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11月23日(現地イタリア時間)は、オールブラックスの欧州遠征の最終戦。チームにとって2024年度の最後の試合だ。同時にFLサム・ケイン、SHのTJ・ペレナラのオールブラックスのジャージを着てのプレーは見納めになる。
前週フランスとの大一番は、いろいろな意味で盛り上がった。試合前の国歌とハカは、ライトアップされた粋な演出で、まるで映画のワンシーンのようだった。
最後までもつれた試合は、オールブラックスが地域、ボール支配率で有利になりながらも勝利に持ち込めず、わずか1点差で負けた(29-30)。その結果、フランスには3連敗となった。
前半はオーブラックスが2つのトライを奪い、内容でも上回ったが、点差は7点(17-10)とスコアボード上で相手に充分なプレッシャーをかけるまでには至らなかった。
注目されていたキッキングゲームにおいては、フランスの精度が上回った。そして少ないチャンスをものにしたフランスが取るべきところでしっかり得点を重ねた。
オールブラックスは、レフリングにも戸惑い、特にTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の厳しい介入は、昨年のW杯決勝に続いて物議を醸した。ある意味アンラッキーと言えなくもない。
しかし、大事なところでミスをして何度かチャンスを逃し、極めつけはミスから一気にトライに持ち込まれたのが致命的となった。
ニュージーランド(以下、NZ)国内では、フランスに敗戦後から数日は、お決まりのようにスポーツ・トークバックラジオでは荒れ気味だった。2週間前にアイルランドに良い内容で勝ち、機嫌を良くしていたファンは、特にフランス戦の後半に納得がいっていないようだ。
◆2024年最後の試合は、強力な布陣。
現地時間11月23日(土)におこなわれるイタリア戦に挑むオールブラックスの試合の登録メンバーが11月21 日に発表された。
スコット・ロバートソン ヘッドコーチ(以下、HC)は、遠征前に「ジャパン戦とイタリア戦は、出場機会に恵まれていない若手選手を出場させる」とほのめかしていた。しかしセレクター陣と共に選んだ試合のメンバーは、前週のフランス戦から5人の先発メンバーの変更(主にケガ人がらみ)のみで思ったよりも少なかった。
FW陣から見ていくと、チーム内の規律違反でイングランド戦から謹慎処分となっていたPRイーサン・デ・グルートがタマティ・ウイリアムズの首の負傷の欠場もあり、ヨーロッパ遠征初出場で1番を付ける。2番コーディー・テイラー、3番タイレル・ロマックスの昨年までの不動のフロントローの復活となった。
FW第2列は、今季ケガに悩まされながらも出場すればいいパフォーマンスを見せてきたパトリック・トゥイプロトゥが好調のトゥポウ・ヴァアイを押しのけて5番を付けて先発に昇格。キャプテンのスコット・バレットとのLOコンビとなった。
アイルランド戦(11月8日)で頭部に8針を縫う大ケガをしたFLサム・ケインが最終戦で復帰して7番に入る。ケインの復帰によりウォレス・シティティが6番、アーディー・サヴェアが8番に戻り、今季最もバランスの良いFW第3列の布陣に戻る形となった。
BK陣に目を向けると、前週フランスの9番アントワンヌ・デュポンと対等に戦ったキャム・ロイガードが最終戦も9番のジャージーを勝ち取り、2試合連続で10番ボーデン・バレットとのハーフ団となった。
前週、膝のケガで途中退場したCTBジョーディー・バレットの欠場により、アントン・レイナート・ブラウンがベンチから昇格して12番を付けて、リーコ・イオアネ(13番)とCTBコンビを組む。
バックスリー(WTB/FB)は、WTBマーク・テレアが手のケガから復帰でセブ・リースと代わって14番に入り、ケイレブ・クラーク(11番)、FBウィル・ジョーダン(15番)の攻撃的な布陣が復活だ。
ベンチを見てみると、PRフレッチャー・ニューウェル、SHのTJ・ペレナラ、ユーティリテイーBKのデイヴィット・ハヴィリの3人が10月26日のジャパン戦以来のベンチ入りとなった。
アイルランド戦で自信を付けたHOアサホ・アウムア、まだまだ健在のPRオファ・トゥンガファシ、今季急成長のトゥポウ・ヴァーイ、バックアップメンバーからチャンスをものにしてフランス戦では75分戦い、トライも奪った21歳のFL/NO8ピーター・ラカイ、そして23番にダミアン・マッケンジーが控えるなど、ベンチも含めて強力なメンバー構成となっている。
セレクションについてロバートソンHCは、「チームを選ぶのに(イタリアに対して)フルリスペクトをした。彼らは、情熱的なチームで、調子を上げた時はタフな相手となる。私たちは、このテストマッチに勝つためにベストなサイド(メンバー)を選んでいる」と冒頭に話した。
昨年のW杯では96-17と圧勝した。しかし、イタリアを警戒するコメントも出た。
本来なら主力の5,6人を休ませる予定だったそうだが、前週フランスに敗戦した事がセレクションを変えるきっかけとなったようだ。今年最後の試合を良い形で終わるため、ケガ人以外のほぼベストメンバーで挑む事となった。
◆“サヨナラ”マッチはチームにとって特別な事。
今季限りでNZラグビーから離れて日本のチームに行くこととなったケイン(東京サントリーサンゴリアス)とペレナラ(リコーブラックラムズ東京)にとって、欧州遠征最後のイタリア戦は代表最後の試合となる。
104キャップ目が代表最後の試合となるケインに対して、「チームにおける彼の価値は、長期間にわたって信じられないほど高い。彼は強靭だ。オールブラックスのルースフォワードの象徴であり、偉大なリーダーであり、私たちにとってとんでもない足跡をジャージーの中に残してくれた」。
ロバートソンHCから絶賛するコメントが出た。
続けて、「(ケイン)彼とペレナラは若い世代のオールブラックスにとって完璧なチームメイトだ。2024年のテストシーズンの最終戦、そしてサム(ケイン)とTJ(ペレナラ)のお別れの試合として、これは素晴らしい機会となるでしょう。私たちは、サムとTJがブラックジャージに果たした絶大な貢献を称え、祝福する形でシーズンを終える決意をしている」。
2人について、気持ちを込めて話す姿が印象的だった。
イングランド、アイルランド、フランスとの試合と比べると、注目度が低いことは否めない。しかし、長年ブラックジャージ(オールブラックスのジャージ)に袖を通してきたケインとペレナラに対するメディアやラグビーファンの注目度は高い。それだけ、両者がNZラグビーに貢献してきた証拠と言えるだろう。
オールブラックスのジャージを着てのケインの渾身のプレー、ペレナラの魂のこもったHAKA(ハカ)の指揮もいよいよ見納めになる。チームは、両者の代表最後の試合に花を添えられるよう、素晴らしい試合をするだろう。