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オールブラックスことニュージーランド代表が強さを示した。
10月26日、神奈川・日産スタジアムで日本代表を64-19で下した。メンバーの23名中11名が戦前のキャップ数が1桁台および0だったものの、14-12で迎えた前半22分からハーフタイムまでに5本連続トライをマーク。ホスト国を圧倒した。
フレッシュな陣容で快勝のスコット・ロバートソンヘッドコーチは、こう総括した。
「今回の試合では、自分たちが選手へプレーのチャンスを与えるのが大事でした。新しい選手もいるので、新しいコンビネーションを試すことも重要でした。次までのふたつのテストマッチで、(スコッド内で動ける)全員にプレーするチャンスを与えたいです。この試合を通じ、自分たちをステップアップさせたかったです。日本代表には身体が大きい選手がいるので、そのような相手とプレーできてよかった」
この一戦で活躍した若者のひとりが、22歳のウォレス・シティティだ。ナンバーエイトで先発したこの日、6キャップ目を獲得した。鋭い突破と豪快なターンオーバーを披露した。
身長187センチ、体重117キロ。普段はスーパーラグビーのチーフスに所属する。オールブラックスの一員としては、今夏のラグビーチャンピオンシップでも持ち味を発揮した。
実は、日本にもゆかりがある。
父でサモア代表のバックローだったセモ・シティティは、2006年以降に日本のNTTドコモ(現・レッドハリケーンズ大阪)で選手、コーチとして活動。息子も7年ほど大阪に住んでいた。
——シティティ選手は日本代表戦でも素晴らしいターンオーバー、ラインブレイクを重ねました。
「前半はよくできた。後半はやや失速しましたが、味方の人たちがうまくスペースを見つけ、それを逃さなかったのがよかったです」
——オールブラックスの攻撃力が光りました。日本代表の守りをどのように攻略したのでしょうか。
「できる限りフィジカルにいこうとしました。それによってスペースが作られる。そして、そこを侵略するという選択です。身体の大きな選手たちが頑張って前進することで、スペースを作ってもらいました」
——日本代表は、中盤であまりキックをしないスタイルを貫きました。結果的には、それがオールブラックスのターンオーバーとその後の攻撃に繋がったようにも映ります。
「(日本代表の攻め方は)ディフェンスにとっては辛い状況を作りました。我々は一丸となって守らなくてはいけなかった。ディフェンスに集中したため、ボールを取り返せたのかなと」
——ここからは個人的なことを伺います。シティティさんは、オールブラックスへ入ってどんなことを学んでいますか。
「テストマッチを通し、小さなミステイクが(勝敗に)大きな影響を与えると学びました。しっかり自分の仕事をやる、フォーカスを絞るということもまた」
——お父様がサモア代表の伝説的な選手だったなか、ご自身がオールブラックスを選んだわけを聞かせてください。
「父からは、『常にベストを目指せ』と言われていました。いまのラグビー界でベストと言えば、オールブラックス。そのためオールブラックスを目指すようになりました。周りのチームメイトに頑張ってついていって、いまがあります」
——ウォレスさんのオールブラックス入りに、家族の反応は。
「嬉しいと思ってくれています。今日もお父さんとお母さんは、ニュージーランドで試合を観てくれているはずです」
——お父様が NTT ドコモにいたため、大阪で少年期を過ごされました。久しぶりに日本へ帰ってきて、オールブラックスの一員として日本代表と戦ったことをどう受け止めていますか。
「弁天町に住んでいました。大阪のインターナショナルスクールに通いました。今回は故郷に帰ってきた気分で、嬉しく思います」
語ったのはメインスタンド下のミックスゾーン。担当者からタイムリミットを告げられるなか、最後の質問が飛んだ。
——折角ですので、日本に暮らした頃の思い出をひとつ挙げてください。
「(日本語で)焼肉、食べ物!」
11月はイングランド代表、アイルランド代表、フランス代表、イタリア代表と順に戦う。