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混戦のトップイーストB、ボーナスポイントの差で明治安田が首位キープ。
チームの強みである外国人FW陣でゴールラインを突破するクリーンファイターズ山梨。(撮影/鈴木正義)

混戦のトップイーストB、ボーナスポイントの差で明治安田が首位キープ。

鈴木正義

 トップイーストといえば社会人ラグビーで伝統あるチームが多く名を連ねるが、そのなかでも1930年創部という明治安田ホーリーズはリーグ内でも常に一目置かれる存在である。

 その明治安田が昨シーズン、Bグループ最下位という不本意な成績に終わってしまった。今シーズンに懸ける思いに相当なものがあったことは想像に難くない。
 その思いは今季、グラウンドでいかんなく発揮されている。ここまでのリーグ戦5戦全勝で、勝ち点22(11/10試合開始時点)。暫定ながら1位としている。

 一方のクリーンファイターズ山梨も負けは明治安田に喫した1つのみで、ここまで4勝1敗。後半ロスタイムでの逆転を2試合やってのけるなど、勝負強さが一段と増した印象だ。勝ち点は18。優勝を狙うにはこの試合の勝ち点4はどうしても欲しい。

 実はこの2強に加わろうとしているチームがもう一つある。富士フイルムビジネスイノベーショングリーンエルクスだ。
 勝ち星こそここまで3勝2敗だがボーナスポイントを着実に稼ぎ、勝ち点は17で、4勝している山梨に1点差でつけている。
 今後明治安田、山梨との直接対決も残しているだけに、その戦い次第ではまだまだ首位を狙える位置にいる。

 11月に入りリーグ戦も後半、この3チームの直接対決が始まり目が離せない。
 11月10日、薄曇りの少し肌寒さを覚える中で開催された明治安田と山梨の試合(明治安田G)の模様をお伝えしよう。

 試合は開始早々明治安田が相手陣に切り込んだ。ペナルティ後に得たラインアウトからのモールを押し込んで、最後はHO須田航平(山梨学院大学)が押さえて先制。コンバージョンキックはキックの精度に定評のあるSO髙木陽太(日本体育大学)が決めて7-0とした。

 ちなみに明治安田×山梨の前回の対戦では髙木が4本のPGを決め、これが決勝点となって勝利している。
 その髙木の右足がこの試合でも大きな意味を持つことになるのだが、まずは試合経過を追ってみよう。

精度の高いキックで加点する明治安田SO髙木陽大(日本体育大学)。(撮影/鈴木正義)


 前半23分、敵陣でペナルティをもらった山梨はボールをタッチに出さず、HO村端凌(花園大学)がボールを拾って突進。次のフェーズでルーカス・ボイラン(前・豊田自動織機シャトルズ)を中心にFWが集結してゴールラインを突破した。

 山梨と言えば、このリーグの中では外国人選手が多いことが特色で、そのフィジカルを活かしたプレーが身上のチームだ。
 ただ、こういうチームはともするとフィジカルに頼った単調な攻めになってしまいがちだが、ここに一工夫してきているのが今年の山梨の強さに繋がっている。
 従来選択してこなかったこのオプションもそのほんの一例だ。大型FWがより多くの選択肢を持つ、これは相手チームにとってプレッシャーになる。

「今日はここ1~2週間準備してきたことが出せていた。今年のチームは本当の意味でのワンチームになってきている。誰かがこれをやろう、と言えばエコーしてそうだやろう、と返してくる。正直去年まではここの意思疎通の徹底がたりていなかったのかもしれない」。
 山梨の小池善行ヘッドコーチ(元・ヤマハ)は、試合後にそう振り返る。
 まさにこのシーンでは、これをやろう、ということが徹底された結果のトライだった。

 その直後の31分には、山梨SO清水晶大(関西学院大学、前・豊田自動織機)がドロップゴールを決めて逆転した(10-7)。
 清水は今シーズンの選手登録ギリギリのタイミングでチームに合流したばかりだが、早くもチームの司令塔として山梨を引っ張っている。元々ポテンシャルのあるチームだったが、ゲームメイクの上手い清水の加入により相手チームからすると「面倒臭いことをやってくる」チームに生まれ変わった印象だ。

山梨の今年の司令塔SO清水晶大(関西学院大学)。今季、豊田自動織機から移籍。(撮影/鈴木正義)


 新加入と言えば山梨のLOには今シーズン、NECグリーンロケッツ東葛からルーク・ポーターも移籍している。
 FWではルーク、BKでは清水が、リーグワンの経験を持ち込んでいることでチームの雰囲気も変わってきているようだ。

 その後明治安田は髙木のPGで3点返し、前半は10-10とスコア的にも内容的にもイーブンの内容で折り返した。

 後半に入ると明治安田の髙木がハーフライン近くからのPGを決めて13-10とするが、その直後山梨は、スクラムからFL森賢哉(山梨学院大学)が持ち込んで再度逆転した(17-13)。

「今回のテーマは1人1人のファイト。簡単に寝ない、ファイトする。ここをちゃんとやろう、ということを話し合ってきました。前回の負けの要因はブレイクダウンまわりで、そこから反則も増えましたので今回はこだわろうということで準備してきました。」(山梨・森)

再逆転のトライを挙げた山梨FL森賢哉(山梨学院大学)。山梨の地元出身選手。(撮影/鈴木正義)


「試合前から、クリーンファイターズさんの外国人選手を中心としたフィジカルバトルになることはチームとして予測していました。そこに対して今年度ホーリーズの強みであるディフェンスで守ろうと考えていました。」
 試合後に明治安田キャプテン高橋優一郎(日本大学)はこう振り返る。

 高橋の言う通り、元より規律あるディフェンスが売りの明治安田、そこに山梨が真っ向からファイトで粘るので、一進一退の攻防が続く。この両チームの対戦は毎回観ている側もつい力が入ってしまう展開だ。

 明治安田は山梨の反則をうまく誘い出すもののトライまで結び付けられず、一方山梨のアタックも明治安田のLO相部開哉(慶應大学)、CTB青山晃(関東学院大学)、同・三木亮弥(慶應大学)らの確実なタックルで前進を阻まれる。

この日タックルで何度もピンチを凌いだ明治安田LO相部開哉(慶應大学)


 結局後半、山梨はマパカイトロ・パスカのトライ、明治安田は髙木がさらに2本のPGを決めるにとどまり、逆転につぐ逆転の見応えのある攻防はついにノーサイドとなった。

 スコアは24-19と、後半2本のトライを取った山梨が上回った。しかし実は犯したペナルティの数では山梨が上回っており、それだけ厳しい局面まで明治安田に追い詰められた中での勝利だったと言える。
 逆に明治安田からすると12個の相手ペナルティをトライまでもっていけなかったのは悔しさの残るところだろう。

 それでも明治安田にとって大きかったのはPGで着実に加点していたことだ。とくに終盤立て続けにPGを2本取ったことは、試合が終わってみれば7点差以内の負けによるボーナスポイントの獲得に結びついた。

 このボーナスポイントにより、負けた明治安田が23点で首位をキープした。冒頭に書いた髙木の右足がもたらした首位だ。
 山梨は勝ち点22でピタリと2位につけている。

 残り試合の勝ち点の勘定を試みたのだが、筆者の頭脳の回路がショートしそうなのでここでは詳細は言わないが、要するに富士フイルムを含めた3チームすべてに優勝の可能性があり、最後は今回のようにボーナスポイントをしっかり取り切ることが決め手となるだろう。

 あと数週間、トップイーストBから目が離せそうにない。


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