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トップイーストB首位攻防戦。激闘の秩父宮決戦は富士フイルムが制す
この日3トライの富士フイルムWTB照屋林治郎(東海大)(写真提供/富士フイルム)

トップイーストB首位攻防戦。激闘の秩父宮決戦は富士フイルムが制す

鈴木正義

 富士フイルムビジネスイノベーショングリーンエルクス、クリーンファイターズ山梨、明治安田ホーリーズの3チームによる激しい優勝争いが繰り広げられるトップイーストリーグBグループ。そのゆくえの鍵を握るのはここまで暫定3位の富士フイルムだ。

 11月17日の試合開始前、まだ山梨、明治安田との直接対決を残している時点で、優勝の可能性があった。負けゲームでも堅実にボーナスポイントを得て来たからだ。ただし優勝には、争う2チームへの勝利が必須条件だ。
 逆に明治安田、山梨としては富士フイルム戦に勝つことで、1位ないし2位のポジションにとどまりたい。

 11月17日、まずは山梨との直接対決を迎えた。
 試合会場は秩父宮。この日の第2試合は関東大学対抗戦の人気カード、明治大×帝京大ということもあり、多くのラグビーファンがスタンドを埋めた。優勝争いには申し分のない舞台だ。

 富士フイルムのSNSを見ると「闘うサラリーマン」というハッシュタグがついている。これについて試合前、キャプテンの仁林隼人(流通経済大)からその思いについて聞くことができた。

「グリーンエルクスは全員社員で構成されているチーム。選手は主に首都圏エリアの営業や修理対応をするエンジニアとして仕事に従事しています。」

 あらためて説明の必要はないかもしれないが、富士フイルムビジネスイノベーションは、みなさんの職場でもお馴染みのコピー機、複合機の提供だけでなく、企業のDX推進を提案する総合的なITサービス企業である。

「お客様との会話で必ずスポーツの話になり、場が和みます。また、ラグビーファンの方もいるので、商談がスムーズに進むことがあります」

 もしみなさんの職場に富士フイルムBIの営業やエンジニアが訪ねてくることがあり、ギョーザ耳になっていたり異常に首が太い場合、かなりの確率でラグビー部員かもしれない。ぜひ声をかけてラグビーと仕事を両立する姿勢を応援してあげてほしい。

 グラウンド内にいる選手も職場の先輩、後輩となるため、仕事の相談もしているとのこと。試合中も「ちょっと営業のことで相談が……」という会話があるのだろうか。いやそれはないか。

富士フイルムキャプテンSH仁林隼人(流通経済大)。休日は銭湯で過ごすという。(写真提供/富士フイルム)


 さて試合に話を戻そう。
 富士フイルムと山梨は今季すでに一度対戦があり、その時は21-17で山梨が後半ロスタイムに入った43分に逆転している。優勝争いもさることながら、富士フイルムとしては悔しさを晴らしたい。

 またこの試合は富士フイルムラグビー部を長年率いて、去る6月12日に他界されたチームの元部長 池田 裕一氏の追悼試合でもあった。
 様々な思いが去来するなか、秩父宮の芝生を踏んだ。

 試合の方は、山梨FB盛田気(大東文化大)が開始9分に先制のトライ。しかし、それ以降は完全に富士フイルムのペースで試合が動く。
 スクラムを組んでは巧みなスクラムワークを起点に山梨ディフェンスを崩し、15分にはFL石澤孔(流通経済大)が反撃のトライ。17分には一転WTB萬田開人(関東学院大)がスピードに乗って1本。前半5本のトライの山を築き33-7と一方的な試合展開で前半を終了した。

 特に最後の3トライは、WTB照屋林治郎(東海大)が飛び出して山梨ディフェンスを振り切る独壇場。SO芳崎風太(関東学院大)のキックパスもよく決まり、息のあったプレーでスタンドの喝采を浴びた。

WTB萬田開人(関東学院大)休日にはタグラグビーや筋トレなど体を動かしているというが、果たしてそれを休日と呼んでいいのだろうか。(写真提供/富士フイルム)


 ところがである。
 ラグビーの神様というものがもしいるとすればかなり気まぐれな性格のようで、後半、山梨の怒涛の反撃が始まる。

 まずはブレイクダウンからLOルーク・ポーター(前・NECグリーンロケッツ東葛)、ついでNO8マパカイトロ・パスカ(立正大学、元神戸・ホンダ)が押し込むと、このあたりから段々とスタンドがざわつきはじめ、山梨への声援の声も大きくなってくる。富士フイルムは自陣で不用意な反則をくりかえしてしまい、前半の展開が嘘のようにまったく点が取れなかった。

 30分過ぎ蘆立公宏(東海大)が飛び込みついに得点は33-26。山梨がワントライ差に迫ったところでスタンドの応援団の盛り上がりは最高潮を迎えた。

反撃のトライNO8蘆立公宏(東海大学)職場は富士急行。会社でCF山梨のクッキーの商品化を画策中という。(撮影/高野宏治)


「ロスタイムは、9分です」
 後半40分を過ぎたところで流れた場内アナウンスにスタンドがどよめく。いまの山梨の勢いなら、9分あればまだ試合はわからないということは誰の目にも明らかだったからだ。

 その予感は的中し、44分にWTB飯山竜太(帝京大学、前・NECグリーンロケッツ東葛)が鬼神の走りでトライ。
 が、しかし反撃はここまでだった。
36-33。ロスタイムに獲得したPGを確実に決めた富士フイルム。後半唯一の得点が決勝点となった。

ロスタイムのトライWTB飯山竜太(帝京大学)。次の試合の帝京戦目当ての観客からも声援を受けていた。(撮影/高野宏治)


 秩父宮という晴れ舞台で両チームがそれぞれの強みをいかんなく発揮した好ゲームであった。

 翌日は月曜日。闘うサラリーマンたちは筋肉痛に耐えながら職場に立つ。これは山梨の選手とて同じだ。
 銀行員や広告代理店、半導体製造メーカーなど、職場に湿布の匂いを漂わせながら元気に働くのだ。

 トップイーストリーグもBグループの結果ばかり書いてきたが、上位のAグループでも熾烈な戦いが続いている。

 今季Bグループから昇格したAZ-COM丸和MOMOTARO’S(アズコム丸和モモタロウズ)が強い。11月17日時点で首位と、昇格の勢いそのままに優勝目がけてまっしぐらだ。その丸和に立ちはだかるのが東京ガス。はもはや「定位置」とも言える首位の座を簡単には明け渡さないだろう。

 また、3位以下の混戦はBグループの優勝争い以上に混沌としていて、秋田ノーザンブレッツ、横河武蔵野アトラスターズ、日立Sun Nexus茨城の3チームが、なんとか一つでも順位を上げようと必死の戦いを続けている。

 グラウンドを吹く風も秋風から木枯らしへと、季節は移ってきた。高校ラグビーの代表も続々と決まり、大学ラグビーも各リーグ混戦の様相を呈している。
 国内最高峰のリーグワンの開催こそないが、やはり今こそが絶好のラグビー観戦シーズンだ。ぜひトップイースト各チームの「闘うサラリーマン」たちに声援を送りにグラウンドに足を運んでもらいたい。


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