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【オールブラックス】7番サヴェア、10番ボーデンで、フランス相手に昨年W杯敗戦のリベンジなるか。
日本代表戦でのSHキャム・ロイガード。スキルの高さで信頼を得る。(撮影/松本かおり)

【オールブラックス】7番サヴェア、10番ボーデンで、フランス相手に昨年W杯敗戦のリベンジなるか。

松尾智規

 フランスとの大一番を控えてニュージーランド(以下、NZ)国内のラグビーファンの機嫌がすこぶるいい。

 前週(現地時間11月8日)は、苦戦が予想されていたアイルランド相手に良い形で勝利した(23-13)。NZ国内のTVやラジオのあちらこちらからオールブラックスを称賛する声が聞こえてくる。ラグビーファンの気分が良いだけでなく、番組のホスト、コメンテーターの声のトーンも高く、にこやかな表情が印象的だ。
 アイルランド戦は、HOコーディー・テイラー、SO/FBボーデン・バレットの主力二人の欠場があり苦戦が予想されていた。しかし、代役の2番アサフォ・アウムア、10番ダミアン・マッケンジーの2人が大活躍で世界ランキング1位(試合が始まる前の時点)のアイルランドを撃破した。

 不安視されていたアウムアのラインアウトのスローイングは、ほとんどミスがなかった。持ち味のボールキャリーで前に出る力も見せた。極めつけは、試合を決める15番ウィル・ジョーダンのトライ(69分)のアシストも素晴らしかった。 

 一方のマッケンジーは、改善の余地があると言われていたキッキングゲームを含め、ゲームを上手くコントロール。引き続き好調のゴールキックにおいても6ペナルティゴール(PG)で18得点を稼ぎ出し勝利に大きく貢献した。結果POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた。

 NZ国内において、アウムア、マッケンジーの活躍は絶賛された。ある意味、想像以上の活躍に驚きを隠せない様子だった。この2人がステップアップしたことは、オールブラックスの層を厚くしたと言える。
 世界ランキングも2位に浮上(1位は南アフリカ)。オールブラックス復活の兆しを感じる試合内容だっただけに、ラグビーファンの間で賑わった。

 勢いに乗ってきたオールブラックスの今週の試合は昨年W杯の開幕戦で完敗したフランスが相手となる。アイルランド戦の勝利の喜びが引き続き残る中、フランス戦のセレクションの話題がメディア、ラグビーファンを賑わせている。

◆ケイン欠場でサヴェアが3年ぶり7番。10番はボーデン



 フランスの現地時間の11月16日(土)、午後9時10分(日本時間11月17日、午前5時10分)にキックオフとなるフランス戦に挑むオールブラックス。その試合の登録メンバーの発表が11月15日にあった。

 スコット・ロバートソン ヘッドコーチ(HC)をはじめ、セレクター陣が選んだメンバーは、先発メンバー5人がアイルランド戦から変更となった。
 脳震盪から復帰のコーディー・テイラーが2番に戻り、1番タマティ・ウイリアムズ、3番タイレル・ロマックスのフロントローとなる。

 前週、頭部を8針縫うケガをしたFLサム・ケインは、今週は脳震盪の影響もあり欠場。FW第3列の変更を余儀なくされた。
 ケインの抜けたポジションには、アーディー・サヴェアをNO8からシフトチェンジ。3年ぶりに背番号7のサヴェアが復活となる。
 前週6番のウォレス・シティティが今週はNO8に入り代表ではジャパン戦以来、2試合目の8番ジャージー。サミペニ・フィナウがベンチから昇格となり6番を背負う。

All Blacksの公式『X』より

 BK陣を見ていくと、ハーフ団を揃って変更した。アイルランド戦で後半からインパクトあるプレーをしたキャム・ロイガードが9番、 脳震盪から復帰のボーデン・バレットを10番に指名した。
 手のケガでWTBマーク・テレアが欠場となり、セブ・リースが入った。14番を付ける。

 先週大活躍したHO アサフォ・アウムア(16番)とSO/FBダミアン・マッケンジーがテイラー、ボーデンの復帰でベンチスタートとなった。
 両者はアイルランド戦で自信を付けた。後半からインパクトプレーヤーとして期待が持てそうだ。

 ケインの欠場により、フィナウが先発に昇格して空いたベンチには、ピーター・ラカイ(20番)が入った。出場すれば2試合目のテストマッチ。FW第3列すべてのポジションをカバーできる貴重な存在だ。
 ケガ人がらみ以外での変更はない。引き続き、一貫性を保ってのセレクションとなっている。

 このセレクションの中で一番注目されたのはFW第3列だ。
 ケインの欠場によりビッグマッチで7番を誰にするのか、NZ国内での論議も活発だった。
 サヴェアの7番復活は、新人シティティが試合を重ねるごとに成長し、世界レベルでも通用する事が証明されたからだ。NO8 のポジションを任せられることが大きな要因となった。
 サヴェア7番、シティティ8番は、お互いに最も適しているポジションと言われているだけに、フランス相手にどんなパフォーマンスをするか注目される。

 7番サヴェアについてロバートソンHCは、「彼(サヴェア)は数試合出場(神戸で)しており、経験も豊富だから、すぐにそこに収まるだろう。ウォレス(シティティ)は彼の好みのポジションである8番に入る。サミペニ(フィナウ)とのコンビネーションも良い」。
 サヴェアの7番には全く心配がない様子だ。そしてシティティとチームメイト(チーフス)のフィナウを6番に入れコンビネーションも考慮し、FWが強いフランス相手にフィジカルバトルを意識した布陣となった。

「事情(ケインのケガ)によりこのようなことになったが、今年に向けて検討してきたことであり、いまがその時だ」。
 今年で代表から引退を表明しているケインの後任(7番)は、ずっと話題となっていた。シーズン終盤に入り、いよいよ動く時が来た。

バックローの全ポジションを高いレベルでカバーできるピーター・ラカイ。(撮影/松本かおり)


 FW第3列と同じくらい注目されたセレクションは、10番のポジションだ。
 前週アイルランド戦で素晴らしいパフォーマンスを見せたマッケンジーをベンチに降格させてまで、ボーデン・バレットをケガから復帰後即先発に持ってきた。メディアを賑わせる判断だ。

 これに関してロバートソンHCは、「(セレクションは)非常にタフだった。調子の良い10番が2人いて、両者とも優れた司令塔で、キックが上手い。素晴らしい議論になる」。
「Dマック(マッケンジー)について、ひとつ言えることは、おそらくベンチから出場する選手としては世界最高だということだ。彼が出場すれば、試合の流れを変えることができる」と語った。
 どちらが10番で優れていると言うより、ゲームチェンジャーとして優れているマッケンジーをベンチスタートにすることがチームにとって最善と考えているようだ。

 ボーデンとハーフ団を組むロイガードに関しては、「カムは素晴らしいプレー(先週)を見せたね。彼はチャンスをものにしたし、ゲームマネージメントを考えれば、この試合は彼のための試合だと信じている。両チームのプラン通りに試合が進めば、かなりのキック戦になるだろう」。

 前週9番で先発のラティマがボックスキックでプレッシャーを受けていた。戦術も含めて、キックでも評価を得ているロイガード先発も納得がいく。
 フランスは前週、52-12でジャパンに圧勝している。しかし、フランスの指揮官は納得がいっていないようだ。あくまでも目線はオールブラックスを倒すことである。

 一方のオールブラックスは、昨年のW杯開幕戦で完敗(13-27)のリベンジをしたい。
 新人シティティの8番に注目するとともに、膝の大ケガから強さが増して復帰した9番ロイガードが、世界最高と言われているSHアントワンヌ・デュポンと対決するのも楽しみだ。
 FWのフィジカルバトルを始め、見ごたえ満載の試合は、間違いなく白熱する。

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