘッダーで試合がおこなわれる場合、告知のポスターに登場する男女選手の扱いは同格。チームのトレーディングカードは、1袋に7枚入っている。男女両選手のものが詰められている。
「将来は、こちらで学んだもの、特にクラブのマネジメントのことなどを日本の女子ラグビーの中で生かせたらいいですね」と話していた(いろんな話は後日掲載予定)。
午後は、先日、街のパブで偶然知り合ったラグビーフットボールユニオン(イングランドラグビー協会)のビル・スウィーニーCEOに話を訊いた。
同CEOは2019年に現職に就いた。それ以前は、2013年から英国オリンピック協会(BOA)のCEO。ビジネス界で築いた豊富な経験をスポーツの世界で生かしている。
両親の仕事の関係でインドのカルカッタ生まれ。その後、シンガポール経由で英国に戻り、ボーディングスクール(寄宿学校)に通いながらラグビーを始めた。
その後、両親の帰国とともに学校を変わる。そこはサッカーが盛んだったため、丸いボールのスポーツをプレーすることになったそうだ。
マンチェスターの大学で経済学とマーケティングを学びながらサッカーも続け、チェルシーFCでもプレー。イングランド大学選抜にも選ばれたそうだ。
しかし「自分の心はラグビーにある」と、ビジネスマンになってから各地のラグビークラブで楕円球を追う人生を再開。シェル、マース、ユニリーバで経営に関わる仕事をして、アディダスやプーマでも上級職に就く。日本にも暮らしたことがあるそうだ。
現在、プレミアシップラグビーは経営に苦しむクラブが相次いでいる。その再建にともに取り組んでいる途中。そのためにも、イングランド代表に強くなってほしいと願う。ラグビーを取り巻く空気が熱くなると、いろんなことが好転するし、立てた計画の遂行がスムーズにいくからだ。
そんな背景もあり、5連敗中のイングランド代表を率いるスティーヴ・ボースウィック ヘッドコーチとは毎週面談していると話していた(いろんな話は後日掲載予定)。
この日スウィーニーCEOは、日本代表率いるエディー・ジョーンズHCとも話す時間を持ち、若手の育成システムや世界の動向などについて話したそうだ。
CEOは、「日曜のテストマッチが楽しみですね」と、どこか余裕があった。
【日本代表 イングランド戦メンバー】
①岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス/関西学院大/29歳/180cm、105kg/7)
②原田 衛◯(東芝ブレイブルーパス東京/慶大/25歳/175cm、101kg/10)
③竹内柊平(浦安D-Rocks/九州共立大/26歳/183cm、115kg/12)
④サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ/ヘイスティングスボーイズ高(NZ)/29歳/202cm、120kg/9)
⑤エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ/FIJI・ラトゥ カダヴレヴスクール/28歳/196cm、122kg/5)
⑥下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/早大/25歳/188cm、105kg/13)
⑦姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ/帝京大/30歳/187cm、109kg/35)
⑧ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/27歳/187cm、112kg/14)
⑨齋藤直人◎(スタッド・トゥールーザン/早大/27歳/165cm、73kg/23)
⑩ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ/帝京大/28歳/188cm、93kg/6)
⑪ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京/摂南大/30歳/177cm、95kg/16)
⑫シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ/天理大/25歳/187cm、105kg/15)
⑬ディラン・ライリー◯(埼玉パナソニックワイルドナイツ/豪・ボンド大/27歳/187cm、102kg/27)
⑭長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/24歳/179cm、90kg/16)
⑮松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京/天理大/26歳/172cm、82kg/3)
⑯李承爀(三菱重工相模原ダイナボアーズ/帝京大/25歳/179cm、103kg/-)
⑰森川由起乙(東京サントリーサンゴリアス/帝京大/24歳/180cm、114kg/4)
⑱為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/23歳/180cm、108kg/9)
⑲秋山大地(トヨタヴェルブリッツ/帝京大/28歳/192cm、114kg/1)
⑳テビタ・タタフ(ユニオン・ボルドー・ベグル/東海大/28歳/183cm、124kg/19)
㉑ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ/ブリスベンボーイズカレッジ/27歳/195cm、120kg/8)
㉒藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/25歳/171cm、76kg/9)
㉓梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス/明大/29歳/181cm、95kg/6)
※◎は主将、◯は副将