両チーム合わせて142得点、22トライ!
10月20日に太田市運動公園陸上競技場でおこなわれた関東大学リーグ戦1部、流経大×日大は、互いに80分間攻め合う激しい展開となった。
先行したのは日大。幸先よく2トライを奪い、前半20分過ぎまでに21-5とリードを奪う。
しかし、そこから攻められる。ハーフタイムには21-40とされた。
流経大は先制パンチを喰らい、目が覚めた感じだった。
掲げる「ダイナミック」を実践し始めると勢いが出た。前半26分から後半18分まで、9連続トライを奪う。
スコアは68-21まで開き、勝負はついたと思われた。
しかし、最後まで荒れた。
後半22分から日大が5連続トライ(68-52)→流経大が2連続トライ(78-52)と続き、インジャリータイムに入った後、日大が2連続トライを奪う。78-64とファイナルスコアが刻まれた。
勝った流経大では、3トライの仲野優輝、各選手の力を引き出し、9Gも決めたSOの佐々木開など、何人もの殊勲者がいた。
その中で、チームの爆発力を呼ぶトリガー的な働きを見せていたのがFB中村楓馬(ふうま)だった。
流経大のこの日の最初のトライを挙げたのはWTB仲野だったが、その背番号14にラストパスを送ったのがこの人。前に出たラックから出たボールを受けると、ショートサイドにあるスペースへ長く、速いパスを出した。
仲野とは練習時から何度も同じようなシーンを繰り返している。
「直前にアイコンタクトをとっていました。あそこに放れば、ナッカー(仲野)が走ると分かっていた」
日常が生きたシーンだった。
4年生でFB。いつもチーム全体を見渡している中村は、この試合、先にペースをつかまれた理由をこう話す。
「最初は堅くゲームを進めようとして萎縮してしまいました。そうなると反則が出る。相手をのせてしまいました」
原点に戻ろう。そう話して勢いを取り戻した。
自分たちのスタイル、「ダイナミックラグビー」をやろう。この試合に向けてやってきたこともある。
「最上級生の自分が最初からそう言うべきでした」
日大を分析し、Bチームが相手を再現する中で繰り返してきたことがあった。「キックカウンターから攻めよう、と」
キック後のチェイスにクセがあった。全体的に内側に寄ってくる。「ミドル(の地域)にチャンスがある、と分かっていました」。
その局面で躍動したのが中村だった。170センチ、72キロと、リーグ戦のFBの中で小柄な部類。しかし、ランプレーには誰にも負けない自信がある。ステップも鋭い。
背番号15は積極的に動き、何度もチャンスメイク。自らも2トライを奪った。
4年生のプレーヤーが10人前後しかいない今季の流経大。この日の先発にも最上級生は5人だけ。だからこそ、後輩たちを引っ張ろうと思う気持ちをみんなが持っている。
中村も、日頃から学年やポジションに関係なくコミュニケーションを取り、関係を密にしている。
大阪出身。小4で茨木ラグビースクールへ。中学時代は高槻ラグビースクールでプレーした。
京都や島根の強豪校からも誘われたが、両親に活躍する姿を見せたいと思い、地元の常翔学園に進学した。
高校時代はWTB。流経大入学後にアドバイスを受けてFBに転向した。ボールタッチが増えて、その脚力がさらに生きる。
昨季はリーグ戦の全7試合で15番のジャージーを着た。今季も、初戦の立正大戦こそ怪我で欠場するも、その後は最後尾に立ち続けている。
小柄でも活躍できるのは、「小さい人間には大きなスペースがある」という意識を持っているからだ。
元ウェールズ代表の名WTB、シェーン・ウィリアムズの言葉は言い伝えられ、漫画『ALL OUT!!』の中にも出てくる。それを読み、胸に刻んだ。
ディフェンダーを避けて走るのではなく、圧を受ける前に自分から仕掛ける。こちらで相手を動かすから、抜ける。2対1の局面も作ることができる。
自分のスタイルを持っているのが強い。
チームは日大との乱戦を制したことで今季2勝2敗となった。
リーグ6連覇中の東海大が東洋大に敗れるなど混戦模様となっているだけに、まだまだ上位進出の可能性はある。中村も、「若いチームなので、試合で経験を重ねることで力もついていく」と話し、シーズンの深まりを楽しむつもりだ。
「ここからは気持ちが大事。そう思っています。練習でやったことを、試合でも絶対に出し切る。その気持ちを、4年生たちで強く出していきたいです」
チームナンバーワンのスピードスターは、卒業後もトップレベルでプレーを続けたいが、まだ活躍の場を見つけられていない。セブンズの世界にも興味がある。
ラストシーズンの最後の最後までトップスピードで走り切り、可能性の扉を開けていきたい。