logo
【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY②】直人、テビタのトップ14組、フランス戦へ燃ゆ。
日本代表への合流後、多くの選手たちと話す齋藤直人。「やることをクリアにして試合へ」。(撮影/松本かおり)
2024.11.09
CHECK IT OUT

【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY②】直人、テビタのトップ14組、フランス戦へ燃ゆ。

田村一博

 寒い、寒い。
 11月8日もパリは曇天で時々小雨。日本代表は17時から、翌日にフランスと戦う試合会場、スタッド・ド・フランスでキャプテンズランをおこなった。

 その前に、現地時間の10時45分から、ニール・ハットリー アシスタントコーチ、テビタ・タタフ(NO8)と齋藤直人(SH)がオンライン会見に登場。報道陣の質問を受けた。

 トップ14のボルドーでのプレーが2季目に入ったタタフは、フランス戦ではベンチスタート。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、「試合終盤にインパクトあるプレーを期待している」と話している。
 それを受けて本人も、「チームにエナジーを与えたい。与えられた時間の中で力を出し切る」とした。

大事な時間帯での爆発を誓うテビタ・タタフ。「ペナルティで相手のFWを自陣深くに入れたらだめ」。(撮影/松本かおり)


 ボルドーでの2季目について、「チームの強みが、より分かってきた。新しい選手たちも加わって、いい感じ」と話すテビタは、しばらく離れていた日本代表の印象について、「チーム内のつながりがより良くなっているし、フィジカル面、スピード面が高まっている」と感じたようだ。
「チームとしてやれることが多くなっている」と話す。

 フランス戦では、同国で揉まれて伸びた力を出す。「自分より大きくて、重い相手と戦うことが多い中で、フィジカルで負けないマインドでやっています。ロータックルで止めることもある」とするペネトレーターは、「体を張って、トライにつながるプレーをしたい」と意欲を見せた。
 フランス代表の3番、テビタ・タタフについては「血縁関係は何もない」と明言した。

 続いて登場の齋藤は、同じトゥールーズ所属でSH、フランス・ラグビーの大スターで、代表チームのキャプテンを務めるアントワンヌ・デュポンとピッチで対峙することについて問われ、「特別意識しない」と答えた。

調整を進めるFL姫野和樹。相手の大型FWに挑む。(撮影/松本かおり)


 大事なのは「自分たちがどう戦うか」と強調。「フランスは必ずキックをうまく使ってくる。その対応をしっかりしないといけない。敵陣では自分たちの強みであるスピードを生かしたアタックをしたい。デュポンと(SOのトマ)ラモスは必ずキーになる選手なので、2人にいいキックをさせない、いい判断をさせないようにしないと」と話した。

 自身が出場しなかった日本×オールブラックスを見て、「どこでボールを手放すのか、どのエリアで攻めるのかの判断が大事」と感じた。
 自陣から果敢に攻めるのもチームの強みのひとつも、特に均衡が保たれている時間帯には、敵陣で戦うことを考えて試合を作っていくつもりだ。

 トゥールーズに加入した今季、ここまでに7試合に出場(2戦先発)している。
 高いレベルのフィジカルバトルが当たり前の実戦面に加え、1か月半で7試合を戦うスケジュールやハードな移動を経験し、簡単ではないと覚悟して渡仏したものの、あらためて「ものすごくタフ」と感じている。

メディアへの公開時間は15分。大型ビジョンに残り時間が映し出される。(撮影/松本かおり)


 毎日の練習、試合ごとに学びがある中で、「自分からキックを蹴る機会が本当に増えた」。
 コーチの指導を受けて、高さの出るキックを身につけつつある。強いプレッシャーの中で繰り返し蹴る中で、対応力も高まった。
「やってきた成果を試合の中でしっかり出すことが大事」と言う。

 フランスで得たものは、スキル面の高まり以外にもある。判断と実行の決断力だ。
「チームのルールや(予定している)形がある中で、実際のゲームの中では、いろんなことが起こる。その時、目の前の状況に対して自分で判断する、イニシアチブをとってプレーする。そういうことがもっとも大事と、学びました」

 日本代表にとっても、自分にとっても、スタッド・ド・フランスでのプレーは初めてのこと。さらに、チームメートが対戦相手にいる状況は、テストマッチでは初めてのこと。齋藤自身、「おそらく、今後深く印象に残る試合になる」と感じている。

 完全アウェーの雰囲気の中でプレーすることは明らかだ。そんな空気は2022年の11月、トゥールーズでフランス代表と戦った際にも経験しているものの、スタンドの規模が大きく違う。
「2年前(のトゥールーズで)も、ナショナルアンセムの時からものすごい雰囲気でした。今回は、その倍以上の観客が想定されるので、大歓声の中でもコミュニケーションを取る工夫をしないと」
「自分たちから勢いを作り出さないといけない」とも話した。

フランスメディアのターゲットは、この人。アントワンヌ・デュポン主将。(撮影/松本かおり)


 午後3時過ぎからはスタッド・ド・フランスのピッチ上で、フランス代表、日本代表の順で、キャプテンズランがおこなわれた。
 フランスメディアのカメラの先は、1年ぶりのテストマッチとなるデュポン主将。15分の練習公開時間の中、彼の一挙手一投足に視線が注がれ、続いておこなわれたメディア対応でも多くの質問が飛んでいた。

 日本代表も予定より早い時間にピッチに姿を現し、いつものように赤白ジャージーを着て、ウォームアップやゲームリハーサルを繰り返した。
 短い練習公開時間では分かることは少ないけれど、セットプレー、あるいは相手反則からの仕掛けなど、速さを生かしたプレーの確認が続いていた。

 キャプテンズラン後は、冷えた体をあたためるために、フランス在住のラグビーの先輩たちと会食。飲んで、肉にかぶりつき、店内で流されていたアイルランド×オールブラックスを楽しんだ。
 が、時差もあって眠い、眠い。ダブリンでの好ゲームは断片的にしか見ることができていない。もう一度、見直さなければ。

 深夜の帰り道、街では多くの人たちが、飲んで、話し、その時間はまだまだ続きそうだった。
 21時10分キックオフのフランス×日本でも、フランス国歌が大音量で何度も歌われるだろう。
 その中で、サクラのジャージーがフランスサポーターたちに悲鳴を挙げさせることを期待したい。

取材後はラグビーの店で、飲んで、話して、食べた
豪快な肉料理。うまい、うまい。


ALL ARTICLES
記事一覧はこちら