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【日本代表】魅力発信。宮崎で子どもたちに学び。横浜でファンと対話
左上から時計回りに、一番人気の竹内柊平、エディー・ジョーンズHC、小山大輝、エピネリ・ウルイヴァイティ。(©︎JRFU)

【日本代表】魅力発信。宮崎で子どもたちに学び。横浜でファンと対話

ジャスラグ編集部

 身近に感じるヒーローたちは愛される。
 日本代表の選手たちが、合宿の地・宮崎で、10月26日にオールブラックスと戦う横浜の地でファンと触れ合った。

 チーム練習がオフだった10月20日、宮崎でラグビークリニックを実施した。
 当日は、宮崎県内のラグビースクールに通う小学生や、ラグビー部で楕円球を追う中学生、高校生、コーチたちも含めて約400名が参加した。
 宮崎県屋外型トレーニングセンター、山内川緑地ラグビー場が会場となった。

 トレーニングセンターの天然芝で指導を受けた高校生たちには、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ、ニール・ハットリー アシスタントコ―チに加え、宮崎出身の竹内柊平らが指導した。
 木村星南、サウマキ アマナキ、松永拓朗、練習生の村田大和も、笑顔で高校生たちと接した。

 人工芝グラウンドには、小学生たちの姿があった。
 ダン・ボーデン、デイビット・キッドウェル両アシスタントコーチや、オペティ・ヘル、松岡賢太、為房慶次朗、飯沼蓮、濱野隼大、小山大輝、エピネリ・ウルイヴァイティ、練習生の海老澤琥珀らが、子どもたちにラグビーの楽しさをあらためて伝えた。
 一生記憶に残り続ける時間だった。

子どもたちに優しいビッグマン、オペティ・ヘル。(©︎JRFU)


 山内川緑地ラグビー場での取り組みが面白かった。
 麻田一平コーチ、茂原隆由、秋山大地、池田悠希、梶村祐介らが指導にあたったのは、「ターゲットエイジ」と呼ばれる高校2年生、3年生だった。

 2027年、宮崎は国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会の舞台となる。この日、日本代表選手たちから指導を受けたのは、同大会のラグビー競技(少年)での活躍が期待される候補選手たちだった。

 10月中旬におこなわれたジュニアラグビー九州ブロック大会で宮崎県代表は、沖縄、長崎を破り、決勝へ勝ち進んだ。
 決勝では福岡に敗れるも準優勝。上昇中の実力が、今回、日本代表のエッセンスを受けたことでさらに伸びそうだ。

 各カテゴリーともユニットに分かれ、基礎的なパスやキックのスキルのほか、日本代表のトレーニングで実践されているメニューも実施。指導や交流の時間は約1時間続いた。
 子どもたちとの交流は心を洗う。選手たちは、普段の激しい練習中には見られない柔和な表情を見せていた。

 今回の交流は、宮崎県ラグビー協会からのアプローチを代表側が快諾して実現した。
 同県協会の石田喜克会長と、山口雅博顧問は、日本代表の永友洋司チームディレクターと縁が深い。

「ターゲットエイジ」とされる中学生。(©︎JRFU)


 石田会長は高鍋高校出身。1975年度の花園で8強入り。高校日本代表(CTB)に選ばれた人だ。現在は高鍋ラグビースクールの校長も務めている。永友TDは同スクールの出身。
 山口顧問は都城高校ラグビー部の1期生。同部で永友TDの大先輩にあたる。

 当初、県協会からはターゲットエイジへの指導を依頼したが、代表側から、幅広い年代への指導が可能と連絡が入った。
 長く、同地で合宿を実施している。チーム側の地域への愛着と感謝は大きい。

 クリニック終了後、山口顧問のもとには参加者から多くの連絡が入った。内容の素晴らしさや、選手たちの人柄に触れて感激した人。また、指導に触れた多くの指導者からも「最新の理論、指導を知った」と声が届いた。
 ジャパンメソッドは、今後県全体に広がっていくだろう。

 石田会長は、代表選手たちから教わる中学生たちの目の輝きが印象に残った。
「今回は40人から50人の中学生が参加しました。先日の九州大会でもいい成績を残したところに今回でしたから、意識もテンションも上がったと思う。今後の成長が楽しみです」

 雨が続き、大雨の被害も出た宮崎県。しかしクリニック当日は天候にも恵まれた。
 いい一日だった。

左から、矢野武アナウンサー、大西将太郎さん、田中史朗さん、山田章仁さん、浅野杏奈さん。(撮影/松本かおり)


 10月23日、日本代表の姿は横浜にあった。
 この日は、3日後に同地で開催される日本代表×オールブラックスに向けてのファンとチームの決起会イベント、「みんなで超えていこう。ラグビー日本代表ファンミーティング」が開かれた。

 会場となった『MARK IS みなとみらい』には、大勢のファンが訪れた。
 第1部は、ラグビー日本代表OB座談会として 「日本代表とニュージーランド代表」をテーマに、大西将太郎さん、田中史朗さん、山田章仁さん、そしてスペシャルゲストの浅野杏奈さんが、矢野武アナウンサーの司会のもと、楽しいトークをくり広げた。

 そして第2部は、そこにエディー・ジョーンズ ヘッドコーチや多くの選手たちもジョイン。代表OBや、参加していた横浜ラグビースク―ルの子どもたちからの質問に答え、ファンを楽しませた。

 子どもたちが登場するコーナーで、「どうやったら前に突き進めますか」と問われたFWバックファイブのアイザイア・マプスアは、「足を動かし続けてください。そして、絶対に倒れない、という強い気持ちを持つこと」。同じ質問にWTBマロ・ツイタマは「ハードにキャリーするんだと強く思うこと。そして自分を信じる」と答えた。

少年の質問に答えるアイザイア・マプスア。(撮影/松本かおり)
いくつもの質問を受けたエディーさん。(撮影/松本かおり)


 多くの選手たちがいる中で、もっとも多くの質問が飛んだのがエディーさんだったのは意外だった。
「休みの日は何をしていますか」の質問に「サウナ、そして、おいしいランチ。午後は本を読んでいます」と答えると、「お金持ちっぽい」の反応。会場は爆笑に包まれた。 

「ニュージーランド戦で勝利のキーになる選手は誰ですか」と質問が出た時は湧いた。
 指揮官は、「歴史を変えることができる大きなチャンス」と言った後、続けた。

「ニュージーランドとの試合でジャパンが勝ったことは一度もありません。(そういう歴史もあるので)我々は、ずっと相手を追い詰める、どんどんと攻撃していくといったメンタルでトレーニングを続けてきました。最初の笛が吹かれたスタートの瞬間から、80分後の最後まで日本らしくプレーしたい。ラグビーは世界中にいろんなスポーツがある中で、最高のものだと思っています。1番から15番まで、全員がキープレーヤーです。試合のどんな瞬間でもボールを持った人がキープレーヤー。守っている時なら、ボールの目の前にいる人がキープレーヤー。そして、質問してくれたあなたは、私たちにとって、いちばん大事なファンです」

 大きな拍手が起こり、選手たちを見送る花道ができた。そこにいた多くのファンがスタジアムにも足を運ぶ。
「歴史が変わる瞬間を見られたらいいな」と、キックオフの時を楽しみに待つ。

オールブラックスとの試合を歴史的一戦とすることを誓った。(撮影/松本かおり)



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