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自分が生きる道。細矢聖樹[早大4年/SH]
162センチ、63キロ。スピードが武器。(撮影/松本かおり)

自分が生きる道。細矢聖樹[早大4年/SH]

田村一博

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 関東大学対抗戦Aの今季開幕から3戦続けて赤黒ジャージーの9番を着続けている。
 そして、そのうちの直近の2試合(日体大戦、青山学院大戦)ではゲームキャプテンを務めた。

 4年生の細矢聖樹(ほそや・せな)が、主将でHOの佐藤健次、副将でSHの宮尾昌典が(怪我などの理由で)欠場中のチームを引っ張っている。

 10月12日におこなわれた青山学院大戦は67-0の完勝。チームは10トライを奪い、失点もない80分を過ごすも、試合後の記者会見に出席した細矢は、「ディフェンスではすごくいい場面も多かった」と振り返りながらも、反省を口にした。

「アタックで、これまでやってきたことが出ていない。修正点が残る試合でした」

 大田尾竜彦監督も、接点でのセカンドマンの遅れと、ストラクチャーを遂行する途中に人数不足に陥る局面がある点などを指摘した。
 監督、ゲームキャプテンは、「練習でやったことを出せていない」の意見で一致し、今後に向けて整備していく姿勢を示した。

 細矢は、本来の主将、副将が不在の中でチームの先頭に立っていることについて、「僕自身が引っ張りつつも、全員でやっています」と話した。

「コミュニケーションをとりながら、全員で自分たちのやりたいことをやっていく。全員でチームを作っていくことを意識しています」

 それは試合時に限らず、日常から変わらない。
「自分が積極的に話すようにしていますが、みんなの意見や考えを汲み取るようにしています」
 言葉の端々から一体感を大事にしていることが伝わる。

 大田尾監督は、細矢をゲームキャプテンに指名する理由を「責任感」とした。
「言動からもリーダーシップが感じられる」と話し、技術面についても、こう続けた。

責任感あり。スポーツ科学部に学ぶ4年生。(撮影/松本かおり)


「入った頃から(花園準優勝、年代別代表経験者の)宮尾が(同期に)いましたが、彼を追っかけていく中で、自分がまさっているところを認識して、それをグラウンドで発揮してくれています」
 ディフェンス面を評価している。「感覚的にも、タックルそのものもいい」とした。

 細矢自身も、監督の評価を笑顔で受け入れる。
「宮尾にない部分、自分が上回れる部分を探しました。それがディフェンスでした。そこを出していこう、と」

 小4時、兄の影響を受けて世田谷区ラグビースクールで楕円球を追い始めた。中学時代は全国ジュニアで優勝している(東京都スクール代表)。
 高校は國學院栃木へ進学した。高校1年時、3年時には花園出場を果たしている。

 早大ではハサミを手に仲間の散髪を請け負っている。その技術を身につけたのも高校時代だ。
「(学校や寮の)近所に髪を切るところがなかったので、動画を見て覚えました。みんなにメンテナンスを頼まれていた」と笑う。 
 そんな一面もあるから、周囲とのコミュニケーションも密になるのだろう。

 スピードを買われ、大学入学後はWTBでの試合出場経験もある。
「自分の強みを伸ばしていこう。自分の生きる道を探そう。そんな気持ちでやっています」という。

 ライバルの存在も、「学べる部分がたくさんあります。吸収し、自分のものにしていこうとしてきました」と前向きにとらえる。
 大学卒業後はリーグワンのチームでのプレーを希望している。成長し続けたい気持ちにあふれている。

 ゲームキャプテンを任されて感じることは多い。仲間のことを考えることは、自分の成長も呼ぶ。チーム愛も深まる。
「考えることが増えた」と言う。

「うまくいかないとき、どこに原因があるのかを探す。それがチームのためにも、自分のためにもなっています。SHなので、その位置から見えることをどんどん伝えるようにしています」

 早大ラグビー部には、「委員」という役職がある。主将、副将らと一緒になってチームのことを考え、引っ張る立場だ。
 細矢はもともとその一人ではあるけれど、公式戦で先頭に立って得るものは大きい。

 いずれ宮尾も調子を上げてくる。その時のポジション争いが激しくなればなるほど、チーム力も上がる。
 大一番、帝京大戦は11月3日に迫っている。



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