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【Just TALK】「チャレンジするために来ました」。池永玄太郎、金秀隆、酒木凜平[東芝ブレイブルーパス東京]
左から酒木凜平、金秀隆、池永玄太郎。新天地で輝きたい。(撮影/松本かおり)
2024.11.04
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【Just TALK】「チャレンジするために来ました」。池永玄太郎、金秀隆、酒木凜平[東芝ブレイブルーパス東京]

向 風見也

 リーグワン1部の2023-24シーズン王者、東芝ブレイブルーパス東京に、ハングリーな3人が移籍してきた。

 ひとりは池永玄太郎。身長182センチ、体重100キロの27歳で、ポジションはセンターだ。2019年に天理大からコベルコ神戸スティーラーズ(現名称)へ入団し、5シーズンのプレーを経てブレイブルーパスの門を叩いた。

 ブレイブルーパスでは、センターでプレーできた昨季のメンバーのうち、ニコラス・マクカラン、中尾隼太といったキャップホルダーがそれぞれトヨタヴェルブリッツ、三重ホンダヒートへ移っている。

 ゼネラルマネージャーの薫田真広は「(池永は)マクカラン、中尾の抜けた穴を埋めてくれる。経験、サイズがある」と期待する。

 もうひとりは金秀隆。身長186センチ、体重90キロの26歳で、フルバックやウイングを務める。

 2020年に朝鮮大学からクボタスピアーズ船橋・東京ベイへ入り、2021年1月からのトップリーグ最終シーズンで新人賞に輝いた。

 ブレイブルーパスのフルバックでは昨季、松永拓朗が活躍。本職のスタンドオフを務めたゲームも含めると、18試合中17試合に出場している。

 次のレギュラーシーズンでは試合数が増えるため、層の厚みが求められる。薫田は「金の加入により、より幅の広いバックスラインが組める」と語る。

 さらに加わったのが酒木凜平。身長178センチ、体重99キロの24歳で、専門職のフッカーを担う。出身の大東大では主将を務め、前年度までの約2年間は池永と同じスティーラーズにいた。

 原田衛副将、森太志、橋本大吾といった代表経験者がひしめくフッカーの位置で、競争を激化させる存在となるか。9月下旬の段階で、元フッカーでもある薫田に「チームへ合流して2~3か月にして身体がかなり仕上がっています」と言わしめている。

 3人は10月31日、都内で会見した。新天地を求めた思い、新しくチームメイトになったビッグネームへの所感を述べた。

サイズに恵まれている池永玄太郎。ミッドフィールドで強さを見せたい。27歳。(撮影/松本かおり)


——今回の決断を下した背景は。

池永「僕は、移籍というより、チャンスをいただけた、という形です。(今回の)お話を聞いた時から、(ブレイブルーパスの)試合を見て、どういうラグビーをしているのか、勉強しました。チャレンジするためには、加入までの準備が大事だと思って過ごしてきました」

金「新しいチャレンジがしたかった。チャンピオンチームに呼んでいただいて、そこでのラグビーも楽しそう。これはもう行きたいし、行くしかないと思って決めました」

酒木「(チームを変えると決めて)最初に、正式にオファーをいただいたのは東芝さんでした。強いチームでチャレンジできる機会をいただけたので、全力でやりたいと思って決めました」

——外からチームを見ていた時と実際に入ってからで印象にギャップはありますか。

池永「ギャップに驚く部分はあまりなくて。熱いチームで、スタンダードが高い。これは思っていた通りでした。僕自身にいいプレッシャーをかけられる環境だと思っています」

金「ラグビーはアタッキングスタイルで、空いているスペースに自由にボールを動かす。客観的に見ていて楽しかったですし、実際に中に入っても楽しいと感じました」

酒木「入る前の印象ではフィジカルが強い、コンタクトと接点にこだわりがあるチームだと感じていました。実際にそうでした。自分もその高いスタンダードに合わせていかないと、と感じます。チームの雰囲気はファミリー感が強い。皆、仲が良く、指摘もし合えるし、いい刺激を与え合える」

——「ファミリー感」について。

酒木「僕が入ってきた時から、フッカーの先輩——大吾さん、太志さん——が優しくしてくれました。ラグビーのことも、チームのことも色々と教えてくれました。先輩方が、『教えてあげよう』と思ってくれている。いろんな人のプラスになるようにしている。だからこそ、年下の選手が伸び伸びとプレーできて、相乗効果が生まれるんだと思います」

金「チームの雰囲気はめちゃめちゃよくて、わからないことがあれば先輩、後輩、関係なくフラットに聞けます。強いチームにはファミリー感があるなと思いました」

池永「加入して、こっちから積極的に発信しないといけないと思っていたんですけど、逆に喋りかけていただけることが多くありました。森田さん(佳寿コーチングコーディネーター)、トディ(トッド・ブラックアダーヘッドコーチ)といったコーチ陣、選手も、です。すんなりなじめて助かりました。あとは、僕と同じ関西出身の選手が多い。松延(泰樹)さんが、お世話をしてくれます」

アタック力に長ける金秀隆、26歳。トップリークで新人賞の獲得経験あり。(撮影/松本かおり)


——前所属先との違いと、これから個人的に注力したいところは。

池永「練習は、東芝の方がしんどいです。動き続ける時間が長い。ゲームフィットネスが必要だと感じました。練習をしていくと、移籍当初よりいまのほうが動きはいいと感じられるようになりました。自分自身が力を入れたいところはスキルです。スキルには自信を持っています。パス、キック、あとはコミュニケーションもひとつのスキルだと思っています。それらを成長させる。また、タフネスさ(も磨きたい)。東芝のセンターにはタフな選手が多いし、センターはバックスのなかでもタフにできないといけないポジションなので」

金「練習中のボール・イン・プレーが長いので、自分でもゲームフィットネスがついてきていると思っています。伸ばしていきたいのは強みのランニング。強みを伸ばしてチームに採り入れられたらと思います。また、ゲームメイクも磨いていきたい」

酒木「練習ではフィジカルにこだわりを感じます。そこを強みにしている選手も多い。僕がこれから注力したい点もまさにそこ。フィジカルで勝っていこうと思っている。身体作り、コンタクトスキルという、ラグビーのなかでのしんどいところでどれだけ頑張れる、です」

——昨季来日して活躍したスタンドオフのリッチー・モウンガ選手、フランカーのシャノン・フリゼル選手といった元ニュージーランド代表勢について印象は。2人ともすでに新チームに合流していますが。

池永「リッチー、さん…いや、リッチーは、スキルフルだと思いました。神戸では(元ニュージーランド代表の)ダン・カーターとも1年、一緒にやって、その時も衝撃を受けました。リッチーは、それとは違ったタイプのスタンドオフ。ファンタジスタで、どこからでもボールを動かしたり、自分でランしたり。僕も、ボールのもらい方、どうやって考えているかといったところで学べるところがある。勉強していきたいです。

あと、シャノンは…まず、でかいです。無茶苦茶、でかいです。僕がフォワードの練習に入っていないのでプレーについてはまだわからないですけど、結構、ちょっかいを出してくる。そして声が小さいです!」

金「僕もバックスなのでリッチーの話を。ずっと映像で見ていて、世界一のプレーヤーだなと感じていて。何でこんなに凄いのかなと思って一緒に練習してみたら、彼は常に空いているスペースを見てアタックしている。全然、形にこだわっていなくて、外が空いていたらずーっと外に攻めるし、フォワード(接点周辺)で崩せそうだったらずっとそうするし…とか。たまに(実戦形式の練習などで)一緒(のチーム)に入ったら、スペースも見えてくる。『凄い』の一言に尽きます」

酒木「まず、リッチーはフォワードをオーガナイズする能力が高い。(動きながら)ずっと喋ってくれるので、自分たちが何をすべきか、わかりやすい。練習中のコーチングもやってくれて、改善点を見つけさせてくれる。教え方もうまいです。

 シャノンもフォワードの練習中、自らがハードワークしている上に僕たちへのコーチングもしてくれる。世界のトップでやっている人は余裕があって、そういうこともしっかりできるのだなと感じました。

 神戸で一緒にやっていたアーディー・サヴェアもそうですが、皆、人間がいい。私生活の時も優しいですし、楽しく話してくれる。チームを大事にしているなと感じます」

大学時代はキャプテンを務めた酒木凜平。リーダーシップあり。もうすぐ25歳。(撮影/松本かおり)


——リーチマイケル主将について。

池永「ジャパンに行っていないいまは、ずっとこっち(ブレイブルーパス)にいて、チームのミーティングにも参加されていて、セルフトレーニングもしている。チームと個人のバランスをコントロールされている。ベテランなのにハードにやられている。学ばなければいけないと感じました」

金「すれ違えば絶対に声をかけてくれます。(同僚の)ひとりひとりを思ってくれている。助かります」

酒木「思ったのは、『めちゃくちゃ練習するなぁ』です。ジャパン(の夏のキャンペーン)から帰ってきても、ずーっとクラブハウスにいて、ずーっと自分がやらなきゃいけないことをしている。自ら高いスタンダードをチームに見せてくれている。周りの人たちは『僕らもやらなきゃいけない』と考えさせられます」

——今回、新しい挑戦をするにあたって、自分の変えたい部分は。

酒木「東芝では競争が激しく、スタンダードが高い。僕自身も努力し続ける。東芝のカルチャーにはすごく練習に取り組むという部分がある。自分がもっとやらなければいけないと感じました。このチームに入ったからには、最大限の努力をし続けるという部分をやり続けたいです」

金「簡単には試合には出られない。スタンダードを上げて努力して、負けないように頑張りたいです」

池永「試合に出るためには、ひとつひとつの練習のドリルがアピールの機会になります。前のチームでもそうでしたが、試合に出るために日々の練習をないがしろにしないように心がけて、自分を表現したいです」

 アットホームでタフなクラブにあって、存在感を示したい。


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