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【WXV2】ウェールズには10-19。サクラフィフティーン、3戦全敗、最下位で戦いを終える。
チームの先頭に立って体を張ったFL長田いろは主将。(©︎JRFU)
2024.10.12
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【WXV2】ウェールズには10-19。サクラフィフティーン、3戦全敗、最下位で戦いを終える。

田村一博

 サイズとフィジカルの強さでは相手が上回っている。
 その前提で戦うのが、サクラフィフティーンの海外上位国と戦う時の宿命だ。

 10月11日に南アフリカでおこなわれた『WXV2』(女子世界大会ディビジョン2)、日本代表×ウェールズ代表も、両国を比較すれば、いつもの構図は変わらなかった。

 同大会で、日本はすでに南アフリカ、スコットランドに敗れていた。ウェールズも2敗で、この試合を迎えた。
 この日負けた方が、同ディビジョンの最下位となる一戦だった。

 南アフリカでの2戦を含め、接戦で勝てない日本。勝利のためには、先手を取ること、後半20分過ぎまでスコアを離されないこと、そこから動き勝つことが求められた。
 しかし、先手を許し、後半20分には0-19のスコアだった。そして、10-19と敗れた。

 大きな相手に何度もダブルタックル。抜かれては戻り、必死に守るシーンもあった。アタック時のFWの献身や、全員のハードワークは伝わる。
 しかし、どこよりも磨かねばならないはずのパスが乱れて勢いが出ない。攻撃の結末がミスで終わることも多かった。

 キックオフからまもなく、この日は青いジャージーを着た日本にチャンスが訪れた。
 ハーフウェイライン付近のスクラムから攻める。フェーズを重ね、SO大塚朱紗がラインブレイクから大きく走るシーンがあった。

フィジカリティーの強い相手を止めるCTB弘津悠(左)とNO8齊藤聖奈。(©︎JRFU)

 しかし、敵陣22メートルライン付近まで攻め込み、さらに継続するも6フェーズでノックオン。ボールを相手に渡した。
 その直後も敵陣に入ることはできていたが、ラインアウトボールを渡して仕留められなかった。

 先制トライを許したのは、22メートル内の相手のアタックをしつこく守り(8フェーズ)、ノックオンさせた後のスクラムからだった。
 サクラフィフティーンはSH津久井萌からのパスを受けた左WTBの松村美咲がキックで脱出を試みる。相手11番がキックチャージ。そのまま、転がるボールをインゴールに押さえた。

 続く失点も、少ないフェーズでトライを奪われた。
 前半13分過ぎ。FB西村蒼空が蹴ったボールを、この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されるジャスミン・ジョイスが手にして前へ出た。
 そのラックからボールをパスアウトすると、近場でラインブレイク。防御裏でパスをつなぎ、一気に攻め切った(トライはSHケアー・ベヴァン)。ゴールも決まり、日本は0-12とされた。

 そのスコアで前半は終わった。
 実は前半28過ぎ、ウェールズに自陣深い位置でのラインアウトから攻められ、FWのピック・ゴーを重ねられてインゴールに入られたシーンもあった。
 そのトライはTMOを経てキャンセルとなったから、気分的には、攻められた時間のわりに、得点差は小さいと感じていたかもしれない。

 その心理もあったか、風上に立ったサクラフィフティーンは、後半立ち上がりからウェールズ陣へ攻め込んだ。
 相手キックを中盤からレシーブした後の攻撃は、2分弱、15フェーズ続いた。しかし、ゴール前の左隅、NO8齊藤聖奈がWTB松村に放ったラストパスをインターセプトされる。そのままFBジョイスに95メートルを走られ、ゴールも決まった。
 0-19とされた。

 サクラフィフティーンがようやくスコアを刻んだのは、後半22分だった。
 ピッチ中盤での相手ノックオンで攻撃権を得たところから始まった。

 フェーズを重ねた後にSO大塚が防御裏へキック。そのボールをCTB小林花奈子がチェイスし、止めた。
 そのラックで、小林はFL川村雅未とともにカウンターラックでターンオーバーに成功。日本はすぐに攻めた。

 一度センター付近にボールを運び、左へ。ボールは小林、大塚、松村と渡り、そのまま背番号14がトライラインを越えた。
 一人ひとりのエフォートが連なって奪ったトライ。一連の流れの中で、何度も要所で働いた小林の動きが光った。

 スコアは5-19。日本の次の得点シーンは、後半37分まで待たなければならなかった。
 風上の日本はキックを蹴り込むも有効なものにならず、また、パスの精度を欠いてアタックに勢いが出なかった。

 サクラフィフティーンのこの日の最後のトライは、ターンオーバーから始まった。
 ボールを奪い返すと、BKとFWが一体となってボールを前に運ぶ。途中出場のNO8ンドカ・ジェニファの好走からトライラインに迫り、最後は7フェーズ目に背番号10、大塚が右中間に飛び込んだ。
 10-19。それがファイナルスコアとなった。

出場ながらチームへの貢献度の高いプレーを見せたCTB小林花奈子。(©︎JRFU)

 試合直後のFL長田いろは主将は、「相手のモメンタムを受けて思うようにプレーできなかった」と話した。
 レスリー・マッケンジー ヘッドコーチは3試合を総括し、「振り返るべきポイントがたくさんある大会だった」と話した。
「最後に巻き返すのはなかなか難しい。前半から丁寧に入っていかないといけない」

 司令塔の大塚は相手の前に出るアタックに対し、有効な攻撃をあまりできなかったことについて、「単純なアタックが多かった。はやいテンポでアタックする中でも、オプションを持たないといけない」とした。

 相手の崩し方はデザインされているが、それがパスの精度でうまくいかないこともあれば、決まった動きの遂行に集中することで、守る側への圧力が足りない感じを受ける。
 一人ひとりが、スキあらばもっと勝負するような選択肢を持たないといけない。
 日本は、相手のそれを受けてやられた。

 来年にはラグビーワールドカップ2025 イングランド大会(以下、W杯/8月22日〜9月27日)が開催される。10月17日にはプール組み分け抽選会が実施され、試合日程が発表される。

 マッケンジーHCは、今大会で戦った3チームについて、「来年のW杯でも似たような相手と戦うことになる」とし、「到底手の届かない相手ではなかったし、自分たちができたプレーに関しては、いい感触を得た」と話した。

 来年の『WXV』に関しては、W杯開催年のため実施されない。また、2026年については詳細未定。そのため、現時点で参加国の昇降格は決まっていないようだ。
 大会設立当初は、『WXV2』の最下位(6位)は『WXV3』への降格とされていた。



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