Keyword
1年生たちには真紅のジャージーへの苦手意識がないのだろう。
11月3日、関東大学対抗戦Aの早大×帝京大で、赤黒のジャージーは7トライを挙げて48-17と大勝した。
早大が対抗戦で帝京大に勝ったのは2020年度シーズン以来のこと。この日の7つのトライは、すべて1年生の2人が挙げた。
WTB田中健想が5でSO服部亮太が2。服部はロングキックでチームを前に出すゲームメイクを遂行して勝利を引き寄せた。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた田中は桐蔭学園出身。3年時に花園優勝を経験している。
ルーキーイヤーの今季は日体大戦でも5トライを挙げており、この日で計11トライとなった。
名古屋生まれ。家族の転勤で東京へ移り、ワセダクラブでラグビーを始めた。特徴的なヘッドギアは、自分と同じく小柄な体ながらも南アフリカ代表WTBとして活躍するカート=リー・アレンゼと同じモデル。高2から着用している。
この日のパフォーマンスを振り返り、「相手のことは考えず、自分がやるべきことを明確にしてやり切った」と話した。
田中が前半に奪ったトライは13分、19分、21分。序盤に19-0と大きく差を開く先制パンチとなった。
最初のトライは、相手反則で得たPKを、同じ1年生のSO、服部が蹴って敵陣深くに入ったところから始まった。
自陣10メートルラインの内側から蹴ったタッチキックは帝京大陣の22メートルライン内に届いた。
相手陣22メートル内にしばらく居座った早大は、2度目のラインアウトからの攻撃で、トライラインに迫り、アタックを継続。その7フェーズ目、SO服部からの速くて長いパスを右端で受けた田中がインゴールに飛び込んで先制した。
22メートルライン付近でスクラムを圧倒、押し込んだのは19分。前に出たFWから出たボールをSH細矢聖樹が右で受け、FB矢崎由高へ。矢崎のオフロードパスを受けた田中は、目の前のスペースを走り切った。
その2分後には蹴り合いの末に好機をつかむ。服部のロングキックを受けた相手を田中がタックル。直後の相手の反則から仕掛けた速攻を、三たび背番号14が仕上げた。
これもインゴール右隅にボールを置いた。
27分、35分と帝京大にトライを返されて19-10とされるも、前半終了直前にSO服部がラインアウトから判断よく走り、トライを奪って加点。
早大は26-10としてハーフタイムに入った。
後半に入っても早大の勢いは衰えず、その先頭に立ったのも田中だった。5分過ぎ、この日自身4つ目のトライを挙げる。
中盤、やや右のスクラムから左へ大きく展開して前進。そこから右へ振り戻し、右の大外を14番が走り切った(Gも決まり33-10)。
13分過ぎには前に出るディフェンスで反則を誘い、PGで3点を追加。33-10と再びリードを大きくした早大は、26分にはラインアウトからの攻撃でキックを蹴った後、8フェーズを重ねる攻撃を見せて最後はSO服部が左中間に入った。
背番号10はコンバージョンキックも自ら決めて43-10。完全に勝負を決めた。
79分過ぎにWTB田中が、この日5つ目のトライをインターセプトから挙げ、48-10までスコアは開く。
試合終了間際に帝京大がトライ、ゴールを決めてファイナルスコアは48-17となった。
帝京大の相馬朋和監督、青木恵斗が、「すべてにおいて早稲田が上回った」、「早稲田の前に出るディフェンス、接点の強さを受けてしまった」と話した80分。
早大の強力バックスリーと服部のキックを警戒し、中盤からランで攻めたことも裏目に出た。
早大の大田尾竜彦監督は、「対抗戦の1試合、ではなく、我々がなんとしても超えなければいけない帝京が相手ということで、ここに集中してきました。(準備の)1週間の中でうまくいかないこともあり、不安にもなったと思いますが、今日は自分たちのやるべきことに集中してやり切ってくれた」と選手たちを愛でた。
菅平での夏合宿中の練習試合に続く帝京大撃破に、佐藤健次主将(HO)は「ターゲットゲームとしてきた試合。全員がコリジョンバトルでいいファイトができたのが良かった」と話した。
HOになって3年目。過去2年はスクラムで圧倒されたが、この日は形勢を逆転したことも喜んだ。
そして、BチームやC、D、Eの各グレードの仲間たちが作ってくれた雰囲気が出場メンバーにエナジーを与えてくれたと感謝の言葉を口にした。